未使用分の消耗品費等を資産計上すべきかどうか

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、消耗品を購入した場合の税務会計のお話です。

事業を行っていると、定期的に消耗品を購入する機会もあると思います。

通常は「消耗品費」として費用計上しますが、例えば大量にボールペンを購入した場合、決算時に未使用分のストックが存在する可能性があります。

その場合、購入したボールペンはどのように会計処理し、どのように税金計算をするのか。

簡単に解説していきます。

 【この記事で分かること】
♦消耗品は棚卸すべきかどうか(会計編)
♦消耗品は棚卸すべきかどうか(税務編)
♦会計処理例

消耗品は棚卸すべきかどうか(会計編)

会計の原則的な考え方は、収益とその収益に対応する費用を計上して、当期の損益を計算することとなっています。

したがって、未使用の消耗品は、まだ収益に貢献していない(収益に対応しない)ため、原則として費用とすることができません。

企業会計原則
損益計算書原則(一 損益計算書の本質)

損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。
C 費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。

その場合、未使用分を資産計上(貯蔵品勘定)することになります。

消耗品が棚卸資産に含まれる旨は、企業会計基準に記載があります。

企業会計基準第9号
棚卸資産の評価に関する会計基準(範囲)
3. 本会計基準は、すべての企業における棚卸資産の評価方法、評価基準及び開示について適用する。棚卸資産は、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産であり、企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産のほか、売却を予定しない資産であっても、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等も含まれる

ただし、例外として、金額が僅少であったり経常的に購入されている等の理由で損益に多大な影響を及ぼさないと判断される場合には、購入時の費用として認められます。

企業会計原則注解([注1]重要性の原則の適用について)
企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。

重要性の原則の適用例としては、次のようなものがある。
・消耗品、消耗工具器具備品その他の貯蔵品等のうち、重要性の乏しいものについては、その買入時又は払出時に費用として処理する方法を採用することができる
・前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。

会計の考え方は、「費用収益対応の原則」です。

費用と収益を期間的に対応させることで、正しい期間利益を計算することを目的としています。

しかし、例外として、重要性の乏しいものまで厳密に会計処理を行わなくても、株主等の利害関係者の判断を誤らせるようなことは無いと考えられることから、本来の厳密な会計処理によらなくても正しい処理として認められる旨が「企業会計原則注解注1(重要性の原則)」に記載されています。

例えば、期末に未使用のボールペンが1本だけあったとしても、これをワザワザ貯蔵品勘定に振り替えるということはしなくてもよい、ということになります。

消耗品は棚卸すべきかどうか(税務編)

まず、原則的な考え方として、未使用の消耗品は「貯蔵品」として資産計上を行います。

これは、会計の考え方と同様であり、未使用のものは期末棚卸資産として資産計上し、経費(損金)に算入されません。

資産計上する旨は、所得税法や法人税法に規定されています。

所得税法第二条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十六 棚卸資産
事業所得を生ずべき事業に係る商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産(有価証券、第四十八条の二第一項(暗号資産の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)に規定する暗号資産及び山林を除く。)で棚卸しをすべきものとして政令で定めるものをいう。

所得税法施行令第三条
法第二条第一項第十六号(棚卸資産の意義)に規定する政令で定める資産は、次に掲げる資産とする。
一 商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)
二 半製品
三 仕掛品(半成工事を含む。)
四 主要原材料
五 補助原材料
六 消耗品で貯蔵中のもの
七 前各号に掲げる資産に準ずるもの

法人税法第二条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
二十 棚卸資産
商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産で棚卸しをすべきものとして政令で定めるもの(有価証券及び第六十一条第一項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)に規定する短期売買商品等を除く。)をいう。

法人税法施行令第十条
法第二条第二十号(棚卸資産の意義)に規定する政令で定める資産は、次に掲げる資産とする。
一 商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)
二 半製品
三 仕掛品(半成工事を含む。)
四 主要原材料
五 補助原材料
六 消耗品で貯蔵中のもの
七 前各号に掲げる資産に準ずるもの

ただし、例外として、毎年同じくらいの量の消耗品を購入し、かつ、経常的に消費しており、毎年継続して取得時の経費(損金)に算入している場合には、その全額を経費(損金)にすることができます。

ポイントは、
・毎年おおむね一定量を取得
・毎年経常的に消費
・毎年継続して取得時に経費(損金)計上
していることが必要です。

法人税基本通達2-2-15
消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加)
(注) この取扱いにより損金の額に算入する金額が製品の製造等のために要する費用としての性質を有する場合には、当該金額は製造原価に算入するのであるから留意する。

所得税基本通達37-30の3
消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する年分の必要経費に算入するのであるが、その者が、事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各年ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する年分の必要経費に算入している場合には、これを認める。(昭55直所3-19、直法6-8追加)
(注) この取扱いにより必要経費に算入する金額が製品の製造等のために要する費用としての性質を有する場合には、当該金額は製造原価に算入するのであるから留意する。

例えば、年に3回程度ボールペンの替芯5本入りを購入し、かつ、その替芯を経常的に消費しており、毎年継続して取得時に経費(損金)計上していた場合には、全額を取得時の経費(損金)とすることができます。

法人税及び所得税基本通達の考え方の根底には、会計の「重要性の原則」があるように思います。

つまりは、消耗品は日常的に消費されるものであり、金額的にも僅少であると考えられるため、計上方法を毎期継続していれば資産計上を行わなくても、毎年の損益に与える影響は大きくないため、税務上も認められることとなります。

逆に、例えば突発的に多量に購入した消耗品については、未使用分を棚卸資産に計上する必要があります。

何でもかんでも全額経費(損金)がまかり通ってしまうと、利益調整や税金逃れに利用できてしまうため、判定の入口である「毎年一定量」の部分を慎重に判断する必要があります。

会計処理例

〇前提
・3月決算法人
・ボールペン替芯500円(100円×5本)を毎事業年度3回程度購入
・期末にバインダー100,000円(1,000円×100個)を購入

【X1.5.31】
替芯購入
(消耗品費)500/(現金預金)500

【X1.9.30】
替芯購入
(消耗品費)500/(現金預金)500

【X2.1.31】
替芯購入(期末1本未使用
(消耗品費)500/(現金預金)500

【X2.3.31】
バインダー購入(すべて未使用
(消耗品費)100,000/(現金預金)100,000

【決算整理】
バインダー分を振替
替芯は全額経費(損金)
(貯 蔵 品)100,000(消耗品費)100,000

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