泥棒やオレオレ詐欺にあった場合の所得税の取扱い&泥棒の所得税の取扱い

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、泥棒に入られてしまった場合や、オレオレ詐欺などの特殊詐欺にあってしまった場合、所得税の計算に何か配慮があるのかどうかについて、簡単に解説します。

また逆に、泥棒した側の所得税の取扱いについても、簡単に解説します。

【この記事でわかること】
♦生活に通常必要な資産の損失(雑損控除)の取扱い
♦生活に通常必要でない資産の損失の控除の取扱い
♦特殊詐欺があった場合の取扱い
♦泥棒側の取扱い

泥棒に入られてしまった場合

生活に通常必要な資産の損失の控除(雑損控除)

生活をするのに必要な資産(例えば、家具家電や自動車、現金など)が盗難にあってしまった場合、所得税法上一定の金額の所得控除を受けることができます。

これを、「雑損控除」といいます。

盗難以外にも、横領や災害によって被害を受けた場合には、この雑損控除を受けることができます。

細かい計算方法は割愛しますが、時価や合理的な計算方法により算定した損失額を基に計算し、損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後3年間に限り繰り越すことができ、各年の所得金額から控除することができます。

雑損控除を受ける場合には、確定申告を行う必要があり、雑損控除に関する項目に記載するとともに、一定の書類を提示する必要があります。

<控除額の計算>
次の①と②のうち、いずれか多い方の金額を控除額とします。
①(損害金額+災害等関連支出の金額△保険金等の額)△所得金額×10%
②(災害関連支出の金額△保険金等の額)△5万円
※「災害等関連支出の金額」とは、次のような支出をいいます。
・災害により滅失した住宅、家財などを取壊しまたは除去するために支出した金額など
・盗難や横領により損害を受けた資産の原状回復のための支出など

ちなみに、災害があった場合には、「災害減免法」による所得税の軽減免除を受けることができますので、雑損控除と比較して有利な方を選択することになります(併用不可)。

(雑損控除)
所得税法第七十二条
居住者又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族で政令で定めるものの有する資産(第六十二条第一項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)及び第七十条第三項(被災事業用資産の損失の金額)に規定する資産を除く。)について災害又は盗難若しくは横領による損失が生じた場合(その災害又は盗難若しくは横領に関連してその居住者が政令で定めるやむを得ない支出をした場合を含む。)において、その年における当該損失の金額(当該支出をした金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。以下この項において「損失の金額」という。)の合計額が次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に掲げる金額を超えるときは、その超える部分の金額を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
一 その年における損失の金額に含まれる災害関連支出の金額(損失の金額のうち災害に直接関連して支出をした金額として政令で定める金額をいう。以下この項において同じ。)が五万円以下である場合(その年における災害関連支出の金額がない場合を含む。)
その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の十分の一に相当する金額
二 その年における損失の金額に含まれる災害関連支出の金額が五万円を超える場合
その年における損失の金額の合計額から災害関連支出の金額のうち五万円を超える部分の金額を控除した金額と前号に掲げる金額とのいずれか低い金額
三 その年における損失の金額がすべて災害関連支出の金額である場合
五万円と第一号に掲げる金額とのいずれか低い金額
2 前項に規定する損失の金額の計算に関し必要な事項は、政令で定める。
3 第一項の規定による控除は、雑損控除という。

(雑損失の繰越控除)
所得税法第七十一条
確定申告書を提出する居住者のその年の前年以前三年内の各年において生じた雑損失の金額(この項又は次条第一項の規定により前年以前において控除されたものを除く。)は、政令で定めるところにより、当該申告書に係る年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算上控除する。
2 前項の規定は、同項の居住者が雑損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合に限り、適用する。
3 第一項の規定による控除は、雑損失の繰越控除という。

昭和二十二年法律第百七十五号
災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律第二条
災害により住宅又は家財について甚大な被害を受けた者で被害を受けた年分の所得税法第二十二条に規定する総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額(以下「合計所得金額」という。)が千万円以下であるもの(当該災害による損失額について同法第七十二条第一項の規定の適用を受けない者に限る。)に対しては、政令の定めるところにより、当該年分の所得税の額(延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税の額を除く。)を、次の区分により軽減し又は免除する。
合計所得金額が五百万円以下であるとき 当該所得税の額の全部
合計所得金額が七百五十万円以下であるとき 当該所得税の額の十分の五
合計所得金額が七百五十万円を超えるとき 当該所得税の額の十分の二・五

生活に通常必要でない資産の損失の控除

生活に通常必要でない資産(例えば、趣味で保有する高級車やクルーザー、30万円超の貴金属など)が盗難にあってしまった場合であっても、譲渡所得の計算上控除することができます。

その場合、その年と翌年の譲渡所得の金額の計算上控除することとなります。

生活に通常必要でない資産の損失の控除の趣旨は、全く損失が考慮されないことは雑損控除とのバランスを欠くため、一定の範囲内での控除を認めるという考え方に基づきます。

生活に通常必要でない資産の災害による損失)
所得税法第六十二条
居住者が、災害又は盗難若しくは横領により、生活に通常必要でない資産として政令で定めるものについて受けた損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)は、政令で定めるところにより、その者のその損失を受けた日の属する年分又はその翌年分の譲渡所得の金額の計算上控除すべき金額とみなす
2 前項に規定する損失の金額の計算に関し必要な事項は、政令で定める。

