非課税?免税?課税売上割合?実は細かい消費税の仕組み

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、消費税のお話です。

お客様に説明するときに、意外と厄介なのが消費税です。

さすがに経営者の方は、
売上の消費税△仕入の消費税=納税額
という仕組みはご理解いただいてますが、
不課税、非課税、さらには免税という区分があることまで知っている方はかなり少ないです。

ある意味、消費税がかからないという点では共通していますが、
消費税の納税額を計算する上では、この区分がとても重要になってきます。

それでは、なるべく簡単に、噛み砕いて説明していきます。

消費税の概要

消費税の仕組み

例えばスーパーで買い物をしたとき、いつも必ず消費税を払っていると思います。
スーパーは、お客さんが支払った(お客さんから預かった)消費税を、我々の代わりに国へ納めています。

所得税などとは違い、消費者から税金を預かって、代わりに税金を納めるもの(税を納めるべき人と負担する人が異なるもの)を、「間接税」といいます。

ただしスーパーは、お客さんから預かった消費税を、すべて国に納めるわけではありません。
なぜなら、消費税は一つのモノ(消費)に対して、二重に課税されない仕組みとなっているからです。

ん?二重に課税されない仕組み??と思った方。
それは正常な反応です(笑)

例えば、スーパーが110円(うち消費税10円)で農家から野菜を仕入れたとします。
それを、お客さんに330円(うち消費税30円)で売ったときの消費税はどうなるか。

野菜の消費税は、最終的にはお客さん(最終消費者)が支払った30円ですから、国としては30円の納税があれば良いわけです。

したがって、
・農家が納める消費税→10円
・スーパーが納める消費税→売上の消費税30円△仕入の消費税10円=20円
最終的には合計30円の消費税が国へ納める税額となります。

この考え方から、
売上の消費税△仕入の消費税=納税額
という式が成り立ちます。

消費税申告が必要な人(会社)は?

商売を行っていない最終消費者は、スーパーなどに消費税を支払うだけ(預けるだけ)ですので、申告は特に必要ありません。

消費税申告が必要な人(会社)は、ザックリいうと前々年(前々事業年度)の事業売上が1,000万円を超える事業者です。

したがって、普通のサラリーマンなどは消費税申告とはほぼ無縁で、商売を行っている個人事業主や会社が対象となります。

全ての取引に消費税はかかる?

消費税は、全ての取引にかかるわけではありません。

・そもそも消費税の対象とならない取引→不課税(課税対象外)
・消費税の対象ではあるが、社会政策的配慮から消費税を課さないもの→非課税
・日本の消費税と海外の消費税との二重課税の観点から免除されるもの→免税

これらの理由に該当した場合には、消費税がかかりません。

消費税がかからないなら、呼び方わざわざ変えなくてよくない?と思った方。
それも正常な反応です(笑)

細かく説明することはなかなか難しいので省略しますが、
税法用語でいう「課税売上割合」という割合を計算するために、これらを区分することはとても重要となります。

消費税の対象となるもの・ならないもの

消費税の課税の対象となるかどうかは、4つの要件に該当するかどうかで基本的には判定します。

(1)日本国内で行うものであること
(2)事業者が事業として行うものであること
(3)対価を得て行うものであること
(4)資産の譲渡・貸付、役務の提供であること

(1)日本国内で行うものであること

細かいルール(実務上は超重要)は省略しますが、ザックリいうと国内で行われる商売に消費税がかかります。

国外で行われる取引については、日本の消費税は課税されません(不課税)。

(2)事業者が事業として行うものであること

ザックリいうと、商売として行われた取引については消費税がかかります。

したがって、商売とは関係ない自己所有の資産を売った場合には、消費税は課税されません(不課税)。

商売とは関係ない自己所有資産を売った場合とは、例えば、
・八百屋さんが、古本屋にマンガを売った場合
・事業で使用していないプライベートの車を売った場合
などをいいます。

ただし、個人事業者ではなく法人が行う取引については、すべて事業として行われたもの判定されます。

(3)対価を得て行うものであること

ザックリいうと、お金をもらう取引が課税の対象となるため、無償の取引は原則として課税されません(不課税)。

通常の感覚として、お金のやり取りがなければ消費税がかからないという考えが当たり前ですが、
例外的にお金のやり取りがなくても消費税がかかるものがあるため、注意が必要です。

