すまい給付金と次世代住宅ポイントは「一時所得」になる!?~確定申告の方法とローン控除への影響~

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、以前投稿した「すまい給付金」と「次世代住宅ポイント」について、
・所得税の確定申告が必要なのかどうか
・住宅ローン控除に及ぼす影響
をご説明したいと思います。

結論

●確定申告の所得計算について
「その年に受け取ったすまい給付金の額 ※」と「その年に交換した商品の次世代住宅ポイント数」、そしてその他に一時所得に該当する金額の合計額が50万円を超える場合には、一時所得として確定申告をしなければなりません。
※ 一時所得に含めない方法あり。

●住宅ローン控除への影響
一時所得に含める含めないにかからわず、その住宅の取得価額から「すまい給付金の額(又は見込額)」そして「付与された次世代住宅ポイント数(又は見込数)」をマイナスします。

これは、確定申告時に、『付表1補助金等の交付を受ける場合又は住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合の取得対価の額等の計算明細書(以下、「付表1」といいます。)』で、
取得価額「①」から
これらの補助金等の合計額「②」を控除し、
控除後の金額「③」を
『住宅借入金等特別控除額の計算明細書(以下、「ローン控除明細書」といいます。)』の「ハ」に転記します。

一時所得は所得計算のお話で、住宅ローン控除は税額控除のお話です。
ザックリ説明すると、一時所得とか給与所得で書く各所得計算を行い、それらを合わせて所得税を計算した後に、その計算後所得税から住宅ローン控除額をマイナスする仕組みとなっています。
計算順序や過程がことなりますので、ご注意ください。

それでは、
・確定申告の所得計算の取扱い
・住宅ローン控除での取扱い
それぞれをもう少し詳しく説明していきます。

確定申告の所得計算の取扱い

一時所得とは

上記でも説明したとおり、すまい給付金と次世代住宅ポイントは一時所得になりうる収入です。

一時所得とは何か?

おそらく、このページに辿り着いた方はさんざん目にした内容だと思いますが、念のため一時所得について簡単に説明していきます。

一時所得とは、所得税を計算するときに分類される所得の種類の一つで、全部で下記の10種類が存在します。
・利子所得
・配当所得
・不動産所得
・事業所得
・給与所得
・退職所得
・山林所得
・譲渡所得
・一時所得
・雑所得

それぞれ所得の性質が異なるため、税負担の公平性の観点から、その性質に適した計算方法により各所得を計算します。

例えば、事業所得であれば、事業上の売上から仕入・経費を差し引いて所得を計算します。

また、皆さんに馴染みのある給料は給与所得に分類されますが、事業のように経費というものが存在しないので、その代わりに一定の方法により計算した給与所得控除額というものを年間給与総額(非課税交通費は除く)から差し引いて所得を計算する仕組みとなっています。

さて、一時所得とは何かというと、どの所得にも当てはまらないもので、営利目的の継続的取引以外の所得をいいます。
ザックリ分かりやすく言うと、商売のような継続行為ではなく突発的に得た収入です。

一時所得の計算方法は、税法用語をそのまま用いると、
総収入金額△収入を得るために支出した金額△特別控除額(最高50万円)=一時所得
となっています。

「総収入金額」とは、字の如く、一時所得に分類される収入の合計額です。
よく出てくる項目としては、
・生命保険の一時金
・競馬などの払戻金
などをよく目にします。

「収入を得るために支出した金額」とは、その収入に対応する支出額で、
・その生命保険の一時金を得るために払い込んだ保険料
・その当たり馬券の購入費用
などが該当します。

「特別控除額(最高50万円)」とは、「総収入金額」から「収入を得るために支出した金額」を差し引いても金額が残っている場合に、最高で50万円(ゼロになるまで)控除できる額のことをいいます。

最終的には、これらの所得を合算して所得税を算出します。(総合課税や分離課税といった論点がありますが、ここでは割愛します。)

(一時所得)
所得税法第三十四条 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。
3 前項に規定する一時所得の特別控除額は、五十万円(同項に規定する残額が五十万円に満たない場合には、当該残額)とする。

すまい給付金の取扱い

●原則

すまい給付金は、受け取った日の属する年分の一時所得として所得税の課税対象となります。

したがって、基本的には上記の算式に当てはめて一時所得を計算しますので、受け取ったすまい給付金を「総収入金額」として計算します。

この場合の「収入を得るために支出した金額」は、例えばすまい給付金事務局に書類を発送した際に使った切手代などがこれに当てはまります。

●特例

すまい給付金は、所得税法に規定する「国庫補助金等」に該当します。

「国庫補助金等」に該当する場合、所得税法の規定により、「総収入金額」に入れないで計算することができます。

(国庫補助金等の総収入金額不算入)
所得税法第四十二条 居住者が、各年において固定資産(山林を含む。以下この条及び次条において同じ。)の取得又は改良に充てるための国又は地方公共団体の補助金又は給付金その他政令で定めるこれらに準ずるもの(以下この条及び次条において「国庫補助金等」という。)の交付を受け、その年においてその国庫補助金等をもつてその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をした場合には、その国庫補助金等の返還を要しないことがその年十二月三十一日(その者が当該取得又は改良をした後その年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時)までに確定した場合に限り、その国庫補助金等のうちその固定資産の取得又は改良に充てた部分の金額に相当する金額は、その者の各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しない。

