不動産所得の収入金額の計上時期

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、不動産オーナーの不動産収入についてのお話です。

不動産の賃料は、翌月分を前月末に受け取るケースが多いですが、その場合に収益の計上時期が問題となります。

その点について、簡単に解説します。

【この記事でわかること】
♦不動産所得の収入金額
♦不動産所得の収入計上時期
♦不動産所得の収入金額の計上例

不動産所得とは

不動産所得とは、不動産等の貸付による所得をいいます。

総収入金額(賃料、更新料など)から必要経費を差し引いて、不動産所得の金額を計算します。

総収入金額△必要経費=不動産所得の金額

(不動産所得)
所得税法第二十六条
不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下この項において「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
2 不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

所得税法における「収入金額」とは

所得税の計算は、1/1~12/31の暦年を単位として、その期ごとに所得税を計算します。
総収入金額に計上する金額は、所得税法で「その年において収入すべき金額」と定められています。
「その年において収入すべき金額」とは、その年において収入することが確定しているものと考えられ、発生主義の考え方に基づくものと考えられます。
ただし、各種所得は性質がそれぞれ異なるため、所得税基本通達にて各種所得の性質に応じた収入計上時期を定めています。
(収入金額)
所得税法第三十六条
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

不動産所得の収入計上時期

原則

不動産所得の収入計上時期は原則として、
・契約等(契約、慣習)による支払日
・支払日が定められていない場合は支払いを受けた日
と所得税基本通達で定められています。
したがって、契約等による支払日が定められている場合には、未収であっても支払日に収益計上します。

(不動産所得の総収入金額の収入すべき時期)
所得税基本通達36-5
不動産所得の総収入金額の収入すべき時期は、別段の定めのある場合を除き、それぞれ次に掲げる日によるものとする。
(1) 契約又は慣習により支払日が定められているものについてはその支払日支払日が定められていないものについてはその支払を受けた日(請求があったときに支払うべきものとされているものについては、その請求の日)
(2) 賃貸借契約の存否の係争等(未払賃貸料の請求に関する係争を除く。)に係る判決、和解等により不動産の所有者等が受けることとなった既往の期間に対応する賃貸料相当額(賃貸料相当額として供託されていたもののほか、供託されていなかったもの及び遅延利息その他の損害賠償金を含む。)については、その判決、和解等のあった日。ただし、賃貸料の額に関する係争の場合において、賃貸料の弁済のため供託された金額については、(1)に掲げる日
(注)
1 当該賃貸料相当額の計算の基礎とされた期間が3年以上である場合には、当該賃貸料相当額に係る所得は、臨時所得に該当する(2-37参照)。
2 業務を営む賃借人が賃借料の弁済のため供託した金額は、当該賃借料に係る(1)に掲げる日の属する年分の当該業務に係る所得の金額の計算上必要経費に算入することに留意する。

特例

継続的な記帳に基づき不動産所得を計算し、賃料の前受収益や未収収益の経理処理を行っているなど一定の要件を満たしている場合には、発生主義に係る期間対応部分の賃料を収入金額に計上することができます。

不動産表を「事業的規模で行っている場合」と「事業的規模で行われていない場合」で、要件が少し異なります。

直所 2-78
昭和48年11月6日
不動産の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額の計上時期について

所得税法第26条第1項《不動産所得》に規定する不動産等の賃貸料の収入金額の計上時期に関する取扱いを下記のとおり定めたから、これによられたい。
(理由)
不動産等の賃貸料にかかる収入金額は、原則として契約上の支払日の属する年分の総収入金額に算入することとしているが、継続的な記帳に基づいて不動産所得の金額を計算しているなどの一定の要件に該当する場合には、その年の貸付期間に対応する賃貸料の額をその年分の総収入金額に算入することを認めることとしたものである。

(不動産等の貸付けが事業として行なわれている場合)
1 所得税法第26条第1項に規定する不動産等の賃貸料にかかる収入金額は、所得税基本通達36-5《不動産所得の総収入金額の収入すべき時期》により、原則としてその貸付けにかかる契約に定められている賃貸料の支払日の属する年分の総収入金額に算入するのであるが、その者が不動産等の貸付けを事業的規模で行なっている場合で、次のいずれにも該当するときは、同法第67条の2《小規模事業者の収入及び費用の帰属時期》の規定の適用を受ける場合を除き、その賃貸料にかかる貸付期間の経過に応じ、その年中の貸付期間に対応する部分の賃貸料の額をその年分の不動産所得の総収入金額に算入すべき金額とすることができる。
(1) 不動産所得を生ずべき業務にかかる取引について、その者が帳簿書類を備えて継続的に記帳し、その記帳に基づいて不動産所得の金額を計算していること。
(2) その者の不動産等の賃貸料にかかる収入金額の全部について、継続的にその年中の貸付期間に対応する部分の金額をその年分の総収入金額に算入する方法により所得金額を計算しており、かつ、帳簿上当該賃貸料にかかる前受収益および未収収益の経理が行なわれていること
(3) その者の1年をこえる期間にかかる賃貸料収入については、その前受収益または未収収益についての明細書を確定申告書に添付していること。
(注) 「不動産等の賃貸料」には、不動産等の貸付けに伴い一時に受ける頭金、権利金、名義書替料、更新料、礼金等は含まれない。

(不動産等の貸付けが事業として行なわれていない場合)
2 その者が不動産等の貸付けを事業的規模で行なっていない場合であつても、上記1の(1)に該当し、かつ、その者の1年以内の期間にかかる不動産等の賃貸料の収入金額の全部について上記1の(2)に該当するときは、所得税法第67条の2の規定の適用を受ける場合を除き、その者の1年以内の期間にかかる不動産等の賃貸料の収入金額については、上記1の取扱いによることができる。

収入計上時期の計算例

不動産収入が6月分から発生した場合に、不動産所得の総収入金額がいくらになるか計算してみます。

前提は、
・月額100,000円
・9/1より賃料発生
・月末に翌月分の賃料が支払われる契約
・9月分は9/1に支払われる契約
です。

①原則

9月分→9/1支払
10月分→9/30支払
11月分→10/31支払
12月分→11/30支払
翌年1月分→12/31支払

原則処理については、契約による支払日なので、9/1支払から12/31支払(5か月分)の合計500,000円が総収入金額となります。

現金預金500,000/受取家賃500,000

ちなみに、9月分から翌年8月分の向こう1年分を受領した場合は、12か月分の1,200,000円が受領した年の総収入金額となります。

②特例

9月分→9/1支払
10月分→9/30支払
11月分→10/31支払
12月分→11/30支払
翌年1月分→12/31支払

特例処理については、期間対応による収入計上となりますので、12/31支払分は前受処理を行うため、9月分から12月分(4か月分)の合計400,000円が総収入金額となります。

現金預金500,000/受取家賃500,000
受取家賃100,000/前受収益100,000

ちなみに、9月分から翌年8月分の向こう1年分を受領した場合は、1,200,000×4か月/12か月=400,000円が総収入金額となり、800,000円を前受処理します。

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