ふるさと納税の注意点

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今年も残すところ3週間ほど。

この時期になると皆さん一斉にやり出すのが、大掃除とふるさと納税です。

2008年から始まったふるさと納税も、10年以上経ってかなり認知されてきている印象です。

2015年からの確定申告が不要となったワンストップ特例制度も大きく貢献していると思います。

今回は、ふるさと納税について、簡単におさらいしていきたいと思います。

【この記事でわかること】
・ふるさと納税の仕組み
・ワンストップ特例制度と確定申告の注意点
・住宅ローン控除との併用の注意点

ふるさと納税の仕組み

ふるさと納税とは、大きい括りとしては「寄付金」のことです。
ふるさと納税を行うことによって、税金を安くすることができます。
「税金を安くすることができます」と言いましたが、実際は違います。
正確には、税金を前払いして返戻品をもらう、という仕組みとなっています。
ふるさと納税は、ワンストップ特例制度で完結させる場合と確定申告する場合とで計算方法が異なりますが、確定申告をしない一般の会社員の方はワンストップ特例制度で完結させるのが通常です。

ワンストップ特例制度で完結させる場合

ワンストップ特例制度とは

ワンストップ特例制度とは、寄付した自治体に「ワンストップ特例申請書」を提出することにより、確定申告を行うことなく完結することができる制度のことをいいます。

細かい説明は省略しますが、通常寄付を行った場合(例えば、ユニセフに募金した場合など)、寄付金の控除は確定申告でなければ行うことができません。

ただし、ふるさと納税による寄付は、一定の要件のもと「ワンストップ特例申請書」を提出することで、確定申告を省略することができます。

したがって、年末調整で所得税を精算する方(会社員、パートなど)は、「ワンストップ特例申請書」の提出を忘れないようにしましょう。

ワンストップ特例制度による計算

ザックリいうと、寄付額から2,000円を差し引いた金額を来年6月からの住民税から控除することができます。
例えば、2020年中に30,000円のふるさと納税を行った場合、2021年6月から(※)の住民税より、
30,000円△2,000円=28,000円
を控除することができます。
つまり、2020年中に住民税を30,000円前払い(寄付)することによって、返戻品をもらうことができ、かつ、前払額(寄付額)30,000円から2,000円を差し引いた分だけ翌年の住民税が下がる、という仕組みとなっています。
前払額(寄付額)から2,000円を差し引くのは、税法で決まっているルールなので、あまり深く考えなくて大丈夫です。
寄付額には上限額があって、所得に応じて上限額が変わってきますので、ふるさと納税のサイトでシミュレーションしてみてください。
(※)「2021年6月から」というのは、住民税は6月に税額が切り替わります。
2020年の所得を基に2021年6月からの住民税が確定し、また翌年の2021年の所得を基に2022年6月からの住民税が確定します。

確定申告をする場合

確定申告を行う場合は、ワンストップ特例で完結させる場合と計算が少し異なります。

医療費控除や住宅ローン控除1年目の方は、確定申告をする必要があります。

その場合は、確定申告でふるさと納税の手続きを行う必要があります。

例えば2020年分(令和2年分)の確定申告を行う場合、まず寄付金控除(所得控除)により所得税の計算を行い、残りの寄付額を翌年の住民税から控除するという仕組みとなっています。

ちょっとややこしいですね。

例えば、2020年中に30,000円のふるさと納税を行った場合、

2020年の所得税→(30,000円△2,000円)×所得税率10%=2,800円
2021年の住民税→(30,000円△2,000円)△所得税2,800円=25,200円

ということになり、結果として合計で28,000円を控除することができます。

上記の算式はイメージですので、実際の計算方法とは異なる点にご注意ください。

ワンストップ特例で住民税から控除するのか、確定申告で所得税と住民税から控除するのか、という違いはありますが、いずれにしても28,000円を控除することができるという点では共通といえます。

ワンストップ特例制度と確定申告の注意点

寄付先は5団体以内

ワンストップ特例制度によりふるさと納税を行う場合には、寄付先を5団体以内にする必要があります。

5団体を超える場合(6団体以上)は、ワンストップ特例制度が使えず、確定申告を行わなければ控除を受けることができません。

例えば、
A市→5,000円
A市→5,000円
B市→5,000円
C市→5,000円
D市→5,000円
E市→5,000円
であれば、5団体なのでセーフです。

しかし、
A市→5,000円
B市→5,000円
C市→5,000円
D市→5,000円
E市→5,000円
F市→5,000円
だと、6団体になってしまいますので、アウトです。