例えば、いくつか一時所得に該当する収入があって、住まい給付金を入れてしまうと「総収入金額△収入を得るために支出した金額」が特別控除額50万円を超えてしまう場合、すまい給付金を「総収入金額」に入れないことで、一時所得をゼロにするということが可能になるわけです。

この特例を適用する場合には、「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を確定申告書に添付する必要があります。

次世代住宅ポイントの取扱い

次世代住宅ポイントは、ポイントを取得した時ではなく、商品と交換した日の属する年分の一時所得として所得税の課税対象となります。

例えば、今年(令和元年)に10万ポイント分の商品と交換したけど、25万ポイントは来年(令和2年)に使用する場合、10万ポイント分だけを今年分(令和元年分)確定申告で行い、25万ポイント分は来年分(令和2年分)の確定申告で行います。

考え方の根拠としては、商品と交換した時に、その交換商品の価額が経済的利益となって課税されるというものです。

(収入金額)
所得税法第三十六条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

「収入を得るために支出した金額」は、すまい給付金と同様に、例えば次世代住宅ポイント事務局に書類を発送した際に使った切手代などがこれに当てはまります。

まとめ

すまい給付金も次世代住宅ポイントも、一時所得に該当します。

ただし、
・すまい給付金は受け取った日の属する年分
・次世代住宅ポイントは商品と交換した日の属する年分
の一時所得として課税対象となりますので、計上する年にはお気を付けください。

また、すまい給付金は、「国庫補助金等」として総収入金額に含めない方法もありますので、その際は添付書類を忘れないようにしましょう。

その年分のすまい給付金と次世代住宅ポイントを合わせても50万円(特別控除額)以下であり、他に一時所得の総収入金額に算入すべきものがない場合には、一時所得から課税の対象は発生しません。

住宅ローン控除への影響

住宅ローン控除への影響は、すまい給付金も次世代住宅ポイントも同様の取扱いになりますので、併せて説明します。

住宅取得価額から控除する

住宅ローン控除を計算する場合、年末ローン残高と住宅取得価額を比較し、小さい方の1%を控除する仕組みとなっています。(租税特別措置法第41条、第26条)

すまい給付金や次世代住宅ポイントを取得する場合、住宅取得価額からその額を差し引かなければなりません。

つまり、通常あまりないケースですが、ローンの金額よりも住宅取得価額が小さい場合、差し引いた額の1%がローン控除額となるため、場合によってはローン控除額に影響を与える可能性があります。とはいえ、1%で100円未満の端数は切り捨ててローン控除額を計算しますので、そこまで大きな影響はないと考えられます。

もちろん、国庫補助金等として総収入金額不算入としたすまい給付金だとしても、住宅取得価額から差し引く必要があります。

一時所得とは計上時期が異なる

住宅取得価額から差し引く金額(タイミング)は、一時所得の計上基準とは少し異なります。

一時所得では、
・すまい給付金→受け取った日の属する年分の一時所得として所得税の課税対象
・次世代住宅ポイント→商品と交換した日の属する年分の一時所得として所得税の課税対象
というルールでしたが、住宅取得価額から差し引く金額(タイミング)は、住宅ローン控除を受ける初年度の確定申告時に、貰えると予想されるすべての金額を住宅取得価額から差し引いて計算しなければなりません。

これは、今年でも将来的でも貰えるものはすべて差っ引いた額が本来の住宅取得価額であって、その額を基に住宅ローン控除の計算に反映させてね、という考えに基づくものだと思われます。

例えば、すまい給付金であれば、今年(令和元年)の12月に申請したけど実際の確定・受取りは来年の2月だったという場合、一時所得は来年分(令和2年分)の確定申告で行いますが、住宅取得価額から差し引くのは住宅ローン控除を受ける今年(令和元年分)の確定申告で行います。

次世代住宅ポイントも同様に、今年(令和元年)の12月に申請したけど実際にポイント付与され商品交換が来年の2月だったという場合、一時所得は来年分(令和2年分)の確定申告で行いますが、住宅取得価額から差し引くのは住宅ローン控除を受ける今年分(令和元年分)の確定申告で行います。

つまり、住宅取得価額から差し引く金額は、年末に金額が確定していない場合であっても見込額を計算して差し引かなければなりません。

また、後日、確定額と見込額が異なることが分かったときは、確定申告の期限内であれば訂正して再度確定申告を、期限後に分かったときは修正申告の手続きが必要となります。

 

(補助金等の見込控除)
租税特別措置法関係通達
41-26の3 補助金等の交付を受ける場合において、当該交付を受ける額が措置法第41条の規定の適用を受ける確定申告書を提出する時までに確定していない場合には、当該交付を受ける額の見込額に基づいて同条の規定を適用する。この場合において、後日、当該交付を受ける額の確定額と当該見込額とが異なることとなったときは、遡及して当該控除の額を訂正するものとする。(平23課個2-35、課審4-47追加)

まとめ

すまい給付金も次世代住宅ポイントも、住宅ローン控除の対象となる住宅の取得価額から、
・金額が未確定でも
・国庫補助金等に該当しても(すまい給付金)
・商品交換してなくても(次世代住宅ポイント)
関係なくすべてを付表1に記載して住宅取得価額から差し引く必要があります。

その金額をローン控除明細書に反映させて、住宅ローン控除額を計算します。

一時所得との計上基準とは異なりますので、気を付けましょう。

まとめ

計算場所 すまい給付金 次世代住宅ポイント
一時所得(所得計算) 受け取った日の収入 商品交換した日の収入
住宅ローン控除(税額控除) 給付を受けるであろう金額 付与を受けるであろうポイント数

 

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