ICカード・電子マネーの正しい経理処理方法は?

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、suicaやnanacoなど、ICカード・電子マネー(以下、「ICカード」に統一します)の経理処理についてのお話です。

これらの流れは、
①チャージする(お金を事前に入れる)
②利用する(チャージ金が減る)
ですが、どの時点で経費として計上するのが正しいのでしょうか?

【この記事で分かること】
・ICカードの原則的な経理方法(手間がかかる)
・ICカードの簡便的な経理方法(やや簡単)
・ICカードの毎期継続による経理方法(簡単だけどリスクあり)

原則的な経理方法

原則的な経理方法では、チャージ時と利用時の両方で経理処理します。

チャージ時

・1,000円をチャージ

(貯蔵品※)1,000円 / (現金)1,000円

※貯蔵品勘定のほか、「預け金」「前払金」などの勘定科目でもOKです。

利用時

・電車賃300円を利用

(旅費交通費)300円 / (貯蔵品)300円

決算時

【決算処理なし】

貯蔵品:1,000円△300円=700円
旅費交通費:300円

期中の経理処理で、経費や貯蔵品残高が把握できているため、特に決算整理処理は行いません。

メリット・デメリット

メリットは、一番正確な経理方法であるため、期中の経費や貯蔵品残高をしっかり把握できます。

ただし、チャージの都度、そして利用の都度、経理処理が必要となりますので、一番手間がかかります。

原則的な経理方法(現金出納帳ナシ)

あまり好ましいことではありませんが、事業者によっては現金出納帳がないケースがあります。

その場合には、利用時に経理処理(現金出金)します。

チャージ時

・1,000円をチャージ

【経理処理なし】

利用時

・電車賃300円を利用

(旅費交通費)300円 / (現金)300円

決算時

【決算処理なし】

旅費交通費:300円

簡便的な経理方法

簡便的な経理方法では、ICカードの利用目的を一つに絞り、その目的だけのために使用する場合に可能な経理方法です。

例えば、suicaであれば「旅費交通費」のみ、nanacoであれば「福利厚生費」のみというように、一つだけに勘定科目を絞ることで、簡便的な経理方法を行うことができます。

チャージ時

・1,000円をチャージ

(旅費交通費)1,000円 / (現金)1,000円

利用時

・電車賃300円を利用

【経理処理なし】

決算時

・利用履歴より、決算日時点で未使用分700円を把握

(貯蔵品)700円 / (旅費交通費)700円

貯蔵品:700円
旅費交通費:1,000円△700円=300円

チャージ時に全額を旅費交通費として経理処理しているため、決算時に未使用分をマイナスすることにより、正確な旅費交通費を計上できます。

メリット・デメリット

メリットとしては、期中の経理処理がラクです。
利用の都度経理処理をする必要がなく、チャージした金額をそのまま経理処理することができます。

ただし、決算日時点での未使用分を調べる必要があるため、その点はデメリットかもしれません。

とはいえ、チャージ時に経費計上して、決算時に未使用分をマイナスするだけですので、作業としてはとても簡単です。

この方法を採用できるのは、勘定科目を一つに絞っている場合のみです。

勘定科目が混在してしまうと、利用履歴から科目ごとに分けなければならないため、原則的な経理方法と同様に手間がかかります。

勘定科目を一つに絞ることにより、最後に未使用分をマイナスして計算することができる、という点にご注意ください。

毎期継続による経理方法

毎期継続による経理方法は、税務会計的には認められるものではありません。

ただし、実務的には、この方法で行っている小規模事業者もいます。

毎期継続による経理方法でも、ICカードの利用目的を一つに絞り、その目的だけのために使用したほうが良いです。

例えば、suicaであれば「旅費交通費」のみ、nanacoであれば「福利厚生費」のみというように、一つだけの勘定科目にしか使用していないことをアピールしましょう。

チャージ時

・1,000円をチャージ

(旅費交通費)1,000円 / (現金)1,000円

利用時

・電車賃300円を利用

【経理処理なし】

決算時

【決算処理なし】

旅費交通費:1,000円

メリット・デメリット

メリットは、なんといってもチャージ時にだけ経理処理を行えばよいという点です。

ただし、一般的に認められた方法ではありませんので、税務署に指摘される可能性があることをご注意ください。

特に、毎回のチャージ代金が多額であったり、決算月だけ異常にチャージ代金が多いなど、むりやり多額の経費を計上している場合や利益調整をしていると考えられる場合、間違いなく税務署は指摘してきます。

したがって、オススメできる方法とはなかなか言い難いです。

あとがき

やはり、よく使われるのは簡便的な経理方法です。

残高を確認する必要はありますが、年に1度のことですので、ぜひご協力いただきたいところです。

「利用目的を一つに絞って」と言いましたが、中には旅費交通費のみに使うと決めても消耗品などを購入してしまうこともあるかと思います。

事業のために購入した消耗品であれば経費計上できますので、少しくらいであれば消耗品が旅費交通費に混ざってしまっても問題ないかなぁと思っています。

ですので、万が一違う用途で使ってしまっても、金額が小さければ気にしなくてOKです。

旅費交通費に計上されても、消耗品費に計上されても、これらの合計の「販売費及び一般管理費」は変わりませんし、税金計算にまったく影響はありませんので。

最新情報をチェックしよう!