コロナ等による業績悪化に伴う役員報酬減額後の退職金について

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、新型コロナウイルス感染症等の影響で業績悪化した場合に役員報酬を減額した後、退職に伴い役員退職金を支給する場合の取扱いについて、簡単に解説します。

コロナによる業績悪化に伴う役員報酬の減額が業績悪化改定事由による減額改定に該当するかどうかは、こちらの記事をご参照ください。

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役員退職金の算定方法

役員退職金の算定方法としては、
・平均功績倍率法
・1年当たり平均額法
・功績倍率法
の3つがありますが、実務上は「功績倍率法」が多く採用されているように思います。

功績倍率法の算式は、
最終報酬月額×勤続年数×功績倍率=退職金額
です。

法令上、功績倍率法についての規定は存在しませんが、平成29年度の法人税基本通達改正により、通達上に功績倍率法の定義が明記されました。

(業績連動給与に該当しない退職給与)
法人税基本通達9-2-27の3
いわゆる功績倍率法に基づいて支給する退職給与は、法第34条第5項《役員給与の損金不算入》に規定する業績連動給与に該当しないのであるから、同条第1項の規定の適用はないことに留意する。(平29年課法2-17「十二」により追加、令3年課法2-21「九」により改正)
(注) 本文の功績倍率法とは、役員の退職の直前に支給した給与の額を基礎として、役員の法人の業務に従事した期間及び役員の職責に応じた倍率を乗ずる方法により支給する金額が算定される方法をいう。

役員報酬減額後に役員退職金を支払う場合

基本的な考え方

コロナ等の影響による業績悪化改定事由により役員報酬を減額せざるを得ない場合や、病気等による臨時改定事由により役員報酬を減額せざるを得ない場合などは、やむを得ない事情による減額改定が認められることとなります。

その後、減額した役員報酬のまま退職することとなった場合、最終報酬月額の金額設定が問題となります。

上記の通達に明記されている方法通りであるとするならば、「退職の直前に支給した給与の額」に基づき計算しますので、減額後の報酬月額に勤続年数や功績倍率を乗じて算定しますが、そうすると会社と退職役員とで認識のズレが生じる可能性があります。

とはいえ、最高報酬月額に勤続年数と功績倍率を乗じて計算する方法は、たとえ規程があったとしても算定根拠としては極めて薄く、合理性がない方法であると考えられます。

最終報酬月額があまりにも不合理な場合

そんな中、実務的な方法として、過去の月額報酬や支給期間、職位などにより金額を計算し、それらを集計することで支給額を算定する「積み上げ法」という方法があります。

これは、税理士・公認会計士の濱田康宏氏の『役員報酬(第2版)』(中央経済社)の182~183頁に計算例が記載してある方法です。

書籍とは数字を変えて、計算してみます。

<計算例>
平成21年~平成25年:@100万円(代表取締役社長)
平成26年~平成30年:@200万円(代表取締役社長)
令和1年~令和4年:@50万円(取締役会長)
功績倍率:3.0① 1,000,000円×5年×3.0=15,000,000円
② 2,000,000円×5年×3.0=30,000,000円
③ 500,000円×4年×3.0=6,000,000円
④ ①+②+③=51,000,000円

仮に、最終報酬月額に基づき計算した場合には、
500,000円×14年×3.0=21,000,000円
となりますので、この例の場合は2倍以上の乖離が生じることになります。

また同様の方法として、国税速報令和4年3月14日(第6698号)において、「任期中分掌変更により月額報酬が激減した役員の過大退職金の判定」(税理士:鈴木博氏)の記事においても、「それぞれの分掌ごとに適正退職金の金額を算定する方法は合理的であると考えられますから、過大退職金とされることはありません。」と回答しています。

とはいえ、法人税基本通達上は「退職の直前に支給した給与の額」に基づき計算することが記載されていますので、慎重な判断が求められます。

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