コロナ貸付の特別利子補給助成金の計上時期について

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、新型コロナ特別貸付の利子補給金の計上時期に関するお話です。

通常、助成金や補助金は、支給決定日の事業年度に計上する必要があるため、利子補給金(助成金)も原則は同様に取り扱います。

ただし、この利子補給金については、期間対応での処理も認めらます。

これらの経理方法について、簡単に解説します。

【この記事で分かること】
・コロナ貸付の利子補給金とは
・利子補給金の原則的な計上時期
・利子補給金の利息支払時による収益計上
・国税庁FAQの更新

コロナ貸付の利子補給金とは

利子補給金(正式には「特別利子補給助成金」と言います。)は、3年間の借入利息相当分が助成金として一括交付されるものです。

その結果、実質的に3年間は無利息で借り入れを行える制度となっています。

助成金交付申請が承認されると、「特別利子補給助成金交付決定通知書(新型コロナウイルス感染症特別貸付に係る特別利子補給制度)」が届きます。

利子補給金の原則的な収益計上

原則的な計上方法

経費補償のために交付を受ける助成金等は、交付を受けた日の属する事業年度に収益計上することが原則であるため、利子補給金についても一括交付を受けた事業年度に収益計上する必要があります。

(将来の逸失利益等の補填に充てるための補償金等の帰属の時期)
法人税基本通達2-1-40
法人が他の者から営業補償金、経費補償金等の名目で支払を受けた金額については、当該金額の支払がたとえ将来の逸失利益又は経費の発生等当該事業年度後の各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)において生ずることが見込まれる費用又は損失の補填に充てることを目的とするものであるとしても、その支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるから留意する。(昭55年直法2-8「六」により追加、平12年課法2-7「二」、平15年課法2-7「六」、平23年課法2-17「四」により改正)

注意点として、税法上の基本的な考え方では、「交付決定日(決定通知書の日付)」又は「入金日」の早い方で収益計上しなければなりません。

これは、所得税法でも同様の考え方です(所得税法36条)。

したがって、交付決定日と支払日が決算でまたがってしまった場合には、交付決定日の属する事業年度で未収計上を行うことになります。

そして、翌期に支払いを受けたときに、未収を消す処理を行います。

ex.3月決算
<交付決定日:3/25>
3/25 未収金○○円/雑収入○○円
———————————————–
<入金日:翌期4/10>
4/10 現預金○○円/未収金○○円

利息に変更があった場合

利子補給金は、3年間分の借入利息相当額が一括交付されるものですが、何らかの原因で実際の利息合計額と差額が生じる場合があります。

その場合、3年が経過した時点で精算が行われ、実際の利息合計額よりも利子補給金が少なければ追加交付を受け、多ければ返還します。

その際の損益計上時期は、次の通りです。

利子補給金の追加交付がある場合

利子補給金の追加交付を受け場合には、精算時に収入計上を行います。

<精算時>
現預金〇〇円/雑収入〇〇円

利子補給金を返還する場合

利子補給金の返還を行った場合には、精算時に費用計上を行います。
<精算時>
雑損失〇〇円/現預金〇〇円

利子補給金の利息支払時による収益計上

利息支払時による収益計上

利子補給金は、3年間分の利息相当額が一括交付され、3年後その都度実際に支払われた利息の合計額(利子補給金の額)が確定し、過不足があれば精算手続が行われます。

つまり、一括交付の時点で交付額は確定しておらず、支払利息の発生の都度交付額が確定していくものと考えることができます。

したがって、支払利息が発生する都度、同額を収益計上することとなります。

法人税も所得税も、考え方は同様です。

<一括交付時>
現預金90万円/前受金90万円

<1年目>
支払利息30万円/現預金30万円
前受金30万円/雑収入30万円

<2年目>
支払利息30万円/現預金30万円
前受金30万円/雑収入30万円

<3年目>
支払利息30万円/現預金30万円
前受金30万円/雑収入30万円

(法令に基づき交付を受ける給付金等の帰属の時期)
法人税基本通達2-1-42
法人の支出する休業手当、賃金、職業訓練費等の経費をするために雇用保険法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積り、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。(昭55年直法2-8「六」、昭59年直法2-3「一」、昭63年直法2-14「一」、平12年課法2-7「二」、平23年課法2-17「四」、平30年課法2-28「二」により改正)
(注)法人が定年の延長、高齢者及び身体障害者の雇用等の雇用の改善を図ったこと等によりこれらの法令の規定等に基づき交付を受ける奨励金等の額については、その支給決定があった日の属する事業年度の益金の額に算入する。

