インボイス制度の登録・経過措置について(免税事業者の課税事業者選択・簡易課税制度選択)

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、免税事業者の消費税インボイス制度(適格請求書等保存方式)についてのお話です。

免税事業者の場合、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録ができないため、課税事業者になる必要があります。

その場合、どのような手続きを行わなければいけないのか、簡単に解説します。

【この記事でわかること】
♦登録申請書の提出(困難な事情とは)
♦免税事業者が登録申請する場合の経過措置
♦免税事業者が簡易課税制度の適用を受ける場合の適用関係

令和3年10月から登録申請開始

原則

適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録申請書は、令和3年10月1日から提出が可能となっています。

インボイス制度が導入される令和5年10月1日に登録を受けようとする場合には、原則として令和5年3月31日までに提出しなければなりません。

ちなみに、原則として登録日の翌日に公表サイトに掲載されますが、令和3年10月中に登録された事業者は、一括して令和3年11月1日に掲載されることとなっています。

4 適格請求書発行事業者情報等の公表サイトへの掲載について
Q5.「登録申請書」を提出した場合、いつ公表サイトに掲載されるのか。
A5.「登録申請書」を提出した場合、原則として、税務署による審査を経て登録された日の翌日に公表サイトに掲載されます。
なお、登録申請受付開始直後の令和3年10月については、多くの「登録申請書」が提出され、税務署による審査に時間を要することが予想されますので、令和3年10月中に登録された場合は、一括して令和3年11月1日に公表サイトに掲載します。

【国税庁HP:適格請求書発行事業者公表サイトに関するよくある質問】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/invoice_shinei13.pdf

なお、令和5年10月1日より前に登録通知を受けた場合、登録日は登録の効力が生じる令和5年10月1日となります。

「困難な事情」がある場合

「困難な事情」により令和5年3月31日までに登録申請書を提出できなかった場合、令和5年9月30日までに提出すれば令和5年10月1日から登録を受けることができます。

ただし、「困難な事情」については、困難の度合いを問わないので、何かしらの理由を記載することが出来れば、令和5年3月31日を過ぎて提出したとしても、令和5年10月1日から登録を受けることが可能となります。

(困難な事情がある場合の意義)
インボイス通達5-2
改正令附則第 15 条に規定する「困難な事情」については、28 年改正法附則第 44 条第1項ただし書に規定する 35 年施行日の6月前の日(法第9条の2第1項の規定により法第9条第1項本文の規定の適用を受けないこととなる事業者にあっては、35 年施行日の3月前の日)までに登録申請書を提出することにつき困難な事情があれば、その困難の度合いを問わず、改正令附則第 15 条に規定する経過措置を適用することができることに留意する。
(注) 35 年施行日とは、28 年改正法附則第 32 条第3項に規定する「35 年施行日」をいい、具体的には平成 35 年 10 月1日を指す。

「困難な事情」が全くない場合

「困難な事情」が全く無く令和5年3月31日までに登録申請書を提出できなかった場合で、4/1~9/30に提出したときの取扱いについては、2021年9月30日時点では不明です。(消費税軽減税率・インボイス制度電話相談センターにて確認済み)

国税庁のQ&Aでは、
・書面提出→1か月程度
・e-Tax提出→2週間程度
で登録通知を受けられる旨の記載がありますが、おそらく制度開始の直前については混雑が予想されるため、10/1の登録は難しいと考えられます。

したがって、令和5年10月1日から登録を受けたい場合には、何かしらの「困難な事情」を記載して提出する必要があります。

(登録申請から登録通知までの期間)
問4
登録申請書を提出してから登録の通知を受けるまでにどの程度の期間がかかりますか。【令和3年7月追加】
【答】
登録申請書を提出してから登録の通知を受けるまでの期間については、提出された登録申請書の件数や個々の審査等に要する期間によって異なり、一律に回答することは難しいですが、書面で提出された登録申請書については1か月程度e-Tax で提出された登録申請書については2週間程度の期間が見込まれます。
なお、一時期に多量に登録申請書が提出されるなど、処理期間に影響がある場合には、その旨を国税庁ホームページ等で周知していくことを予定しています。

【国税庁HP:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=19

免税事業者の登録手続

原則

原則として、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けようとする課税期間の前課税期間の末日までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出(課税事業者を選択)し、併せて、登録を受けようとする課税期間の初日の前日から起算して1か月前までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する必要があります。

例えば、12月決算法人や個人事業主が令和6年1月1日から登録を受けたい場合、次の年月日までにそれぞれ提出する必要があります。
・消費税課税事業者選択届出書→令和5年12月31日
・適格請求書発行事業者の登録申請書→令和5年11月30日

