奨学金の返還支援(代理返還)に関する課税関係

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

奨学金を返済しながら働いている人もいると思いますが、中には会社が代わりに返済してくれる場合があるようです。

そのような場合に、代わりに返済された部分が給与等として課税されるかどうかが問題になります。

今回は、従業員の奨学金を会社が返済支援する場合の取扱いについて、簡単に説明します。

日本学生支援機構の代理返還制度

日本学生支援機構は、2021年4月より「奨学金返還支援(代理返還)」を開始しました。

制度の仕組みとしては、日本学生支援機構の貸与奨学金(第一種奨学金・第二種奨学金)を受けていた従業員に対し、会社が返還額の一部又は全部を日本学生支援機構に直接返還するものです。

この制度の対象となる奨学金は、日本学生支援機構の貸与奨学金に限られるため、従業員が通っていた大学や団体等からの奨学金は対象外となります。

企業の奨学金返還支援(代理返還)への対応【日本学生支援機構】
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/kigyoshien/__icsFiles/afieldfile/2022/09/06/kigyoushien5_1.pdf

給与課税の有無

所得税法上、学資金のうち通常の給与に加算して受けるものについては、非課税とされています。

学資金のうち「通常の給与に加算して受けるもの」なので、通常の給与から奨学金返還分をマイナスして(通常の給与に代えて)給付した場合には、非課税とはなりません。

国税庁HPの質疑応答事例(奨学金の返済に充てるための給付は「学資に充てるため給付される金品」に該当するか)においても、

その奨学金が学資に充てられており、かつ、その給付される金品がその奨学金の返済に充てられる限りにおいては、通常の給与に代えて給付されるなど給与課税を潜脱する目的で給付されるものを除き、これを非課税の学資金と取り扱っても、課税の適正性、公平性を損なうものではないと考えられます。

と回答されています。

(非課税所得)
所得税法第九条
次に掲げる所得については、所得税を課さない
十五 学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するもの(給与所得を有する者がその使用者から受けるものにあつては、通常の給与に加算して受けるものであつて、次に掲げる場合に該当するもの以外のものを除く。)を除く。)及び扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品
イ 法人である使用者から当該法人の役員(法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員をいう。ロにおいて同じ。)の学資に充てるため給付する場合
ロ 法人である使用者から当該法人の使用人(当該法人の役員を含む。)の配偶者その他の当該使用人と政令で定める特別の関係がある者の学資に充てるため給付する場合
ハ 個人である使用者から当該個人の営む事業に従事する当該個人の配偶者その他の親族(当該個人と生計を一にする者を除く。)の学資に充てるため給付する場合
ニ 個人である使用者から当該個人の使用人(当該個人の営む事業に従事する当該個人の配偶者その他の親族を含む。)の配偶者その他の当該使用人と政令で定める特別の関係がある者(当該個人と生計を一にする当該個人の配偶者その他の親族に該当する者を除く。)の学資に充てるため給付する場合

(通常の給与に加算して受ける学資に充てるため給付される金品)
所得税基本通達9-14
法第9条第1項第15号の規定の適用において、学資に充てるため給付される金品(以下9-16までにおいて「学資金」という。)で、給与その他対価の性質を有するもののうち、給与所得を有する者がその使用者から受けるものについて非課税となるのは、通常の給与に加算して受けるものに限られるのであるから、同号イからニまでに掲げる場合に該当しない給付であっても通常の給与に代えて給付されるものは、非課税とならないことに留意する。(平元直所3-14、直法6-9、直資3-8、平22課個2-16、課法9-1、課審4-30、平28課法10-1、課個2-6、課審5-7改正)

賃上げ促進税制の対象

所得税法上非課税とされる学資金については、法人税法上の給与として損金算入されるため、法人税の「賃上げ促進税制」の対象となります。

賃上げ促進税制の詳細については、経済産業省HPをご参照ください。
経済産業省(税制について)

標準報酬月額の算定には含めない

日本学生支援機構によると、原則として標準報酬月額の算定のもととなる報酬には含めないようです。

このあたりは、社会保険労務士さんに確認したほうがよさそうです。

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