免税事業者のインボイスの取りやめについて

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、消費税のインボイス制度について、免税事業者がインボイス登録を行った場合の取りやめについて、簡単に解説します。

免税事業者の場合、適格請求書(インボイス)発行事業者の登録について経過措置適用の有無によって、取りやめる際に注意が必要です。

【この記事でわかること】
♦インボイス登録の取りやめ
♦原則と経過措置適用時との違い
♦提出日の注意点
♦基準期間の課税売上高が1,000万円以下となった場合

免税事業者のインボイス登録

原則

免税事業者が登録申請を行う場合には、原則として下記の要件を満たす必要があります。

①登録を受けようとする課税期間の初日の前日(前課税期間の末日)までに、「消費税課税事業者選択届出書」を提出すること

②課税事業者となる課税期間の初日の前日から起算して1か月前の日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出すること

例えば、課税期間が1/1~12/31の場合、令和5年から適用開始となるよう令和4年中に「消費税課税事業者選択届出書」及び「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出したときは、令和5年1月1日から消費税の課税事業者となり、インボイスの登録日である10月1日から適格請求書発行事業者となります。

令和5年10月1日の属する課税期間中に登録する場合

令和5年10月1日の属する課税期間中に登録する場合には、経過措置を適用することができます。

この場合、原則として令和5年3月31日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出すると、令和5年10月1日が適格請求書発行事業者の登録日となり、登録日以降は自動的に課税事業者となります。

したがって、経過措置を適用する場合には、「消費税課税事業者選択届出書」の提出は必要ありません。

 

免税事業者のインボイス登録については、過去の記事をご参照ください↓

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インボイス取りやめの注意点

原則

諸事情により免税事業者に戻る場合、原則として下記の要件を満たす必要があります。

①登録を取りやめようとする課税期間の初日の前日(前課税期間の末日)までに、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出すること

②免税事業者となる課税期間の初日の前日から起算して30日前よりも前に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出すること

例えば、課税期間が1/1~12/31の場合、令和8年から免税事業者に戻るときは、令和7年中に「消費税課税事業者選択不適用届出書」及び「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出しなければなりません。

経過措置の適用がある場合

免税事業者が経過措置により適格請求書発行事業者+消費税課税事業者となった場合には、登録を取りやめようとする課税期間の前課税期間中に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出すれば、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することなく免税事業者に戻ることができます。

経過措置を受けた場合には、そもそも「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなくても自動的に課税事業者となることから、その逆も「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することなく自動的に免税事業者となるというところです。

登録申請書と登録取消届出書の提出日

「適格請求書発行事業者の登録申請書」と「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」の提出日には注意が必要です。

登録申請書

「適格請求書発行事業者の登録申請書」は、「課税事業者となる課税期間の初日の前日から起算して1か月前の日まで」となっているので、例えば12月決算法人で令和6年から登録を受けようとする場合、

・課税事業者となる課税期間の初日→令和6年1月1日
・初日の前日→令和5年12月31日
・前日から起算して1か月前の日まで→令和5年11月30日

となります。

「1か月前の日」とあるので、単純にその応当日(12月末日→11月末日)という考えです。

登録取消届出書

「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」は、「免税事業者となる課税期間の初日の前日から起算して30日前よりも前」となっているので、例えば12月決算法人ので令和8年から登録を取りやめる場合、

・免税事業者となる課税期間の初日→令和8年1月1日
・初日の前日→令和7年12月31日
・前日から起算して30日前→令和7年12月2日
・30日前よりも前→令和7年12月1日

となります。

登録の取消しの場合は、「1か月前」ではなく「30日前よりも前」となっているので、しっかり日にちを数える必要があります。

ちなみに2月決算法人の場合、
・免税事業者となる課税期間の初日→令和8年3月1日
・初日の前日→令和8年2月28日
・前日から起算して30日前→令和8年1月30日
・30日前よりも前→令和8年1月29日
となります。

(登録の取りやめ)
問 14
当社は3月決算法人であり、令和5年 10 月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けていましたが、令和8年4月1日から適格請求書発行事業者の登録を取りやめたいと考えています。この場合、どのような手続が必要ですか。【令和3年7月改訂】
【答】
適格請求書発行事業者は、納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(以下「登録取消届出書」といいます。)を提出することにより、適格請求書発行事業者の登録の効力を失わせることができます(新消法 57 の2⑩一)。
なお、この場合、原則として、登録取消届出書の提出があった日の属する課税期間の翌課税期間の初日に登録の効力が失われることとなります(新消法 57 の2⑩一)。
ただし、登録取消届出書を、その提出のあった日の属する課税期間の末日から起算して 30 日前の日から、その課税期間の末日までの間に提出した場合は、その提出があった日の属する課税期間の翌々課税期間の初日に登録の効力が失われることとなります。
したがって、ご質問の場合については、令和8年3月1日までに登録取消届出書を提出する必要があります。

【国税庁HP:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=19

基準期間の課税売上高が1,000万円以下となった場合

通常、基準期間(前々課税期間)の課税売上高が1,000万円以下の場合には、免税事業者となります。

ただし、適格請求書発行事業者となるために「消費税課税事業者選択届出書」を提出している場合、又は、経過措置により自動的に課税事業者となっている場合には、1,000万円以下となったとしても免税事業者となりません。

(適格請求書発行事業者が免税事業者となる場合)
問 18
当社は、適格請求書発行事業者の登録を受けています。翌課税期間の基準期間における課税売上高が 1,000 万円以下ですが、当社は、免税事業者となりますか。
【答】
その課税期間の基準期間における課税売上高が 1,000 万円以下の事業者は、原則として、消費税の納税義務が免除され、免税事業者となります。
しかしながら、適格請求書発行事業者は、その基準期間における課税売上高が 1,000 万円以下となった場合でも免税事業者となりません(新消法9①、インボイス通達2-5)。
したがって、適格請求書発行事業者である貴社は、翌課税期間に免税事業者となることはありません。

【国税庁HP:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=19

(適格請求書発行事業者における法第9条第1項本文の適用関係)
インボイス通達2-5
適格請求書発行事業者は、その登録日の属する課税期間以後の課税期間については、法第9条第1項本文《小規模事業者に係る納税義務の免除》の規定の適用はないことに留意する。
なお、適格請求書発行事業者の登録を受けていないとすれば同項本文の規定の適用がある事業者が、その適用を受けるには、その適用を受けようとする課税期間の前課税期間の末日から起算して30日前の日の前日までに、法第57条の2第10項第1号《適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める場合の届出》に規定する適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書の提出が必要となる。
(注) 法第9条第4項《課税事業者の選択》の規定により課税事業者を選択している適格請求書発行事業者が、同条第1項本文の規定の適用を受けるには、法第57条の2第10項第1号に規定する適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書及び法第9条第5項《課税事業者の選択不適用》に規定する届出書の提出が必要となる。

 

 

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