確定申告をする場合は改めて確定申告に計上

医療費控除を受ける場合や住宅ローン控除1年目の場合は、確定申告を行う必要があります。

この場合、ワンストップ特例申請書を提出していたとしても、改めて確定申告でふるさと納税の寄付を計算する必要があります。

確定申告は、その方の所得税と住民税のを最終確定させる手続きです。

したがって、いくらワンストップ特例申請書を提出していたとしても、確定申告で考慮しなければ、ふるさと納税による寄付は無かったものとして所得税と住民税が確定してしまいます。

確定申告を行う予定がなかったためワンストップ特例申請書を提出したけど、確定申告をする必要が出てきた!
という人は、要注意です。

住宅ローン控除との併用の注意点

住宅ローン控除とふるさと納税は、併用することができます。

ただし、確定申告を行う場合に、1つだけ注意点があります。

それは、
住宅ローン控除について、所得税から控除しきれず、住民税からも控除する場合、
住民税からの控除を上限MAXで使っているときは、確定申告だと損をする、ということです。

例えば、
2020年の所得税200,000円
2021年の住民税200,000円
2020年のローン控除350,000円
2020年のふるさと納税30,000円
だった場合で計算してみます。
数字や税率などは架空です。

年末調整の場合

年末調整の場合、まずはローン控除を所得税から控除します。
所得税200,000円△350,000円=△150,000円→0円(所得税200,000円の還付)

続いて、引ききれなかったローン控除(150,000円)を住民税から控除します。
仮に、住民税からのローン控除限度額を130,000円とします。
住民税200,000円△130,000円=70,000円(住民税130,000円の控除)

そして、ふるさと納税については28,000円(30,000円△2,000円)を住民税から控除します。
住民税残70,000円△28,000円=42,000円(住民税28,000円の控除)

年末調整の場合、
所得税200,000円+住民税130,000円+住民税28,000円=358,000円
を控除できる計算になります。

結果として、
所得税200,000円の還付(全額還付で納税はゼロ)
住民税158,000円の控除(42,000円の納税)
となります。

計算順序としては、
①ローン控除(所得税)
②ローン控除(住民税)
③ふるさと納税(住民税)
となります。

確定申告の場合

確定申告の場合、「ふるさと納税の仕組み」でも示したとおり、
まずはふるさと納税の寄付額を所得税から控除します。
(30,000円△2,000円)×所得税率10%=2,800円
所得税200,000円△2,800円=197,200円(所得税2,800円の還付)

次に、ローン控除を所得税の残額から控除します。
所得税残197,200円△350,000円=△152,800円→0円(所得税197,200円の還付)

続いて、引ききれなかったローン控除を住民税から控除します。
仮に、住民税からのローン控除限度額を130,000円とします。
住民税200,000円△130,000円=70,000円(住民税130,000円の控除)

最後に、ふるさと納税の寄付額を住民税から控除します。
所得税の控除に使った2,800円を差し引いた残額を控除します。
住民税残70,000△(30,000円△2,000円△2,800円)=44,800円(住民税25,200円の控除)

確定申告の場合、
所得税2,800+所得税197,200円+住民税130,000円+住民税25,200円=355,200円
を控除できる計算になります。

結果として、
所得税200,000円の還付(全額還付で納税はゼロ)
住民税155,200円の控除(44,800円の納税)
となります。

計算順序としては、
①ふるさと納税(所得税)
②ローン控除(所得税)
③ローン控除(住民税)
④ふるさと納税(住民税)
となります。

年末調整と比較して、
ローン控除額が、住民税から控除限度額を超えている場合には、
ふるさと納税の所得税からの控除分だけ計算上は不利になります。
年末調整の住民税納税額42,000円
確定申告の住民税納税額44,800円
差額2,800円

所得税は還付、住民税は控除

所得税「還付」

所得税の場合は「還付」、住民税の場合は「控除」というように、言葉を使い分けていますが、それには理由があります。

まず所得税について、会社員などの場合は、毎月の給与で所得税が天引きされています。

すでに天引きされた所得税が返ってくる、つまりは還付を受けることから、所得税は「還付」という言葉を使っています。

住民税「控除」

住民税については、上記でもご説明したとおり、その年で確定した住民税は、翌年の6月から12分割で給与から天引きされます。

したがって、まだ税金を納めているわけではないので、6月から天引きされる税額から控除されることから、住民税は「控除」という言葉を使っています。

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