(4)資産の譲渡・貸付、役務の提供であること

この文言の意味合いは、
・モノを売ったことにより得たお金
・モノを貸したことにより得たお金
・サービスを提供したことにより得たお金
であることを指します。

したがって、何もしてないのに得たお金については、消費税は課税されません(不課税)。

何もしてないのに得たお金とは、例えば、
・補助金
・助成金
・祝金
・見舞金
など、一方的にもらうようなものが該当します。

売上の消費税から差引く仕入の消費税について

消費税の計算構造として、
「売上の消費税△仕入の消費税=納税額」
という仕組みになっていることは、ご理解いただけたかと思います。

ここから少し難しい話をしますが、
場合によっては、仕入れの消費税の全額を売上の消費税から引けない場合があります。

そこで関係してくるのが、「課税売上割合」というものです。

前段階税額控除

消費税の計算構造として、最終消費者が消費税を負担するため、
消費税が各取引段階で累積しないように「売上の消費税△仕入の消費税=納税額」という仕組みとなっています。

つまりは、最初に説明した例の話で、
最終消費者が支払った消費税30円が国に納付されていればよいので、
各段階では、
・農家が納める消費税→10円
・スーパーが納める消費税→売上の消費税30円(最終消費者が支払った消費税)△仕入の消費税10円=20円
となり、最終的には最終消費者が支払った消費税30円(農家10円+スーパー20円)が国に納付されるようになっています。

このように、事業者が仕入の際に負担した消費税を、売上の消費税から差引く(控除する)ことにより消費税の累積を排除する仕組みを、「前段階税額控除」といいます。

ただし、この仕組みは、最終的に消費者が消費税を負担することを前提に、各段階で消費税が転嫁されていることが大前提にあります。

したがって、非課税取引により最終消費者に消費税を転嫁できない場合には、一定の制限が必要となります。

非課税取引があった場合

例えば、事業者が最終消費者に非課税の売上を行った場合、その最終消費者からは消費税を預かりません。

つまりは、最終消費者に消費税が転嫁できないため、
「売上の消費税△仕入の消費税=納税額」
という仕組みが成り立たなくなります。

この場合、事業者が最終消費者(仮)ということになり、事業者が仕入時に支払った消費税が国に納付されます。

例えば、スーパーが110円(うち消費税10円)でA会社から商品を仕入れたとします。
をれを、お客さんに300円(消費税非課税)で売ったときの消費税はどうなるか。

非課税取引のため、お客さん(最終消費者)には消費税が転嫁できないので、
スーパーが支払った10円が国に納まっていれば良いことになります。

したがって、
・A会社が納める消費税→10円
・スーパーが納める消費税→売上の消費税0円(非課税)△仕入の消費税0円(10円支払ってるけど転嫁できないため)=0円
となり、最終的に10円が国に納付されるということになります。

課税売上割合

取引が膨大にある場合、全ての取引を追って課税・非課税を把握することは困難であるため、転嫁できなかった消費税すべてを紐づけることは不可能です。

そこで、総売上(不課税を除く)のうち、課税の売上の占める割合をもって仕入の消費税を調整する方法により消費税が計算されることとなりました。

この割合が「課税売上割合」というわけです。

算式は、
課税売上(税抜)+免税売上課税売上(税抜)+免税売上+非課税売上
です。

この割合が、
・95%以上→全額控除(調整なし)
・95%未満→課税売上割合による調整計算
と規定されています。

細かい部分については、専門的な内容となるため割愛します。

売上の消費税から控除する仕入の消費税について、売上の割合により仕入の消費税を調整するため、売上の区分(不課税、課税、免税、非課税)がとても重要であるということだけ、認識していただければと思います!

(課税売上割合の計算方法)
消費税法施行令第四十八条
法第三十条第六項に規定する政令で定めるところにより計算した割合は、第一号に掲げる金額のうちに第二号に掲げる金額の占める割合とする。
一 当該事業者が、当該課税期間中に国内において行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。以下この条及び第五十三条第三項第一号において同じ。)の対価の額(法第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。以下この項において同じ。)の合計額から、当該課税期間中に国内において行つた資産の譲渡等に係る対価の返還等の金額(資産の譲渡等につき、返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、当該資産の譲渡等の対価の額の全部若しくは一部の返還又は当該資産の譲渡等の対価の額に係る売掛金その他の債権の額の全部若しくは一部の減額をした金額をいう。)の合計額を控除した残額
二 当該事業者が当該課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第五十三条第三項第二号において同じ。)の対価の額の合計額から、イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額の合計額を控除した残額
イ 課税期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額(当該課税期間中に行つた第十九条に規定する輸出取引等に係る対価の返還等の金額を含む。)
ロ 課税期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に七十八分の百を乗じて算出した金額
(定義)
消費税法第二条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
八 資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。
九 課税資産の譲渡等 資産の譲渡等のうち、第六条第一項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう。
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