(法令に基づき交付を受ける給付金等の処理)
所得税基本通達36・37共-48
雇用保険法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定等(以下36・37共-49において「雇用保険法等の規定等」という。)に基づき休業手当、賃金、職業訓練費等の経費をするために交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する年分においてその金額が具体的に確定しない場合であっても、その金額を見積もり、当該年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。この場合において、その給付の対象となった休業手当等を製造原価に算入しているときは、当該給付金額のうち製造原価に算入した休業手当等に対応する金額をその製造原価から控除することができる。(昭51直所3-1、直法6-1、直資3-1追加、昭55直所3-19、直法6-8、昭60直所3-1、直法6-1、直資3-1、平元直所3-14、直法6-9、直資3-8、平11課所4-1、平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正、平30課個2‐29、課法12‐104、課審5‐8改正)

利息に変更があった場合

精算時に追加交付や返還がある場合には、下記のような仕訳となります。

利子補給金の追加交付がある場合

<一括交付時>
現預金90万円/前受金90万円

<1年目>
支払利息30万円/現預金30万円
前受金30万円/雑収入30万円

<2年目>
支払利息30万円/現預金30万円
前受金30万円/雑収入30万円

<3年目>
支払利息40万円/現預金40万円
前受金30万円/雑収入30万円
未収金10万円/雑収入10万円

<精算時(追加交付)>
現預金10万円/未収金10万円

利子補給金を返還する場合

<一括交付時>
現預金90万円/前受金90万円

<1年目>
支払利息30万円/現預金30万円
前受金30万円/雑収入30万円

<2年目>
支払利息30万円/現預金30万円
前受金30万円/雑収入30万円

<3年目>
支払利息20万円/現預金20万円
前受金20万円/雑収入20万円

<精算時(返還)>
前受金10万円/現預金10万円

国税庁FAQの更新

国税庁の「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」について、「助成金等の収入計上時期の取扱い」が令和3年1月13日に追加されました。

考え方を抜粋すると、下記のような内容となります。

問9-2. 助成金等の収入計上時期の取扱い〔令和3年1月13日追加〕
私は個人事業を営んでおり、新型コロナウイルス感染症等の影響に伴い、この事業に関して国や地方公共団体から助成金等の支給を受けました。この助成金等はいつの年分の収入金額として申告する必要がありますか。

【基本的な考え方】
所得税の計算上、ある収入の収入計上時期については、その収入すべき権利が確定した日の属する年分となります(所得税法第36条)。
ご質問の助成金等については、国や地方公共団体により助成金等の支給が決定された日に、収入すべき権利が確定すると考えられますので、原則として、その助成金等の支給決定がされた日の属する年分の収入金額となります。

【特定の支出を補填するもの】
ただし、助成金等が、支給要綱などで定められた特定の支出(※1)を補填するものについて、その支給を受けるために必要な手続をしているときには、その支出と同時に、実質的に、助成金を支給する権利が確定していると考えられることから、その収入計上時期は、結果として、所得が生じることがないように、その支出が発生した日の属する年分として取り扱うこととしています(所得税基本通達36・37共-48)。
※1 例えば、医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業の補助金におけるマスクや消毒液の購入費用や清掃委託費用などが該当します。
※2 助成金等の交付目的に適合した固定資産の取得等をした場合において、一定の要件を満たすときには、その固定資産の取得等に充てた部分の金額に相当する金額を総収入金額に算入しない(総収入金額不算入)こととされています(所得税法42条・43条)。

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