(小規模事業者に係る納税義務の免除)
消費税法第九条
事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
4 第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる事業者が、その基準期間における課税売上高(同項に規定する基準期間における課税売上高をいう。第十一条第四項及び第十二条第三項を除き、以下この章において同じ。)が千万円以下である課税期間につき、第一項本文の規定の適用を受けない旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、当該提出をした事業者が当該提出をした日の属する課税期間の翌課税期間(当該提出をした日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が千万円を超える課税期間を除く。)中に国内において行う課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、同項本文の規定は、適用しない

(登録申請書を提出することができる事業者)
インボイス通達2-1
適格請求書発行事業者の登録(法第 57 条の2第1項《適格請求書発行事業者の登録等》に規定する登録をいう。以下同じ。)を受けることができるのは、課税事業者に限られるのであるが、免税事業者であっても、例えば、次の場合のように、登録を受けようとする課税期間において課税事業者となるときは、法第 57 条の2第2項《適格請求書発行事業者の登録申請》に規定する申請書(以下「登録申請書」という。)を提出することができることに留意する。
⑴ 免税事業者である事業者が、基準期間における課税売上高が 1,000 万円超であることにより、翌課税期間から課税事業者となる場合
⑵ 免税事業者である事業者が、法第9条第4項《課税事業者の選択》に規定する届出書(以下「課税事業者選択届出書」という。)を提出し、課税事業者となることを選択する場合
(注) 免税事業者が課税事業者となる課税期間の初日から登録を受けようとするときは、原則として、当該課税期間の初日の前日から起算して1月前の日までに登録申請書を提出しなければならない。

経過措置

令和5年10月1日を含む課税期間中に登録を受けた場合には、「消費税課税事業者選択届出書」の提出が無くても登録日から課税事業者となる経過措置が設けられています。

例えば、12月決算法人や個人事業主で経過措置が適用される場合としては、以下のパターンが考えられます。

①インボイス制度が導入される令和5年10月1日から登録を受ける場合

令和5年3月31日(「困難な事情」がある場合は令和5年9月30日)までに登録申請書を提出した場合、登録日は制度開始の令和5年10月1日となるため、「令和5年10月1日を含む課税期間中に登録を受けた場合」に該当し、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなくても、令和5年10月1日から課税事業者(適格請求書発行事業者)となることができます。

②令和5年10月1日から令和5年12月31日に登録を受ける場合

例えば、令和5年11月1日に登録申請書を提出し、令和5年12月1日に登録を受けた場合、課税期間は令和5年1月1日から令和5年12月31日であるため、「令和5年10月1日を含む課税期間中に登録を受けた場合」に該当し、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなくても、令和5年12月1日から課税事業者(適格請求書発行事業者)となることができます。

この場合、令和5年10月1日から令和5年11月30日までは、免税事業者であるためインボイスを発行することができません。

(免税事業者が令和5年 10 月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合)
問8
免税事業者が令和5年 10 月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合の取扱いについて教えてください。また、この場合、いつから課税事業者となりますか。【令和3年7月改訂】
【答】
免税事業者が令和5年 10 月1日の属する課税期間中に登録を受けることとなった場合には、登録日(令和5年 10 月1日より前に登録の通知を受けた場合であっても、登録の効力は登録日である令和5年 10 月1日から生じることとなります。)から課税事業者となる経過措置が設けられています(28 年改正法附則 44④、インボイス通達5-1)。
したがって、この経過措置の適用を受けることとなる場合は、登録日から課税事業者となり、登録を受けるに当たり、課税選択届出書を提出する必要はありまん
なお、経過措置の適用を受けて適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、登録日から課税事業者となり、基準期間の課税売上高にかかわらず、登録日から課税期間の末日までの期間について、消費税の申告が必要となります。
(注) この経過措置の適用を受けない課税期間に登録を受ける場合については、原則どおり、課税選択届出書を提出し、課税事業者となる必要があります。
なお、免税事業者が課税事業者となることを選択した課税期間の初日から登録を受けようとする場合は、その課税期間の初日の前日から起算して1月前の日までに、登録申請書を提出しなければなりません(新消法 57 の2②、新消令 70 の2)。

