車を買ってもらったり名義変更したりすると贈与税がかかる?

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、車の贈与についてのお話です。

例えば子供に、
・車を買ってあげた
・車の購入資金を渡した
・不要になった車をタダであげた(名義変更した)
このような場合には、税金がかかるのでしょうか?

考えられる税金としては、「贈与税」があります。

このあたりの論点について、簡単に解説していきます。

【この記事で分かること】
♦贈与税の仕組み(暦年贈与)
♦贈与税の計算と税率(暦年贈与)
♦子供に車を買ってあげた場合
♦子供に車の購入資金を渡した場合
♦子供に不要になった車をタダであげた(名義変更した)場合

贈与税の仕組み(暦年贈与)

贈与税は、年間(1/1~12/31)で贈与により受け取った額が110万円を超えた場合に、贈与を受けた人に課税される税金です。

逆に、110万円以下であれば贈与税がかかりませんので、この「暦年贈与」の仕組みは相続対策でよく使われる手法です。

(贈与税の基礎控除)
相続税法第二十一条の五
贈与税については、課税価格から六十万円を控除する。
(贈与税の基礎控除の特例)
租税特別措置法第七十条の二の四
平成十三年一月一日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については、相続税法第二十一条の五の規定にかかわらず、課税価格から百十万円を控除する。この場合において、同法第二十一条の十一の規定の適用については、同条中「第二十一条の七まで」とあるのは、「第二十一条の七まで及び租税特別措置法第七十条の二の四(贈与税の基礎控除の特例)」とする。
2 前項の規定により控除された額は、相続税法その他贈与税に関する法令の規定の適用については、相続税法第二十一条の五の規定により控除されたものとみなす。
詳しくは、こちらの過去記事をご参照ください。
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贈与税の計算と税率(暦年贈与)

年間(1/1~12/31)で贈与により受け取った額が110万円を超えた場合には、その額から110万円を控除した残額をもとに贈与税を計算します。

贈与税率は、「一般税率」と「特例税率」があり、「特例税率」の方が優遇されています。

「特例税率」は、
直系尊属(父母、祖父母など)からの贈与であること
その年の1月1日現在において20歳以上の直系卑属(子、孫など)への贈与であること
の要件を満たすと、適用することができます。

一般税率

基礎控除後の課税価格 200万円
以下
300万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
3,000万円
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

特例税率

基礎控除後の課税価格 200万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
4,500万円
以下
4,500万円
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

例えば、特例税率で350万円の贈与があった場合、
5,000,000△1,100,000=3,900,000(控除後400万円以下に該当)
3,900,000×15%△100,000=485,000
と計算することができます。

子供に車を買ってあげた場合

原則

110万円を超える車を買ってあげた場合には、原則的に贈与税がかかります。

贈与税がかからない場合

贈与税は、扶養義務者からの生活や教育のための贈与については、非課税の取扱いになります。

したがって、日常生活や通学のために車が必要な環境であるなどの場合には、親から子に110万円を超える車の贈与があったとしても、非課税になると考えられます。

ただし、車が必需品の環境であったとしても、高級車の贈与を受けた場合には、贈与税が課税される可能性があるので注意が必要です。

(贈与税の非課税財産)
相続税法第二十一条の三
次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの

(定義)
相続税法第一条の二
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 扶養義務者 配偶者及び民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百七十七条(扶養義務者)に規定する親族をいう。
(扶養義務者)
民法第八百七十七条
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

(「生活費」の意義)
相続税法基本通達21の3-3
法第21条の3第1項第2号に規定する「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除く。)をいい、治療費、養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害賠償金により補てんされる部分の金額を除く。)を含むものとして取り扱うものとする。(昭50直資2-257改正、平15課資2-1改正)

(「教育費」の意義」)
相続税法基本通達21の3-4
法第21条の3第1項第2号に規定する「教育費」とは、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限らないのであるから留意する。(平15課資2-1改正)

(生活費及び教育費の取扱い)
相続税法基本通達21の3-5
法第21条の3第1項の規定により生活費又は教育費に充てるためのものとして贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいうものとする。したがって、生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合又は株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合における当該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの以外のものとして取り扱うものとする。(平15課資2-1改正)

(生活費等で通常必要と認められるもの)
相続税法基本通達21の3-6
法第21条の3第1項第2号に規定する「通常必要と認められるもの」は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいうものとする。(平15課資2-1改正)

親名義で買う

車を親から借りている状態であれば、贈与税は発生しません。

これは、民法上の「使用貸借」契約に該当し、タダで貸し借りするという行為になります。

(使用貸借)
民法第五百九十三条
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

子供に車の購入資金を渡した場合

原則

110万円を超える購入資金をあげた場合には、原則的に贈与税がかかります。

贈与税がかからない場合

贈与税は、扶養義務者からの生活や教育のための贈与については、非課税の取扱いになります。

したがって、日常生活や通学のために車が必要な環境であるなどの場合は、親から子に110万円を超える購入資金の贈与があったとしても、非課税になると考えられます。

ただし、車その物の贈与と異なり、その購入資金が本当に車に当たられるか判別不能な場合もあると思います。

そういった意味では、贈与として課税される可能性は大きいので、単純に110万円を超えるような購入資金を渡すのは、あまりオススメできません。

子供に不要になった車をタダであげた(名義変更した)場合

原則

名義変更であっても、110万円を超える価値がある車の名義変更の場合には、原則的に贈与税がかかります。

車の価値は、中古車販売店のサイトで似たような車を探すか、中古車販売店で査定してもらうとより明確な金額が把握できます。

例えば楽天など、次のようなサイトであれば買取査定を行っています。

(財産の名義変更があった場合)
相続税法基本通達9-9
不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする。(昭39直審(資)22改正)

贈与税がかからない場合

贈与税は、扶養義務者からの生活や教育のための贈与については、非課税の取扱いになります。

したがって、日常生活や通学のために車が必要な環境であるなどの場合は、親から子に110万円を超える車の名義変更があったとしても、非課税になると考えられます。

(生活費等に充てるために財産の名義変更があった場合)
相続税法基本通達21の3-7
財産の果実だけを生活費又は教育費に充てるために財産の名義変更があったような場合には、その名義変更の時にその利益を受ける者が当該財産を贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(平15課資2-1改正)

あとがき

今回は、親子間の車の贈与について解説しました。

基本的には、親子間であっても110万円超の贈与については贈与税がかかりますが、この論点を普段生活していて気にかけているかというと、そのような人は多くないと思います。

子供のために、学費や食費を出すのは親として当たり前という感覚が一般的でしょうし、その感覚で車を買ってあげたりお金をあげたりしても、親子間や夫婦間であれば税金のことなんて一般的には考えないと思います。

基本的には、親子間であれ夫婦間であれ、タダでお金やモノをあげれば贈与税がかかります。

税務署が全てのやり取りを把握しているとは考えられませんが、相続が発生した時など、ひょんなことから発覚するケースは大いにあり得ます。

したがって、
一般的に高級車には該当しない車種を買ってあげる
どんな方法にしろ、110万円以下の価値の車で検討する
名義は親のままで、タダ(使用貸借)で子供に貸す
このあたりの方法が、指摘を受ける可能性が少ない無難な方法であると考えられます。

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