こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。
年末調整のシーズンとなり、12月中に所得税の還付を受けた人も多いと思います。
中には、2か所で働いている人もいると思いますが、2か所に扶養控除申告書などを提出してしまった場合、どのような取扱いになるのでしょうか?
簡単に解説します。
2か所で働いている場合の年末調整の仕組みは、下記の記事もご参照ください。
♦年末調整の仕組み
♦2か所給与の場合の確定申告
♦2か所で年末調整書類を提出してしまった場合の対処方法
そもそも年末調整は主の職場でしか出来ない
扶養控除等申告書の提出
年末調整を職場で行ってもらう場合、扶養控除申告書などの年末調整書類を提出しますが、その書類は主たる職場のみしか提出することが出来ません。
つまり、2か所で働いている場合には、主たる職場でしか年末調整が出来ない仕組みとなっており、それは所得税法で規定されています。
(給与所得者の扶養控除等申告書)
所得税法第百九十四条
国内において給与等の支払を受ける居住者は、その給与等の支払者(その支払者が二以上ある場合には、主たる給与等の支払者)から毎年最初に給与等の支払を受ける日の前日までに、次に掲げる事項を記載した申告書を、当該給与等の支払者を経由して、その給与等に係る所得税の第十七条(源泉徴収に係る所得税の納税地)の規定による納税地(第十八条第二項(納税地の指定)の規定による指定があつた場合には、その指定をされた納税地。以下この節において同じ。)の所轄税務署長に提出しなければならない。
毎月の所得税の計算方法
通常、主で働いている職場(主たる給与)については、扶養控除等申告書の提出があるはずですので、その場合には毎月の所得税は「甲欄」という区分で計算されます。
副で働いている職場(従たる給与)については、扶養控除等申告書の提出がないはずですので、毎月の所得税は「乙欄」という区分で計算されます。
何が違うかというと、ザックリ説明すると「甲欄」よりも「乙欄」のほうが所得税が高く計算されるように設定されています。
ちなみに、主たる職場は自分自身で決めることになりますが、通常は給与収入が多い方を主たる職場(「甲欄」で計算させるため)にします。
2か所以上で働いている場合は原則確定申告
2か所以上で働いている場合、原則として確定申告が必要となります。
確定申告の結果、納税が発生すれば税金を納付し、還付となれば指定した金融機関に返還されることになります。
例えば、2か所で働いていた場合で、税込年収の合計額が103万円以下であったときは、年間の税込年収が103万円以下であれば所得税はかかりませんので、副の職場において乙欄で天引きされた所得税が全額還付されることになります。
ただし、例外として、副として働いていた職場の税込年収が20万円以下であれば、確定申告を行わなくても違法とはなりません。
(確定所得申告を要しない場合)
所得税法第百二十一条
その年において給与所得を有する居住者で、その年中に支払を受けるべき第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この項において「給与等」という。)の金額が二千万円以下であるものは、次の各号のいずれかに該当する場合には、前条第一項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額及び課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。ただし、不動産その他の資産をその給与所得に係る給与等の支払者の事業の用に供することによりその対価の支払を受ける場合その他の政令で定める場合は、この限りでない。
一 一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)又は第百九十条(年末調整)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下この項において「給与所得及び退職所得以外の所得金額」という。)が二十万円以下であるとき。
二 二以上の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条又は第百九十条の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、イ又はロに該当するとき。
イ 第百九十五条第一項(従たる給与についての扶養控除等申告書)に規定する従たる給与等の支払者から支払を受けるその年分の給与所得に係る給与等の金額とその年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が二十万円以下であるとき。
ロ イに該当する場合を除き、その年分の給与所得に係る給与等の金額が百五十万円と社会保険料控除の額、小規模企業共済等掛金控除の額、生命保険料控除の額、地震保険料控除の額、障害者控除の額、寡婦(寡夫)控除の額、勤労学生控除の額、配偶者控除の額、配偶者特別控除の額及び扶養控除の額との合計額以下で、かつ、その年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額が二十万円以下であるとき。
仮に確定申告をした場合に納税が発生していたとしても、上記の要件を満たしていれば確定申告は不要ですので、場合によっては得をするケースが出てくることになります。
2か所で年末調整書類を提出してしまった場合
2か所の職場に扶養控除等申告書を提出してしまった場合、扶養控除等申告書が提出されたそれぞれの職場が主たる職場と判断しますので、両方で年末調整が行われてしまうことになります。
2か所で年末調整が行われてしまうと、税額が正しく計算されない場合がありますので、対処方法としては下記の3つが考えられます。
年末調整前に副の職場で再計算してもらう
正しい方法ではありませんが、年末調整が行われる前までに扶養控除等申告書を取り下げ、乙欄で計算してもらうという方法です。
それまでの甲欄と乙欄の差額を、例えば12月に一括で天引きされれば、辻褄は合います。
その結果、その年の所得税は乙欄で計算されたものとなり、発行される源泉徴収票も乙欄に○が付き、場合によっては摘要欄に「年末調整未済」という文言が記載されます。
そして、その源泉徴収票の「支払金額」が20万円超の場合は、確定申告が必要となります。
副が20万円以下でも確定申告を行う
2か所で年末調整が済んでしまった場合、2か所とも甲欄で所得税が計算され、場合によっては2か所から所得税の還付を受けることになります。
これは所得税法上、認められるものではありません。
この場合、確定申告を行えば、何の問題もありません。
確定申告を行えば、主の給与と副の給与の合計によって正しく所得税が計算されるため、もし納税額が発生した場合にはその額を納付することで完結します。
合計103万円以下なら問題なし
2か所の税込年収合計が103万円以下であれば、2か所で年末調整をしていても大きな問題とはなりません。
なぜならば、仮に副の給与が乙欄で所得税を天引きされていたとしても、確定申告で全額還付されるからです。
前述したとおり、給与の年間税込年収が103万円以下であれば、所得税はかかりません。
給与1,030,000円△給与所得控除550,000=480,000円
480,000円△基礎控除480,000=所得0円
金額のポイント
20万円以下→副の給与が20万円以下であれば確定申告不要
20万円超→副の給与が20万円超であれば確定申告必要
103万円以下→年収103万円以下であれば所得税ゼロ