利益が出てるのにお金がないのはナゼ?

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、「利益が出ているはずなのに、なぜキャッシュが貯まらないのか?」というお話です。

その中でも、今回は「借入金」と「減価償却」について解説します。

結論

「当期利益≠現預金増加額」です。

現金が減らなくても利益が減るケースもありますし、現金が減っても利益が減らないケースがありますので、注意しましょう。

利益が出てるのにナゼお金が貯まらないのか

解説

「黒字倒産」というフレーズを一度くらいは聞いたことがあると思います。

これは、当期利益が出てるのに、手形などの債務を支払うことができずに倒産してしまうことをいいます。

なぜこのようなことが起きるのかというと、少しでも簿記をかじったことがある方は何となくわかると思いますが、「当期利益≠現預金増加額」だからです。

例えば、会社を設立したとします。
現預金100円/資本金100円

次に、商品を手形で仕入れたとします。
仕入150円/支払手形150円

続いて、仕入れた商品を掛で売り上げたとします。
売掛金200円/売上200円

さて、手形の支払期日が到来しました。
150円を支払わなければならないところ、手元には100円しかありません。
売掛金の入金はまだです。
・・・あれ、支払えない!!

この時点での利益は、売上200円△仕入150円=利益50円です。

実際はこんなに単純ではありませんが、ザックリとした仕組みはこんな感じです。

つまり、黒字赤字を気にするのも大切ですが、もう一つ重視すべきなのは「キャッシュフロー」です。

借入金の返済

利益が出ているのにお金が貯まらない原因の一つとして、借入金の返済があります。

事業資金が必要となった場合、金融機関からお金を借りることがあります。
これを、会計では「借入金」といいます。

例えば、360万円を3年(36ヶ月)で返済する場合、毎月10万円の返済となります。
※シンプルにするため、利息は考慮しません。
借入金10万円/現預金10万円

借りたお金を返済しているだけですので、損益には影響ありません。

さて、上記の金額を踏まえて、決算期末に次のような数字となっていたとします。
※シンプルにするため、掛取引等はないものとします。
・当期利益:20万円
・現預金:期首300万円→期末200万円
・借入金:期首240万円→期末120万円

20万円利益が出ているということは、現預金が本来は期首300万円+20万円=320万円となるはずです。

しかし、借入金の返済があるため、320万円△10万円×12ヶ月=200万円が現預金の残額となります。

借入金の返済がある場合には、キャッシュフローには要注意です。

年間の借入返済額が当期利益以上ないと、現預金を増やすのはなかなか難しいかもしれません。

固定資産の減価償却

機械装置や車を購入した場合、会計上は全額を経費とせず、減価償却という形で数年に渡って経費計上します。

例えば、240万円の社用車を購入したとします。

仮に6年の定額法(毎年均一に償却)で減価償却すると、
240万円÷6年=40万円(減価償却費=経費)
240万円△40万円=200万円(車=資産)
という算式になります。

減価償却費が計上されると、当期利益が40万円減少します。

それでは、現預金の減少額はというと、車を買った期に240万円減少します。

利益の減少と現預金の減少に、200万円の差が生るので、
ここの取引だけを考えると、少なくとも当期利益が200万円以上出ていないと、現預金を増やすのはなかなか難しいかもしれません。

逆に、償却2年目以降については、現預金は減らずに減価償却費が40万円計上されます(当期利益が40万円減少する)。

【購入した期】
車両240万円/現預金240万円
減価償却費40万円/車両40万円
現預金240万円/売上240万円

【翌期以降】
減価償却費40万円/車両40万円

簿記の基礎

現預金240万円/売上240万円

↑これ、簿記の「仕訳」というものなんです。

仕訳のルールはいたってシンプルです。
・右の金額と左の金額は必ず一致
・資産項目(現預金、売掛金、車両など)が増えるときは左
・負債項目(買掛金、支払手形、借入金など)が増えるときは右
・収入項目(売上など)が増えるときは右
・支出項目(仕入、減価償却費など)が増えるときは左

減るときは、それぞれ左右逆になります。

これらを組み合わせると、例えば、
現預金100円/売上100円(現金100円増えて、売上100円が同時に計上される)
という取引の仕訳が完成するわけです。

また、借入金の返済については、
借入金120万円/現預金120万円(借入金、現金ともに120万円減る)
という仕訳になり、つまりは、
負債の減少/資産の減少
という取引ですので、損益には影響が出ないということに注意しましょう。

あとがき

社長から、
「借入金を返済した分は利益が減るんだよね?」
と聞かれることが稀にあります。

会計の知識がないと、「お金が減る=経費」という思考になってしまうようです。

一度理解してしまえばそこまで難しい話ではありませんが、
借入返済と減価償却あたりを考慮したキャッシュフローは、決算時に必ず説明するようにしています。

それでもなかなか理解していただけないこともありますが、なんとかザックリでもお伝えできるよう試行錯誤中です。

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