【国税庁HP:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=19

(免税事業者に係る適格請求書発行事業者の登録申請に関する経過措置)
インボイス通達5-1
28 年改正法附則第 44 条第4項《適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置》の規定により、適格請求書発行事業者の登録開始日(同条第3項に規定する「登録開始日」をいう。)が平成 35 年 10 月1日の属する課税期間中である適格請求書発行事業者の登録がされた場合には、当該登録開始日から当該課税期間の末日までの間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、法第9条第1項本文の規定は適用されないのであるから、当該課税期間において免税事業者である事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合には、登録申請書のみを提出すればよく、課税事業者選択届出書の提出を要しないことに留意する。
(注) 28 年改正法附則第 44 条第4項の規定の適用を受け、平成 35 年 10 月1日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者は、当該課税期間の翌課税期間以後の課税期間についても法第9条第1項本文《小規模事業者に係る納税義務の免除》の規定の適用はないこととなる。
なお、当該事業者(適格請求書発行事業者の登録を受けていないとすれば、同項本文の規定の適用がある事業者に限る。)は、法第 57 条の2第 10 項第1号《適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める場合の届出》に規定する適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書を提出し、当該登録の取消しを受けることで、法第9条第1項本文の規定が適用される。

免税事業者の経過措置での簡易課税制度の選択

簡易課税制度の原則

消費税の簡易化精製度の適用を受ける場合には、その適用を受けようとする課税期間の前課税期間の末日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

したがって、免税事業者が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けるためには、原則として、「課税事業者選択届出書」の提出と併せて、「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

経過措置

免税事業者の経過措置として、令和5年3月31日(「困難な事情」がある場合は令和5年9月30日)までに登録申請書を提出した場合、登録日は制度開始の令和5年10月1日となるため、「令和5年10月1日を含む課税期間中に登録を受けた場合」に該当し、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなくても、令和5年10月1日から課税事業者(適格請求書発行事業者)となることができる経過措置は、先ほど解説しました。

例えば12月決算法人や個人事業主で、この場合の簡易課税制度の選択については、以下のパターンが考えられます。

①令和4年中に簡易課税制度選択届出書を提出する場合

令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする際に、登録日から課税事業者となることから簡易課税制度の適用を受けようとするため、「適格請求書発行事業者の登録申請書」と「簡易課税制度選択届出書」を一緒に提出する場合も考えられます。

免税事業者が令和4年12月31日までに一緒に提出した場合、令和5年10月1日から課税事業者となり、簡易課税制度の適用を受けることになります。

令和4年中に簡易課税制度選択届出書を提出すると、翌期の令和5年1月1日から効力が発生してしまうと感じるかもしれませんが、適格請求書発行事業者の登録(税課税事業者)の効力が生じるのはあくまでも令和5年10月1日以降であるため、免税事業者である令和5年9月30日までは納税義務は発生しません。

②令和5年10月1日を含む課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出する場合

免税事業者については、「令和5年10月1日を含む課税期間中に登録を受けた場合」に限り、その課税期間中に簡易課税制度選択届出書(その課税期間から適用を受ける旨を記載)を提出した場合には、その課税期間の前課税期間の末日までに提出したものとみなされます。

したがって、免税事業者が令和5年10月1日から簡易課税制度の適用を受けようとするためには、12月決算法人及び個人事業主については令和5年12月31日まで(①を考慮すると、令和4年1月1日から令和5年12月31日まで)に簡易課税制度選択届出書を提出すれば良いことになります。

ちなみに、令和5年11月1日に登録申請書を提出し、令和5年12月1日に登録を受けた場合、経過措置により令和5年12月1日から課税事業者となるため、簡易課税制度の適用も令和5年12月1日からとなります。

(簡易課税制度を選択する場合の手続等)
問 10
免税事業者が令和5年 10 月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、登録を受けた日から課税事業者になるとのことですが、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができますか。【令和3年7月追加】
【答】
免税事業者が令和5年 10 月1日の属する課税期間中に登録を受けることとなった場合には、登録日(令和5年 10 月1日より前に登録の通知を受けた場合であっても、登録の効力は登録日である令和5年 10 月1日から生じます。)から課税事業者となる経過措置が設けられています(28 年改正法附則 44④、インボイス通達5-1)。
この経過措置の適用を受ける事業者が、登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を、納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その課税期間の初日の前日に消費税簡易課税制度選択届出書を提出したものとみなされます(改正令附則 18)。
したがって、ご質問の場合、令和5年 10 月1日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、その課税期間から、簡易課税制度の適用を受けることができます。

【国税庁HP:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=19

インボイス制度の書籍

インボイス関係の書籍は、新しい情報が載っている方が好ましいです。

国税庁のQ&Aやリーフレットも、随時改定されています。

最近発売された書籍については、下記のようなものがあります。




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