アドセンス収入の消費税の取扱い~YouTuber事務所に所属すると消費税がかかる?GoogleAdSense収入の注意点~

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、グーグルのアドセンス収入・広告費用の消費税のお話です。

グーグルのアドセンス収入や広告費用について、近年の消費税法改正や、広告費用の支払先(契約先)の変更があったため、簡単にまとめようと思います。

さらには、YouTuber事務所への所属の有無により、アドセンス収入の消費税の取扱いが変わってくる可能性があるため、注意が必要です。

消費税の基本的な考え方

消費税には、まず考え方のスタートとして、「課税対象取引」又は「課税対象外取引」という判断を行います。

課税対象取引とは、(1)日本国内において(2)事業者が事業として(3)対価を得て行われる(4)資産の譲渡・貸付、役務の提供である取引をいいます。

課税対象外(不課税)取引とは、課税対象取引の(1)~(4)の全てを満たさない取引をいいます。

消費税のもう少し詳しい内容については、こちらの記事をご覧ください。
消費税の仕組み~非課税?免税?課税売上割合?実は細かい消費税の計算構造~

グーグルアドセンス収入の消費税の取扱い

グーグルアドセンス収入は、国外取引のため消費税は課税されません(不課税)。

平成27年(2015年)10月1日以降のグーグルアドセンス収入については、「役務提供を受ける者」の住所等により国内取引に該当するかどうかの判定します。

「役務提供を受ける者」とは、シンガポール法人の「Google Asia Pacific Pte. Ltd. 」であるため、国外取引となります。

後ほど解説するグーグル広告費用は、平成31年(2019年)4月1日より国内取引(課税対象)となりましたが、アドセンス収入については上記解説の通り国外取引(不課税)のままです。

ちなみに、平成27年9月30日以前は、判定基準が「役務提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地」となっていたため、国内取引(課税対象)として扱われていました。
消費税を昔から勉強していた人にとってはこの考え方が当たり前でしたので、法改正があったときは違和感しかありませんでした。
国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について(国税庁HP)
ただし、契約先の変更等により、国内取引(課税対象)となる可能税はゼロではありませんので、申告前に確認したほうが良いかもしれません。

グーグル広告費用の消費税の取扱い

グーグル広告費用は、広告を出す側(企業など)のお話なので、ユーチューバーやブロガーにはあまり関係のない内容かもしれません。
なので、サラッと解説します。
2019年4月1日以降、グーグル広告アカウントの契約先は、日本法人の「グーグル合同会社」なので、国内取引(課税対象)となっています。
したがって、売上の消費税から控除する仕入の消費税として計算することとなります。
2019年3月31日以前は、契約先がシンガポール法人の「Google Asia Pacific Pte. Ltd. 」であったため、消費税の取扱いはリバースチャージ方式というややこしい考え方の対象でした。
国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について(国税庁HP)

ここでは詳しい解説は割愛しますが、消費税の計算方式によって、リバースチャージ方式として処理する場合と、不課税として処理する場合がありました。
グーグルアドセンスアカウント(売上)はシンガポール法人の「Google Asia Pacific Pte. Ltd. 」のままで、グーグル広告アカウント(仕入)は日本法人の「グーグル合同会社」である点には気を付けたいところです。

YouTuber事務所への所属の有無で売上の消費税が異なる?

今回のテーマの本題です。

YouTuber事務所によって取扱いが異なるかもしれませんが、基本的には同じだと思います。

以下、某YouTuber事務所の事業概況に沿って解説します。

YouTuber事務所に所属した場合の会計処理

YouTuber事務所(以下「事務所」)に所属すると、アドセンス収入は直接YouTuber本人に入らず、いったん事務所が受け取ります。

事務所がいったん収益として計上した中から、一部をYouTuberに支払うことにより、YouTuberはその受け取った一部の金額を収益として計上します。

流れとしては、
グーグルからアドセンス収益として100円が事務所に入る

事務所は、100円の80%である80円をYouTuberに支払う
(例えば、契約で20%を事務所の取り分にすると定めがある場合)

事務所から収益として80円がYouTuber入る
という具合です。

アドセンス収益の流れだけを会計処理で考えてみると、
・事務所→売上100円△仕入80円=利益20円
・YouTuber→売上80円
という処理になります。

消費税の取扱い

事務所がグーグルから受け取るアドセンス収入については、先ほど解説した通り、国外取引のため消費税は課税されません(不課税)。

では、YouTuberが事務所に所属した場合の事務所から受け取る収益については、消費税はどのような取扱いになるのでしょうか?

