法人契約の養老保険(福利厚生プラン)について

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、法人契約の養老保険の加入要件及び経理処理についてのお話です。

保険の損金算入が厳しくなってきてから、養老保険の需要が多くなってきている気がします。

その理由は、やはり50%損金算入ができる点と、満期時の返戻率が高いことにあると思います。

ただし、加入要件に意外と落とし穴も多く、知らずに契約してしまうと大変です。

福利厚生プランの養老保険について、簡単に解説していきます。

法人が契約者である場合の3つの処理

法人税基本通達において、法人が契約者で役員又は使用人を被保険者とする養老保険の保険料を支払う場合について、3つの処理方法が明示されています。

①死亡保険金及び生存保険金の受取人が法人である場合→全額資産計上
②死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である場合→役員又は使用人に対する給与
③死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が法人である場合→50%損金、50%資産計上

養老保険を50%損金とするには、生存保険金の受取人が法人(死亡保険金の受取人は被保険者の遺族)である契約になっていることが必要です。

(養老保険に係る保険料)
法人税基本通達9-3-4
法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする養老保険(被保険者の死亡又は生存を保険事故とする生命保険をいい、特約が付されているものを含むが、9-3-6に定める定期付養老保険等を含まない。以下9-3-7の2までにおいて同じ。)に加入してその保険料(令第135条《確定給付企業年金等の掛金等の損金算入》の規定の適用があるものを除く。以下9-3-4において同じ。)を支払った場合には、その支払った保険料の額(特約に係る保険料の額を除く。)については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。(昭55年直法2-15「十三」により追加、昭59年直法2-3「五」、平15年課法2-7「二十四」、令元年課法2-13により改正)
(1) 死亡保険金(被保険者が死亡した場合に支払われる保険金をいう。以下9-3-4において同じ。)及び生存保険金(被保険者が保険期間の満了の日その他一定の時期に生存している場合に支払われる保険金をいう。以下9-3-4において同じ。)の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、保険事故の発生又は保険契約の解除若しくは失効により当該保険契約が終了する時までは資産に計上するものとする。
(2) 死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である場合 その支払った保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
(3) 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は(1)により資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

加入に当たっての注意点

契約継続要件

50%損金とする要件として、契約の継続性が重視されます。

つまり、短期間の解約を前提として締結されたものについては、否認される可能性が高いです。

普遍的加入要件

福利厚生プランは、基本的に全員加入が前提となりますが、合理的な基準によって加入格差が生じている場合については、給与課税する必要はないとされています。

これは、法人税基本通達には定められていませんが、所得税基本通達で明確化されており、「職種、年齢、勤続年数等に応ずる合理的な基準により普遍的に設けられた格差であると認められる場合」には、普遍的加入要件に抵触しないこととなります。

同族関係者

役員又は使用人の大部分が同族関係者である場合には、その同族関係者の保険料については福利厚生費ではなく、給与課税されることになります。

とくに役員給与とされる場合には、損金算入されないので注意が必要です。

そして、ここで問題となるのが「大部分が同族関係者である場合」の「大部分」の考え方です。

この「大部分」の判断基準については明確な規定はありませんが、同族関係者が役員または使用人の『約80%以上を占める場合(保険税務Q&A「税務研究会出版局」)』や『2/3を超えるような場合(オーナー会社のための役員給与・役員退職金と保険税務「税務研究会出版局」)』には、「大部分」が同族関係者と判断される可能性が高いと考えられます。

(使用者契約の養老保険に係る経済的利益)
所得税基本通達36-31
使用者が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする養老保険(被保険者の死亡又は生存を保険事故とする生命保険をいい、傷害特約等の特約が付されているものを含むが、36-31の3に定める定期付養老保険を含まない。以下36-31の5までにおいて同じ。)に加入してその保険料(令第64条《確定給付企業年金規約等に基づく掛金等の取扱い》及び第65条《不適格退職共済契約等に基づく掛金の取扱い》の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)を支払ったことにより当該役員又は使用人が受ける経済的利益(傷害特約等の特約に係る保険料の額に相当する金額を除く。)については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。(昭63直法6-7、直所3-8追加、平14課法8-5、課個2-7、課審3-142改正)
(1) 死亡保険金(被保険者が死亡した場合に支払われる保険金をいう。以下36-31の2までにおいて同じ。)及び生存保険金(被保険者が保険期間の満了の日その他一定の時期に生存している場合に支払われる保険金をいう。以下この項において同じ。)の受取人が当該使用者である場合  当該役員又は使用人が受ける経済的利益はないものとする。
(2) 死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である場合  その支払った保険料の額に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与等とする。
(3) 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該使用者である場合  当該役員又は使用人が受ける経済的利益はないものとする。ただし、役員又は特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与等とする。
(注)
1 傷害特約等の特約に係る保険料を使用者が支払ったことにより役員又は使用人が受ける経済的利益については、36-31の4参照
2 上記(3)のただし書については、次によることに留意する。
(1) 保険加入の対象とする役員又は使用人について、加入資格の有無、保険金額等に格差が設けられている場合であっても、それが職種、年齢、勤続年数等に応ずる合理的な基準により、普遍的に設けられた格差であると認められるときは、ただし書を適用しない。
(2) 役員又は使用人の全部又は大部分が同族関係者である法人については、たとえその役員又は使用人の全部を対象として保険に加入する場合であっても、その同族関係者である役員又は使用人については、ただし書を適用する。

参考書籍

実務家とFP必携!保険税務Q&A
税務研究会出版局
保険税務事例研究グループ編

オーナー会社のための役員給与・役員退職金と保険税務
税務研究会出版局
山下雄次著

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