こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。
今回は、相続税の計算のお話です。
例えば、同じ財産を相続したとしても、ケースによっては支払う税金が異なる場合があります。
簡単な計算式を使って、解説していきます。
♦法定相続人と法定相続分
♦相続税の計算の流れ
♦法定相続人の人数による税額の差異
相続人と相続分の基礎
法定相続人
相続税の計算をする場合、法定相続人の数によって、基礎控除額が変わってきます。
法定相続人とは、民法上定められた相続人のことで、法定相続人が相続できる割合(法定相続分)も民法上規定されています。
配偶者は必ず法定相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で法定相続人となります。
①配偶者+子
↓子がいない場合
②配偶者+直系尊属(父母や祖父母)
↓子・直系尊属がいない場合
③配偶者+兄弟姉妹
子が2人いれば、配偶者+子+子の3人が法定相続人となります。
配偶者がいない場合(既に死亡している場合など)は、次の順序で法定相続人となります。
①子
②直径尊属(父母や祖父母)
③兄弟姉妹
(子及びその代襲者等の相続権)
民法第八百八十七条
被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
民法第八百八十九条
次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。(配偶者の相続権)
民法第八百九十条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
法定相続分
法定相続人の相続分は、民法上定められています。
①配偶者(1/2)+子(1/2)
↓子がいない場合
②配偶者(2/3)+直系尊属(1/3)
↓子・直系尊属がいない場合
③配偶者(3/4)+兄弟姉妹(1/4)
ちなみに、「①配偶者(1/2)+子(1/2)」の場合で、子が2人いるときは、「子(1/2)」を1/2ずつ分けることになります。
・配偶者(1/2)+子(1/2×1/2=1/4)+子(1/2×1/2=1/4)
同様に、兄弟姉妹が3人いれば、「兄弟姉妹(1/4)」を1/3ずつ分けることになります。
・配偶者(2/3)+兄弟姉妹(1/4×1/3=1/12)+兄弟姉妹(1/4×1/3=1/12)+兄弟姉妹(1/4×1/3=1/12)
配偶者がいない場合(既に死亡している場合など)は、次の順序で100%の相続分となります。
子が2人いる場合などの考え方は、上記と同様です。
①子(1/1)
②直系尊属(1/1)
③兄弟姉妹(1/1)
(法定相続分)
民法第九百条
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
相続税計算の基礎
基礎控除額
相続税の計算上、相続財産(正確な税法用語は「課税価格の合計額」)から控除することが出来る基礎控除額は、法定相続人の数によって計算します。
3,000万円+600万円×法定相続人の数=基礎控除額
例えば、夫死亡で妻(配偶者)と子2人が法定相続人の場合、
3,000万円+600万円×3人=4,800万円(基礎控除額)
と計算することができます。
上記の例の場合、課税価額の合計額が4,800万円以下であれば、相続税はゼロとなります。
相続税計算の概要
相続税は累進課税であるため、相続財産が多いほど税額が大きくなります。
相続税の計算は少し特殊で、ザックリ説明すると、
いったん相続財産を合計
↓
基礎控除後の相続財産を法定相続分で按分
↓
法定相続分の財産でそれぞれ税額を計算する
↓
それぞれ計算した税額を合計する
↓
合計税額を実際に取得した財産額の割合で按分して計算する
という流れになります。
いったん法定相続分に分けて税額を計算し、その税額を合計したものを実際に取得した財産額で按分するという構造になっています。
相続税計算の流れ(細かい論点は省略)
相続財産(正確な税法用語は「課税価格の合計額」)から基礎控除額を控除して、課税遺産総額を計算します。
・課税価格の合計額△基礎控除額=課税遺産総額
その課税遺産総額を法定相続分で取得したものとして、各法定相続人の取得金額を計算します。
・課税遺産総額×各法定相続人の法定相続分=法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額(千円未満切捨)
その各法定相続人の取得金額ごとに税率を乗じて、相続税の総額の基となる税額を計算します。
・各法定相続人の取得金額×税率=各法定相続人の算出税額
その各法定相続人の算出税額を合計して、相続税の総額を計算します。
・各法定相続人の算出税額の合計=相続税の総額
最後に、その相続税の総額を、財産を取得した人の課税価格に応じて按分し、財産を取得した人ごとの税額を計算します。
・相続税の総額×各人の課税価格/課税価格の合計額=各人の相続税額
相続税の速算表(令和3年4月1日現在)
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ― |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
法定相続人の数による税額の差異
相続税計算の特性上、
・法定相続人の数によって基礎控除額が異なること
・法定相続分で分けた財産を基に累進税率によって税額を計算すること
があることから、同じ財産額を相続したとしても状況によっては税額が大きく異なってきます。
実際に数字を使って、試算してみます。
【前提】
・子Aが全財産を取得
・財産額(課税価額の合計額)5億円
相続人が1人の場合
相続人が1人(子A)の場合、下記のような計算となります。
5億円△(3,000万円+600万円×1人)=4億6,400万円(課税遺産総額)
4億6,400万円×1/1=4億6,400万円(各法定相続人の取得金額)
4億6,400万円×50%△4,200万円=1憶9,000万円(各法定相続人の算出税額=相続税の総額=子A)
相続人が4人の場合
相続人が4人(子A・子B・子C・子D)の場合、下記のような計算となります。
5億円△(3,000万円+600万円×4人)=4億4,600万円(課税遺産総額)
4億4,600万円×1/4=1憶1,150万円(各法定相続人の取得金額)
1憶1,150万円×40%△1,700万円=2,760万円(各法定相続人の算出税額)
2,760万円×4人=1憶1,040万円(相続税の総額)
1憶1,040万円×5億/5億=1憶1,040万円(子A)
1憶1,040万円×0円/5億=0円(子B・子C・子D)
結果
・相続人1人の場合→1憶9,000万円
・相続人4人の場合→1憶1,040万円
子Aが全財産を取得する場合でも、他に法定相続人がいるときは、7,960万円も少なくなる結果となりました。
基礎控除額の差も原因の一つですが、累進税率の差がかなり大きく影響していると考えられます。