土地建物を売却する場合の所有期間について(譲渡所得の計算)

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、譲渡所得の所有期間についてのお話です。

譲渡所得は、所有期間が5年以下か5年超かによって適用される税率が異なります。

特に金額が大きい不動産の譲渡については、慎重に判断しなければなりません。

総合課税の短期譲渡・長期譲渡、分離課税の短期譲渡・長期譲渡について、そして所有期間の基準日について簡単に解説します。

【この記事でわかること】
♦譲渡所得とは
♦譲渡所得の計算方法とは
♦「総合」と「短期」で所有期間の基準日が異なる

譲渡所得の種類

土地や建物、車両や備品などの資産を売却した場合には、「譲渡所得」という所得区分により計算します。
さらに譲渡所得は、下記の4つに区分されます。
<土地建物以外>
・短期譲渡所得(総合)
・長期譲渡所得(総合)
<土地建物>
・短期譲渡所得(分離)
・長期譲渡所得(分離)

「総合」「分離」とは

「総合」とは、所得税の計算を行う際に、最終的には給与所得や事業所得などの他の所得と合算して、所得税を計算するものをいいます。
「分離」とは、所得税の計算を行う際に、他の所得とは分離して、所得税を計算するものをいいます。
合算して所得税を計算する場合には、超過累進税率により所得税を計算しますが、
分離して所得税を計算する場合には、分離した所得のそれぞれの税率により所得税を計算します。

「短期」「長期」とは

「短期」とは、資産の所有期間が5年以下のものをいいます。
「長期」とは、資産の所有期間が5年超のものをいいます。
ただし、土地建物以外の「総合」と土地建物の「分離」で5年の基準日が異なるので、注意が必要です。

譲渡所得の計算

譲渡所得の計算は、4区分で異なります。
<短期譲渡所得(総合)>
総収入金額△(取得費+譲渡費用)△特別控除50万円
<長期譲渡所得(総合)>
{総収入金額△(取得費+譲渡費用)△特別控除50万円※}×1/2
※特別控除は、短期譲渡所得(総合)で引ききれない場合のその残額、又は、短期譲渡所得(総合)がない場合は全額
<短期譲渡所得(分離)>
{総収入金額△(取得費+譲渡費用)}×39%※
※税率は、所得税30%+住民税9%(復興税は未考慮)
<長期譲渡所得(分離)>
{総収入金額△(取得費+譲渡費用)}×20%※
※税率は、所得税15%+住民税5%(復興税は未考慮)

所有期間の注意点

所有期間の判定は、「5年以下」の場合は「短期」、「5年超」の場合は「長期」として判断します。
ただし、その5年判定の基準日は、「総合」と「分離」で異なることに注意が必要です。

「総合」の譲渡所得の場合

「総合」の譲渡所得の場合、実際の所有期間が「5年以下」か「5年超」かで判定します。
例えば、2016年9月に購入した骨董品を2021年10月に売却した場合、2015年9月から5年を超えて所有しているため、「5年超」という判定になります。

「分離」の譲渡所得の場合

「分離」の譲渡所得の場合、売却した年の1月1日時点での所有期間が「5年以下」か「5年超」かで判定します。
例えば、2016年9月に購入した土地を2021年10月に売却した場合、2021年1月1日時点では所有期間が5年を超えていないため、「5年以下」という判定になります。

参考条文

(譲渡所得)
所得税法第三十三条
譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。
2 次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得
3 譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
一 資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)
二 資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの →5年超(当ブログ追加記入)
4 前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。
5 第三項の規定により譲渡益から同項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除する場合には、まず、当該譲渡益のうち同項第一号に掲げる所得に係る部分の金額から控除するものとする。
(長期譲渡所得の課税の特例)
租税特別措置法第三十一条
個人が、その有する土地若しくは土地の上に存する権利(以下第三十二条までにおいて「土地等」という。)又は建物及びその附属設備若しくは構築物(以下同条までにおいて「建物等」という。)で、その年一月一日において所有期間が五年を超えるものの譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人(当該個人が非居住者である場合の所得税法第百六十一条第一項第一号に規定する事業場等を含む。)に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるもの(第三十三条から第三十七条の六まで、第三十七条の八及び第三十七条の九において「譲渡所得の基因となる不動産等の貸付け」という。)を含む。以下第三十二条までにおいて同じ。)をした場合には、当該譲渡による譲渡所得については、同法第二十二条及び第八十九条並びに第百六十五条の規定にかかわらず、他の所得と区分し、その年中の当該譲渡に係る譲渡所得の金額(同法第三十三条第三項に規定する譲渡所得の特別控除額の控除をしないで計算した金額とし、第三十二条第一項に規定する短期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同項後段の規定にかかわらず、当該計算した金額を限度として当該損失の金額を控除した後の金額とする。以下この項及び第三十一条の四において「長期譲渡所得の金額」という。)に対し、長期譲渡所得の金額(第三項第三号の規定により読み替えられた同法第七十二条から第八十七条までの規定の適用がある場合には、その適用後の金額。以下第三十一条の三までにおいて「課税長期譲渡所得金額」という。)の百分の十五に相当する金額に相当する所得税を課する。この場合において、長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同法その他所得税に関する法令の規定の適用については、当該損失の金額は生じなかつたものとみなす。
(短期譲渡所得の課税の特例)
租税特別措置法第三十二条
個人が、その有する土地等又は建物等で、その年一月一日において第三十一条第二項に規定する所有期間が五年以下であるもの(その年中に取得をした土地等又は建物等で政令で定めるものを含む。)の譲渡をした場合には、当該譲渡による譲渡所得については、所得税法第二十二条及び第八十九条並びに第百六十五条の規定にかかわらず、他の所得と区分し、その年中の当該譲渡に係る譲渡所得の金額(同法第三十三条第三項に規定する譲渡所得の特別控除額の控除をしないで計算した金額とし、第三十一条第一項に規定する長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同項後段の規定にかかわらず、当該計算した金額を限度として当該損失の金額を控除した後の金額とする。以下この項において「短期譲渡所得の金額」という。)に対し、課税短期譲渡所得金額(短期譲渡所得の金額(第四項において準用する第三十一条第三項第三号の規定により読み替えられた同法第七十二条から第八十七条までの規定の適用がある場合には、その適用後の金額)をいう。)の百分の三十に相当する金額に相当する所得税を課する。この場合において、短期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同法その他所得税に関する法令の規定の適用については、当該損失の金額は生じなかつたものとみなす。
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