こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。
前回に引き続き、経理処理のお話です。
前回の記事
↓
消費税の簡易課税制度を採用した場合の「税込経理」と「税抜経理」について、少し掘り下げて解説します。
・簡易課税の仕組み
・税込経理の場合の簡易課税の計算
・税抜経理の場合の簡易課税の計算
簡易課税の仕組み
・卸売業(第一種事業)→売上消費税×90%
・小売業(第二種事業)→売上消費税×80%
・製造業(第三種事業)→売上消費税×70%
・その他(第四種事業)→売上消費税×60%
・サービス業(第五種事業)→売上消費税×50%
・不動産業(第六種事業)→売上消費税×40%
を仕入消費税とみなして、納税額を計算する方法です。
売上消費税500△仕入消費税450(500×90%)=納税額50
と計算できます。
税込経理の場合の簡易課税の計算
仕入3,300円(うち消費税300円)
給与1,100円(非課税)
租税公課50円(500△500×90%[卸売業])
5,500△(3,300+1,100+50)=1,050
よって、当期利益は1,050円と計算することができます。
税抜経理の場合の簡易課税の計算
簡易課税の計算
税抜経理の場合、税抜ベースで損益の計算を行い、通常は仮受消費税(売上消費税)と仮払消費税(仕入消費税)を相殺して、差額を未払消費税として負債計上します。
ただし簡易課税の税抜経理の場合、原則課税ベース計算した仮受消費税と仮払消費税を相殺し、その相殺時に簡易課税で計算した未払消費税を計上して、差額を「雑収入」又は「雑損失」として計上します。
(仮受仮払消費税と未払消費税は、別ルートで計算します。)
売上5,500円(うち消費税500円)
仕入3,300円(うち消費税300円)
給与1,100円(非課税)
雑収入150円(不課税)
雑収入150円は、消費税計算の差額部分です。
原則課税より簡易課税のほうが150円少なかったことによる益税が雑収入に計上されます。
(仮受消)500 / (諸 口)500
(諸 口)300 / (仮払消)300
(諸 口) 50 / (未払消) 50※
(諸 口)150 / (雑収入)150
※売上消費税500△みなし仕入消費税450(500×90%)=未払消費税50
5,000△(3,000+1,100)+150=1050
よって、当期利益は1,050円と計算することができます。
非課税を課税にしていた場合
給与は消費税法上非課税取引ですが、間違って課税で計算していた場合には、下記のようになります。
売上5,500円(うち消費税500円)
仕入3,300円(うち消費税300円)
給与1,100円(うち消費税100円)誤
雑収入50円(不課税)
雑収入50円は、消費税計算の差額部分です。
また、経費の消費税に誤りがあったとしても、簡易課税は売上のみで消費税を計算するため、未払消費税50円は変わりません。
(仮受消)500 / (諸 口)500
(諸 口)400 / (仮払消)400
(諸 口) 50 / (未払消) 50※
(諸 口) 50 / (雑収入) 50
※売上消費税500△みなし仕入消費税450(500×90%)=未払消費税50
5,000△(3,000+1,000)+50=1050
よって、当期利益は1,050円と計算することができます。
損益は変わらない
税抜経理では、たとえ仕入・経費の消費税を誤ったとしても、その分は差額(雑収入or雑損失)で調整されるため、損益に影響はありません。
上記の例でいうと、
給与を正しく1,100円(非課税)で計上すると、雑収入は150円と計算され、
誤りで1,000円(課税)で計上すると、雑収入は50円と計算されます。
したがって究極的には、仕入や経費に係るすべての消費税が誤っていたとしても、簡易課税の場合には損益には影響ありません。
とはいえ、誤った税区分で会計データや総勘定元帳が残るため、体裁としてはあまり好ましくありません。
雑収入と雑損失の関係
税抜経理の場合に出る差額の「雑収入」と「雑損失」ですが、ザックリ言うと、
・簡易課税が原則課税より有利→雑収入
・簡易課税が原則課税より不利→雑損失
となります。