従業員社宅は必ず家賃を取るべき?

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、従業員社宅のお話です。

法人が従業員に社宅を貸す場合、「家賃の半分はもらいましょう」というのは実務上よく出てくる論点です。

ただし、中には家賃を回収しなくても、給与課税されないものもあります。

その点について、簡単に解説します。

【この記事でわかること】
♦従業員社宅の基本的な考え方
♦従業員社宅が非課税になる場合
♦水道光熱費について

従業員社宅の基本的な考え方

法人が従業員に社宅を貸す場合、無償で貸与したときは、借りた従業員の給与として課税されます。

なぜなら、通常支払うべき金額を支払わないため、従業員にとっては得をしたことになるからです。

その得をした部分を「経済的利益」と呼び、税法ではそこに税金を課するという仕組みとなっています。

(経済的利益)
所得税基本通達36-15
法第36条第1項かっこ内に規定する「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」(以下36-50までにおいて「経済的利益」という。)には、次に掲げるような利益が含まれる。
(1) 物品その他の資産の譲渡を無償又は低い対価で受けた場合におけるその資産のその時における価額又はその価額とその対価の額との差額に相当する利益
(2) 土地、家屋その他の資産(金銭を除く。)の貸与を無償又は低い対価で受けた場合における通常支払うべき対価の額又はその通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の額との差額に相当する利益
(3) 金銭の貸付け又は提供を無利息又は通常の利率よりも低い利率で受けた場合における通常の利率により計算した利息の額又はその通常の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額に相当する利益
(4) (2)及び(3)以外の用役の提供を無償又は低い対価で受けた場合におけるその用役について通常支払うべき対価の額又はその通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の額との差額に相当する利益
(5) 買掛金その他の債務の免除を受けた場合におけるその免除を受けた金額又は自己の債務を他人が負担した場合における当該負担した金額に相当する利益

従業員社宅が非課税になる場合

通常は一定額の家賃を支払わなければ給与課税されますが、一定の要件を満たす場合には、非課税となります。

一定の要件とは、社宅の無償貸与の理由が「その職務の性質上欠くことのできないもの」であって、「その職務の遂行上やむを得ない必要に基づき使用者から指定された場所に居住すべきもの」であることです。

つまり、その職務遂行のため会社からの要請により指定された場所(社宅)に住む場合には、通常の社宅の無償貸与とは異なり、給与課税とすることは妥当ではないという考え方に基づきます。

例えば所得税基本通達9-9では、
・船舶乗組員の船室
・看護師
・ホテル等の住み込みの使用人
などが例示として記載されいます。

これらは、指定された場所に住むことにより職務を全うできるため、そのような無償貸与(経済的利益)は非課税とされています。

(非課税所得)
所得税法第九条
次に掲げる所得については、所得税を課さない。
六 給与所得を有する者がその使用者から受ける金銭以外の物(経済的な利益を含む。)でその職務の性質上欠くことのできないものとして政令で定めるもの
(非課税とされる職務上必要な給付)
所得税法施行令第二十一条
法第九条第一項第六号(非課税所得)に規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 船員法第八十条第一項(食料の支給)の規定により支給される食料その他法令の規定により無料で支給される食料
二 給与所得を有する者でその職務の性質上制服を着用すべき者がその使用者から支給される制服その他の身回品
三 前号に規定する者がその使用者から同号に規定する制服その他の身回品の貸与を受けることによる利益
四 国家公務員宿舎法(昭和二十四年法律第百十七号)第十二条(無料宿舎)の規定により無料で宿舎の貸与を受けることによる利益その他給与所得を有する者でその職務の遂行上やむを得ない必要に基づき使用者から指定された場所に居住すべきものがその指定する場所に居住するために家屋の貸与を受けることによる利益
(職務の遂行上やむを得ない必要に基づき貸与を受ける家屋等)
所得税基本通達9-9
令第21条第4号に規定する「職務の遂行上やむを得ない必要に基づき使用者から指定された場所に居住すべきものがその指定する場所に居住するため」に貸与を受ける家屋には、次に掲げるようなものが該当する。(平14課法8-5、課個2-7、課審3-142改正)
(1) 船舶乗組員に対し提供した船室
(2) 常時交替制により昼夜作業を継続する事業場において、その作業に従事するため常時早朝又は深夜に出退勤をする使用人に対し、その作業に従事させる必要上提供した家屋又は部屋
(3) 通常の勤務時間外においても勤務を要することを常例とする看護師、守衛等その職務の遂行上勤務場所を離れて居住することが困難な使用人に対し、その職務に従事させる必要上提供した家屋又は部屋
(4) 次に掲げる家屋又は部屋
イ 早朝又は深夜に勤務することを常例とするホテル、旅館、牛乳販売店等の住み込みの使用人に対し提供した部屋
ロ 季節的労働に従事する期間その勤務場所に住み込む使用人に対し提供した部屋
ハ 鉱山の掘採場(これに隣接して設置されている選鉱場、製錬場その他の附属設備を含む。)に勤務する使用人に対し提供した家屋又は部屋
ニ 工場寄宿舎その他の寄宿舎で事業所等の構内又はこれに隣接する場所に設置されているものの部屋

水道光熱費について

原則として、水道光熱費は借手である従業員が負担すべきものです。
したがって、貸手である会社が負担した場合には、従業員が経済的利益を受けたとして給与課税されます。
ただし、次の2つの要件を満たす場合には、その経済的利益は非課税とすることができます。
①使用金額が通常必要であると認められる範囲内のものであること
②各人ごとの使用金額が明らかでないこと(計算できないこと)
①の「使用金額が通常必要であると認められる範囲内のものであること」とは、通常の生活のために使用する程度の少額である場合を指します。
②の「各人ごとの使用金額が明らかでないこと(計算できないこと)」とは、例えばトイレやお風呂や台所などが共用となっている場合に、入居者の各人ごとに利用金額が判別できないようなケースを指します。

(課税しない経済的利益……寄宿舎の電気料等)
所得税基本通達36-26
使用者が寄宿舎(これに類する施設を含む。以下この項において同じ。)の電気、ガス、水道等の料金を負担することにより、当該寄宿舎に居住する役員又は使用人が受ける経済的利益については、当該料金の額がその寄宿舎に居住するために通常必要であると認められる範囲内のものであり、かつ各人ごとの使用部分に相当する金額が明らかでない場合に限り、課税しなくて差し支えない。

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