結論として、国内取引(課税対象)となります。

そうなると、消費税の課税事業者(前々年又は前々期の課税売上が1,000万円超)は、直接グーグルからアドセンス収入を受け取るよりも、手元に残るお金が少なくなる可能性があります。

・グーグルから直接受け取る場合→国外取引(不課税)
・事務所が間に入って受け取る場合→国内取引(課税対象)

手元に残るお金が少なくなる“可能性”があると言ったのは、事務所から支払われる金額に、プラスで消費税分がオンされるかどうかによるからです。

先ほどの会計処理の例で、
・事務所→売上100円△仕入80円=利益20円
・YouTuber→売上80円
という流れを示しましたが、
例えば事務所がYouTuberに支払う80円(80%)について、消費税10%(8円)をオンした88円をYouTuberに支払った場合には、YouTuberが売上の消費税8円を納税したとしても手元に80円が残るので、YouTuberの負担はないことになります。

しかし、事務所がYouTuberに支払う80円(80%)について、その80円が税込80円だった場合、YouTuberは売上の消費税7円(80円×10/110)を納税しなければなりませんので、手元に残るお金は80円△7円=73円ということになります。

事務所によって、このあたりの契約がどうなっているかはわかりませんが、某YouTuber事務所の外部報告用資料を見ると、税込○%をYouTuberに支払う定めとなっていますので、事務所に所属しない場合より手元に残るお金は少なくなるということになります。

普通に考えて、消費税分をオンしてくれる(事務所が消費税分を負担してくれる)ケースの方が少ないと考えられますので、事務所に所属するメリットと天秤にかけて選択する必要があるかもしれません。

これは、あくまでも消費税の課税事業者のお話ですので、売上が1,000万円に届かない方は気にする必要はありません。
手数料を抜かれても事務所に所属するメリットを取るか、自力で頑張るか、という選択になるかと思います。

契約形態によって消費税の取扱いは変わるのか?

事務所によっては、「専属契約」や「MCN(マルチチャンネルネットワーク)契約」など、いくつかの契約形態があるかもしれません。

例えば「専属契約」の場合は、「収入の○%をYouTuberに支払い、残りを事務所の取り分とする」と規定されていたり、
「MCN(マルチチャンネルネットワーク)契約」の場合は、「月額○円を事務所に支払う」と規定されているケースがあるかもしれません。

いずれの場合においても、いったん事務所にアドセンス収益が入るという契約(CMS機能=事務所がアドセンス収益を一括して受け取ることができる機能)になっている以上、先ほど解説した通り、YouTuberが事務所から受け取る収益は、国内取引(課税対象)になると考えられます。

なぜなら、事務所がアドセンス収益を一括して受け取った段階で、国外取引(不課税)売上の処理が行われ、YouTuberへの支払いは国内取引(課税対象)仕入で計上されていると考えられるからです。

事務所がYouTuberとの契約形態で売上の区分をしているかどうか分かりませんが、おそらくボンッと一括計上なんじゃないかなぁと思います。

あとがき

思い付くがままに書き綴ったので、文章の分かりにくいところや、何度も同じことを書いているところがあるかもしれません。どうかご容赦ください。

ユーチューバーの方にとっては、おそらく軌道に乗せるためには事務所に所属することがベターな選択かもしれませんが、税金のことだけで言うと、どちらが良いか判断をする必要があります。

どのような契約・形態になっているのか、所属事務所に一度確認してみても良いかもしれません。

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