特定期間の判定~給与等支払額の注意点~

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、消費税の納税義務判定について、特定期間の給与等支払額に関するお話です。

特定期間の判定の概要も併せて、簡単に解説します。

【この記事で分かること】
♦特定期間の概要
♦特定期間の給与等支払額の範囲
♦特定期間の給与等支払額の注意点(含まないもの)

特定期間の判定

内容

基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、原則として消費税の免税事業者に該当します。

ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間(前事業年度開始の日以後6か月)の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、消費税課税事業者となります。

事業年度が1年の法人の例

例えば、1月1日から12月31日が事業年度の事業者について、令和4年の前々事業年度である令和2年1月1日から12月31日の税抜課税売上高(基準期間の課税売上高)が1,000万円以下であれば、原則免税事業者となります。

ただし、前事業年である令和3年1月1日から6月30日までの期間の税抜課税売上高(特定期間の課税売上高)が1,000万円を超える場合には、課税事業者となります。

給与等支払額による判定

特定期間の判定については、課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等の金額により判定することもできます。

したがって、特定期間の課税売上高が1,000万円超であったとしても、特定期間中に支払った給与等の金額が1,000万円以下であれば、免税事業者となることができます。

どちらの基準で判断するかは任意となります。

特定期間の給与等支払額の範囲及び注意点

特定期間の給与等支払額の範囲

特定期間中に支払った給与等の金額とは、所得税の課税対象となる給与や賞与などが該当し、所得税が非課税となる通勤手当などは該当しません。

注意点

月末締め翌月支払の給与について、月末に未払計上している場合には、その未払計上分は給与等支払額に含めません。

例えば、特定期間の課税売上高が1,500万円で、給与等支払額が1,100万円(未払い分200万円を含む)であった場合、給与等支払額は900万円(1,100万円△200万円)で判定することができます。

また、非居住者に支払った給与があった場合、判定の対象となる給与等支払額は居住者に支払ったものであるため、その分は給与等支払額に含めません。

(特定期間における給与等の金額)
消費税法施行規則第十一条の二
法第九条の二第三項に規定する給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものは、所得税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十一号)第百条第一項第一号(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)に規定する給与等の金額とする。
(特定期間における課税売上高とすることができる給与等の金額)
消費税法基本通達1-5-23
特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるかどうかの判定は、特定期間における課税売上高又は法第9条の2第1項《前年又は前事業年度等における課税売上高による納税義務の免除の特例》の個人事業者若しくは法人が特定期間中に支払った所法第231条第1項《給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書》に規定する支払明細書に記載すべき同項の給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものの合計額のいずれかによることができる。
この場合の、給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものとは、所得税法施行規則(昭和40年大蔵省令第11号)第100条第1項第1号に規定する給与等の金額をいうことから、当該給与等の金額とは、所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当し、所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当しないことに留意する。(平23課消1-35により追加)
(注)特定期間中において支払った給与等の金額には、未払額は含まれないことに留意する。
(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)
所得税法第二百三十一条
居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。
2 前項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、同項の規定による給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者の承諾を得て、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者の請求があるときは、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書を当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者に交付しなければならない。
3 前項本文の場合において、同項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、第一項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書を交付したものとみなす。

参考条文等

(前年又は前事業年度等における課税売上高による納税義務の免除の特例)
消費税法第九条の二
個人事業者のその年又は法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が千万円以下である場合において、当該個人事業者又は法人(前条第四項の規定による届出書の提出により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)のうち、当該個人事業者のその年又は法人のその事業年度に係る特定期間における課税売上高が千万円を超えるときは、当該個人事業者のその年又は法人のその事業年度における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、同条第一項本文の規定は、適用しない。
2 前項に規定する特定期間における課税売上高とは、当該特定期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額の合計額を控除した残額をいう。
一 特定期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額
二 特定期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に七十八分の百を乗じて算出した金額
3 第一項の規定を適用する場合においては、前項の規定にかかわらず、第一項の個人事業者又は法人が同項の特定期間中に支払つた所得税法第二百三十一条第一項(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)に規定する支払明細書に記載すべき同項の給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものの合計額をもつて、第一項の特定期間における課税売上高とすることができる
4 前三項に規定する特定期間とは、次の各号に掲げる事業者の区分に応じ当該各号に定める期間をいう。
一 個人事業者 その年の前年一月一日から六月三十日までの期間
二 その事業年度の前事業年度(七月以下であるものその他の政令で定めるもの(次号において「短期事業年度」という。)を除く。)がある法人 当該前事業年度開始の日以後六月の期間
三 その事業年度の前事業年度が短期事業年度である法人 その事業年度の前々事業年度(その事業年度の基準期間に含まれるものその他の政令で定めるものを除く。)開始の日以後六月の期間(当該前々事業年度が六月以下の場合には、当該前々事業年度開始の日からその終了の日までの期間)
5 前項第二号又は第三号に規定する六月の期間の末日がその月の末日でない場合における当該期間の特例その他前各項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

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