こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。
以前にも伝票は本当に必要なのかどうかという記事を書きましたが、今回はもう少し突っ込んだお話です。
先日、お客様の経理事務員さんから、会社の経理についての愚痴を聞かされました(笑)
確かに、経理について少し無駄が多いとは感じていましたが、トップがその方法が絶対という考えであるため、なかなか体制を変えられません。
やはり、二度手間の経理だったり、伝票会計だったりで、「効率化したい若手 vs 従来通りのベテラン」という構図はまだまだ少なくないのだと感じました。
♦伝票が無くても法律違反にならない理由
♦伝票をなくすためにやるべきこと
法律上伝票は不要
経理のやり方を変えるべきではない、変えられないと主張するベテランは、
・自社の経理が特殊だと思い込んでいる
・仕事の目的を理解していない
・代々やってきた方法が一番良い
などの理由が挙げられますが、中には法律上必要であると勘違いしている人もいるようです。
結論としては、法律上伝票は不要です。
以前の記事にも書きましたが、法人税法施行規則では「仕訳帳」と「総勘定元帳」の作成しか規定されていないからです。
(青色申告法人の決算)
法人税法施行規則第五十三条
法第百二十一条第一項(青色申告)の承認を受けている法人(以下この章において「青色申告法人」という。)は、その資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、複式簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づいて決算を行なわなければならない。(取引に関する帳簿及び記載事項)
法人税法施行規則第五十四条
青色申告法人は、全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿(次条において「仕訳帳」という。)、全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿(次条において「総勘定元帳」という。)その他必要な帳簿を備え、別表二十に定めるところにより、取引に関する事項を記載しなければならない。(仕訳帳及び総勘定元帳の記載方法)
法人税法施行規則第五十五条
青色申告法人は、仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載しなければならない。
2 青色申告法人は、総勘定元帳には、その勘定ごとに記載の年月日、相手方勘定科目及び金額を記載しなければならない。(帳簿書類の整理保存)
法人税法施行規則第五十九条
青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。
一 第五十四条(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する帳簿並びに当該青色申告法人の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿
二 棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類
三 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し
したがって、会計ソフトから出力できる「仕訳帳」と「総勘定元帳」さえあれば、その過程で作成している入出金伝票や振替伝票は不要なのです。
伝票会計をなくすための方法(ベテランの言い訳)
「伝票は絶対に必要だ」というベテランさんにその根拠を聞いてみても、きっと明確な答えは返ってきません。
おそらく、
・ずっとそのやり方だから
・法的に作成しなければならないから
・伝票を作成したほうがミスが減るから
・自社の経理は特殊だから
・伝票に承認印を押す必要があるから
などが答えとして帰ってくると思います。
正直なところ、これらの答えはすべて言い訳です。
その言い訳を一つ一つ潰して説得していかなければ、経理の改革はありません。
ずっとそのやり方だから
「ずっとそのやり方だから」という人は、基本的に何も考えていません。
今の方法が一番良いのかどうかなどは、あまり考えていないので、改革はしやすいかもしれません。
もっと効率的な方法があることを提案して、ご自身で改革に取り組んでいけば、最初は大変ですが思いのほかコトは進むと思います。
法的に作成しなければならないから
「法的に作成しなければならないから」という人は、全くの勘違いです。
税法上(法人税法施行規則54条)不要であることを伝えて、会計ソフトで十分事足りていることを強く進言しましょう。
伝票を作成したほうがミスが減るから
「伝票を作成したほうがミスが減るから」という人は、完全に伝票脳になってしまっています。
伝票を丁寧に作成して、それを基に会計ソフトに入力するほうがミスが少なくなるように感じるかもしれませんが、普通に考えてそれはあり得ません。
なぜならば、人為的な工程が一つ増えることになるため、逆にミスが生じやすくなるからです。
例えば、伝票作成者が「0」と記載していても、ソフト入力者が「6」と見間違えて入力してしまう可能性だってあるわけです。
その点、印刷された領収書やレシートから直接入力を行えば、このようなミスが起こる可能性はグッと減ります。
自社の経理は特殊だから
「自社の経理は特殊だから」という人は、経理の本質を理解していません。
本来、経理の業務効率を上げるためには、独自のやり方ではなく誰もが理解できる標準的な方法で行うべきです。
もっと言うと、経理に特殊な方法などありません。
なぜならば、会計処理に関しては、会計基準や法律に基づいて行わなければならないため、自社だけ特殊などということはあり得ないからです。
もしベテランにしか分からないような方法を本当に採っていたとすれば、そこは直ちに改善し、経理の標準化を図ることが改革の第一歩です。
伝票に承認印を押す必要があるから
「伝票に承認印を押す必要があるから」という人は、承認印の本当の目的を理解していません。
最近はいろいろな書類が判子レスになってきていますが、ある程度の規模の会社だと、担当者・直属の上司・課長・部長などの承認印を伝票の承認印欄に押しているケースがあると思います。
承認印を無くそう!とまでは言いませんが、伝票に押さなければいけない理由はありません。
ではどこに押すかというと、領収書やレシートなどの証憑書類に直接承認印を押せばよいのです。
預金は直接入力する
古い体質の会社だと、預金の仕訳を振替伝票に一度起票して、その後会計ソフトに入力するという手順をとっている場合があります。
この方法は、はっきり言ってムダとしか言いようがありません。
当座預金であれば「当座勘定照合表」から、普通預金であれば「通帳」から直接データを入力すればよいので、振替伝票を作成する意味はありません。
もっと言えば、最近はクラウド会計の利用により、自動仕訳をしてくれるシステムも存在するので、なおさら振替伝票を使う理由はありません。
実際、私が担当するお客様でもMFクラウド会計(マネーフォワード)を採用しているところが増えてきています。
freeeも使い勝手は良いようです。
一定期間は無料で使えるようですので、使い勝手を比べてみてもいいかもしれません。
経費精算にも伝票は不要
会社によっては、せっかく月末にまとめて経費精算を行って効率化を図っているのに(その都度精算するのは非効率)、経費精算書の他に出金伝票の記載を求める場合があるようです。
しかし、経費精算書さえあれば、そこから直接会計ソフトに入力すれば全く問題ありませんので、やはり伝票は不要です。
その方が、経費精算者も手間が省けて喜ばれます。
また、効率化の点でいうと、経費精算金は翌月支払の給与と一緒に振り込むことで、振込作業が一度で済むので効率的です。
あとがき
自社の経理業務(主に会計)については、不満を持っている経理社員はけっこういます。
一番ひどいところだと、レシートから伝票を作成し、伝票から現金出納帳を作成し、現金出納帳から会計ソフトに入力するといったように、ムダだらけの方法で会計処理を行っている会社も少なからず存在します。
このような方法でも、とくに残業することなく業務が終わっていれば経理社員も不満はないかもしれませんが、もし残業がちょくちょくあるのであれば、やはり体制を見直していくべきだと思います。
さらに、会社のことを考えるのであれば、経理業務はササッと終わらせて、早めに月次決算を報告したり、将来予測の試算表を作成したり、経営陣の判断に有用な情報を提供できるような経理部を目指すことが必要であると考えます。