コロナによる業績悪化に伴う役員報酬を減額した場合の税務上の取扱い

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、新型コロナウイルス感染症の影響で業績悪化した場合の役員報酬減額についてのお話です。

コロナの影響で業績が悪化した場合、役員報酬を減額する手段が考えられます。

ただし、その減額が業績悪化改定事由に該当するかどうかが問題となります。

その点について、簡単に解説します。

役員報酬減額後の退職金については、下記の記事をご参照ください。

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改定事由

役員報酬が定期同額給与として認められる改定事由には、
①事業年度開始の日から3ヶ月以内の改定
②役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情による改定(臨時改定事由)
③経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由による改定(業績悪化改定事由)
の3つがあります。(法人税法施行令第69条1項1号)

(定期同額給与の範囲等)
法人税法施行令第六十九条
法第三十四条第一項第一号(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める給与は、次に掲げる給与とする。
一 法第三十四条第一項第一号に規定する定期給与(以下第六項までにおいて「定期給与」という。)で、次に掲げる改定(以下この号において「給与改定」という。)がされた場合における当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるもの
イ 当該事業年度開始の日の属する会計期間(法第十三条第一項(事業年度の意義)に規定する会計期間をいう。以下この条において同じ。)開始の日から三月(次に掲げる法人にあつては、それぞれ次に定める月数)を経過する日(イにおいて「三月経過日等」という。)まで(定期給与の額の改定(継続して毎年所定の時期にされるものに限る。)が三月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合にあつては、当該改定の時期)にされた定期給与の額の改定
(1) 法第七十五条の二第一項(確定申告書の提出期限の延長の特例)の規定の適用を受けている通算法人((2)に掲げる法人を除く。)のうち同項に規定する定款等の定めにより各事業年度終了の日の翌日から三月以内に当該通算法人(会計監査人を置いているものに限る。)の当該各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合その他の財務省令で定める場合に該当するもの 四月
(2) 法第七十五条の二第一項各号の指定を受けている内国法人 その指定に係る月数に二を加えた月数
ロ 当該事業年度において当該内国法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(第四項第二号及び第五項第一号において「臨時改定事由」という。)によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定(イに掲げる改定を除く。)
ハ 当該事業年度において当該内国法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(第五項第二号において「業績悪化改定事由」という。)によりされた定期給与の額の改定(その定期給与の額を減額した改定に限り、イ及びロに掲げる改定を除く。)

コロナの影響による減額は改定事由に該当するのか

新型コロナウイルス感染症の影響による業績悪化に伴い役員報酬を減額した場合に、それが改定事由に該当するかどうかが問題となります。

基本的な考え方としては法人税基本通達に記載されており、国税庁の「役員給与に関するQ&A」に具体例が示されています。

(経営の状況の著しい悪化に類する理由)
法人税基本通達9-2-13
令第69条第1項第1号ハ《定期同額給与の範囲等》に規定する「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する。(平19年課法2-3「二十二」により追加、平19年課法2-17「二十」により改正)

例えば、次のような場合の減額改定は、通常、業績悪化改定事由による改定に該当することになると考えられます。

① 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
② 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

国税庁HP「役員給与に関するQ&A」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf

この点については、国税庁の「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」(令和4年4月18日更新)の「4 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係」(問6、問6-2)に記載されており、経営状況が著しく悪化した場合や、今後悪化することが不可避であると考えられる場合には、業績悪化改定事由に該当すると回答されています。

問 6.《業績が悪化した場合に行う役員給与の減額》 〔令和2年4月 13 日追加〕
当社は、各種イベントの開催を請け負う事業を行っていますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、イベント等の開催中止の要請があったことで、今後、数か月間先まで開催を予定していた全てのイベントがキャンセルとなりました。
その結果、予定していた収入が無くなり、毎月の家賃や従業員の給与等の支払いも困難な状況であることから、当社では、役員給与の減額を行うこととしました。
法人税の取扱いでは、年度の中途で役員給与を減額した場合、定期同額給与に該当せず、損金算入が認められないケースもあると聞いています。
そこで、当社のような事情によって役員給与を減額した場合、その役員給与は定期同額給与に該当するでしょうか。

〇 貴社が行う役員給与の減額改定については、業績悪化改定事由(法人税法 34 条1項1号、法人税法施行令 69 条1項1号ハ)による改定に該当するものと考えられます。
したがって、改定前に定額で支給していた役員給与と改定後に定額で支給する役員給与は、それぞれ定期同額給与に該当し、損金算入することになります。
〇 法人税の取扱いにおける「業績悪化改定事由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいますので、貴社のように、業績等が急激に悪化して家賃や給与等の支払いが困難となり、取引銀行や株主との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合は、この業績悪化改定事由に該当することになります。

問 6-2.《業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額》〔令和2年4月 13 日追加〕
当社は、新型コロナウイルス感染症の影響により、外国からの入国制限や外出自粛要請が行われたことで、主要な売上先である観光客等が減少しています。そのため、当面の間は、これまでのような売上げが見込めないことから、営業時間の短縮や従業員の出勤調整といった事業活動を縮小する対策を講じています。
また、いつになれば、観光客等が元通りに回復するのかの見通しも立っておらず、今後、売上げが更に減少する可能性もあるため、更なる経費削減等の経営改善を図る必要が生じています。一方で、当社の従業員の雇用や給与を維持するため、急激なコストカットも困難であることから、当社の経営判断として、まずは役員給与の減額を行うことを検討しています。
しかしながら、法人税の取扱上、年度の中途で役員給与を減額した場合にその損金算入が認められるのは、経営が著しく悪化したことなど、やむを得ず減額せざるを得ない事情(業績悪化改定事由)がある場合に限られると聞いています。
そこで、当社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由による改定に該当するのでしょうか。

〇 貴社が行う役員給与の減額改定について、現状では、売上などの数値的指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響により、人や物の動きが停滞し、貴社が営業を行う地域では観光需要の著しい減少も見受けられるところです。
〇 また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止されない限り、減少した観光客等が回復する見通しも立たないことから、現時点において、貴社の経営環境は著しく悪化しているものと考えられます。
〇 そのため、役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避と考えられます。
〇 したがって、貴社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由(法人税法 34 条1項1号、2号、法人税法施行令 69 条1項1号ハ、5項2号)による改定に該当します。
国税庁HP「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(令和4年4月18日更新)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/pdf/faq.pdf

したがって、減額前に定額で支給していた役員報酬と減額後に定額で支給する役員報酬は、それぞれ定期同額給与に該当し、損金算入することが可能であると考えられます。

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