開封時注意!遺言書があったときの相続の手続き

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、遺言書についてです。

相続が発生したら、被相続人(亡くなった人)の財産を分けるという重要なミッションが発生します。

このとき、遺言書があるのか、または遺言書は無く遺産分割協議をするのか。
これにより、相続人(法的に財産を引き継ぐ権利がある人たち)の手続きは異なります。

また、遺言書があったとしても、それが不当な遺言書であったり、はたまた2通の遺言書が出てきたりと、様々なケースがあります。

それでは、相続があった場合の遺言書について、簡単に解説していきます。

遺言書の種類

遺言書には、3種類の方式があります。
以下、簡単にポイントをまとめます。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、本人が全文を自筆で作成する遺言書のことをいいます。

自分で作成しますので証人は不要で、保管は遺言者本人又は法務局が行います。

遺言者本人が保管していた場合には、その遺言書が有効かどうか家庭裁判所での検認(確認)手続きが必要となります。

ちなみに、2020年7月10日より、自筆証書遺言を法務局で保管(自筆証書遺言書保管制度)が可能となりました。
数千円の手数料はかかりますが、紛失や勝手に開封されてしまうリスクが軽減されるため、活用するのも一つの手です。
法務局での保管の場合、保管時に遺言書の形式に問題がないか確認するため、家庭裁判所での検認手続きは不要です。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場の公証人のもとで作成する遺言書のことをいいます。

2人以上の証人(未成年者や利害関係者は不可)が必要で、遺言者が口述した内容を公証人が筆記にて作成します。

保管場所は、原本は公証役場が、正本(原本と同じ効力を持つ写し)と謄本(諸々手続きには使用できない写し)は本人が保管します。

法律の専門家である公証人によって遺言書が作成されるため、家庭裁判所での検認手続きは不要です。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、本人が作成し、内容を秘密にしたまま遺言書の存在のみを公証人に証明してもらう遺言書のことをいいます。

2人以上の証人(未成年者や利害関係者は不可)が必要ですが、内容自体は秘密にできます。

秘密証書遺言の保管は、本人が行います。

遺言書の内容を公証人が確認したわけではないので、その遺言書が法的に有効かどうか家庭裁判所での検認(確認)手続きが必要となります。

遺言書の有無の確認

相続が発生した場合、遺言書があるかどうかの確認が必要となります。

もし自筆証書遺言書や秘密証書遺言書が自宅で見つかった場合には、勝手に開けると改ざん等を疑われトラブルのもとになる可能性があるため、注意が必要です。

その遺言書が有効かどうか家庭裁判所で検認(確認)手続きを行いましょう。

(遺言書の検認)
民法第千四条
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

遺言書がない場合は、遺産分割協議が必要となります。

被相続人が亡くなった日から10か月以内に相続税申告及び納税が必要となりますので、早めに分割協議に取り掛かるとスムーズに進みます。

遺言書は絶対なのか?

遺言書があった場合、法的に無効であったときは、遺産分割協議が必要となります。

遺言書が法的に有効であった場合には、基本的には被相続人の意思を尊重し、遺言書通りに分けることとなります。

ただし、受遺者(遺言により財産を受け取る人)全員の同意があれば、遺言書によることなく相続人で分割協議を行うことができます。

受遺者の中には、相続人ではない第三者(例えば、愛人など)が含まれるため、遺言書通りでないと財産を取得できない第三者がいる場合には、同意を得ることができない可能性が高いと考えられます。

遺言書の内容があまりにも法定相続分(法的な相続割合)から逸脱した内容だった場合、相続には相続人の生活基盤を守る役割があるため、民法の規定で遺留分という最低限の権利を主張することができます。

この権利を遺留分侵害額請求権といい、金銭で清算することとなります。

遺留分の支払いを受ける場合には、書面化しておかないと後々トラブルになる可能性がありますので、必ず書類を作成しましょう。

(遺留分侵害額の請求)
民法第千四十六条
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
二 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額
また、遺留分を侵害されたことを知った時から1年、又は相続開始から10年を過ぎると、遺留分侵害額請求権を行使できなくなってしまうので、遺言書を見つけたら、直ちに受遺者・財産・相続分を確認しましょう。
(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
民法第千四十八条
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

遺言書が2つ出てきたら?

複数の遺言書が出てきた場合には、原則として日付の新しい遺言書が有効となります。

例えば、2020年5月の公正証書遺言書と、2020年7月の自筆証書遺言書が出てきた場合、日付の新しい自筆証書遺言書が有効であると考えられます。

遺言書には、自筆証書遺言書・公正証書遺言書・秘密証書遺言書の種類がありますが、どの種類の遺言書であるかは関係なく、日付の新しい遺言書が有効であると考えられます。

(遺言の撤回)
民法第千二十二条
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
民法第千二十三条
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
民法第千二十四条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
(撤回された遺言の効力)
民法第千二十五条
前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
(遺言の撤回権の放棄の禁止)
民法第千二十六条
遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。

あとがき

普段から仲が良くて、到底揉めそうにない兄弟姉妹であっても、いざ相続が発生すると揉めることは多々ありますし、そのような場面を見てきました。
遺言書があれば揉めることは少ないのですが、その内容があまりに偏っていたり、全財産が愛人になっていたりすると、やはり揉めるケースは多いです。
話し合いでどうにもならなくなると、弁護士さんを入れての協議になるため、お金も時間もかかってしまいます。
相続税申告の案件は、お客様のご親族や飛び込みなど様々ですが、弁護士さんからの紹介があったときは、ちょっとドキッとしてしまいます(汗)
「相続」が「争続」にならないよう、円満な相続が行われることを心から願います。
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