(生活に通常必要でない資産の災害による損失額の計算等)
所得税法施行令第百七十八条
法第六十二条第一項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。
一 競走馬(その規模、収益の状況その他の事情に照らし事業と認められるものの用に供されるものを除く。)その他射こう的行為の手段となる動産
二 通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する資産(前号又は次号に掲げる動産を除く。)
三 生活の用に供する動産で第二十五条(譲渡所得について非課税とされる生活用動産の範囲)の規定に該当しないもの
2 法第六十二条第一項の規定により、同項に規定する生活に通常必要でない資産について受けた同項に規定する損失の金額をその生じた日の属する年分及びその翌年分の譲渡所得の金額の計算上控除すべき金額とみなす場合には、次に定めるところによる。
一 まず、当該損失の金額をその生じた日の属する年分の法第三十三条第三項第一号(譲渡所得)に掲げる所得の金額の計算上控除すべき金額とし、当該所得の金額の計算上控除しきれない損失の金額があるときは、これを当該年分の同項第二号に掲げる所得の金額の計算上控除すべき金額とする。
二 前号の規定によりなお控除しきれない損失の金額があるときは、これをその生じた日の属する年の翌年分の法第三十三条第三項第一号に掲げる所得の金額の計算上控除すべき金額とし、なお控除しきれない損失の金額があるときは、これを当該翌年分の同項第二号に掲げる所得の金額の計算上控除すべき金額とする。
3 法第六十二条第一項に規定する生活に通常必要でない資産について受けた損失の金額の計算の基礎となるその資産の価額は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に掲げる金額とする。
一 法第三十八条第一項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)に規定する資産(次号に掲げるものを除く。) 当該損失の生じた日にその資産の譲渡があつたものとみなして同項の規定(その資産が昭和二十七年十二月三十一日以前から引き続き所有していたものである場合には、法第六十一条第二項(昭和二十七年十二月三十一日以前に取得した資産の取得費)の規定)を適用した場合にその資産の取得費とされる金額に相当する金額
二 法第三十八条第二項に規定する資産 当該損失の生じた日にその資産の譲渡があつたものとみなして同項の規定(その資産が昭和二十七年十二月三十一日以前から引き続き所有していたものである場合には、法第六十一条第三項の規定)を適用した場合にその資産の取得費とされる金額に相当する金額

「雑損控除」と「生活に通常必要でない資産の損失の控除」との比較

雑損控除 生活に通常必要でない資産の損失の控除
資産所有者 ①本人
②生計一親族
本人のみ
損失の発生原因 災害・盗難・横領
対象資産 生活に通常必要な資産 生活に通常必要でない資産
損失額 時価+災害等関連支出△保険金等 取得費相当額△保険金等
控除額 損失額△足切額 損失額
控除方法 所得控除 譲渡所得
控除しきれない場合 翌年以後3年間 翌年分

特殊詐欺にあってしまった場合

雑損控除については、「災害・盗難・横領」により生じた損失で、本人の意思によらないことが明らかな事由によって生じた場合を対象としており、詐欺や恐喝の被害は含まれていません。

したがって、オレオレ詐欺によりお金をだまし取られたとしても、振込自体は本人の意思で行われたものであるため、雑損控除の対象にはならないと判断されます。

(定義)
所得税法第二条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
二十七 災害
震災、風水害、火災その他政令で定める災害をいう。
(災害の範囲)
所得税法施行令第九条
法第二条第一項第二十七号(災害の意義)に規定する政令で定める災害は、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他の生物による異常な災害とする。

泥棒した側の所得税の取扱い

泥棒側のお話なので、あまり必要ない論点かもしれませんが、念のため解説しておきます。
所得税を計算する上での収入については、実はその収入の基因となった行為が適法であるかどうかは問いません。
したがって、盗んだものであろうが拾ったものであろうが、その行為があった年の収入となるため、所得計算を行わなければなりません。
とはいえ、泥棒がその収入について確定申告を行うとは思えませんが・・・。
法律上は、そのような取扱いとなっています。
(収入金額)
所得税法第三十六条
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。
3 無記名の公社債の利子、無記名の株式(無記名の公募公社債等運用投資信託以外の公社債等運用投資信託の受益証券及び無記名の社債的受益権に係る受益証券を含む。第百六十九条第二号(分離課税に係る所得税の課税標準)、第二百二十四条第一項及び第二項(利子、配当等の受領者の告知)並びに第二百二十五条第一項及び第二項(支払調書及び支払通知書)において「無記名株式等」という。)の剰余金の配当(第二十四条第一項(配当所得)に規定する剰余金の配当をいう。)又は無記名の貸付信託、投資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益証券に係る収益の分配については、その年分の利子所得の金額又は配当所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、第一項の規定にかかわらず、その年において支払を受けた金額とする。
(収入金額)
所得税基本通達36-1
法第36条第1項に規定する「収入金額とすべき金額」又は「総収入金額に算入すべき金額」は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない
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