こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。
今回は、所得税の確定申告について、納税者の人が勘違いしていた車両の売却のお話です。
場合によっては損をしているケースもありますので、注意が必要です。
令和4年分の確定申告は終わりましたが、備忘録として記事を書きます。
♦譲渡所得の計算方法
♦耐用年数経過後の車両の売却
♦概算取得費の計算
譲渡所得(総合譲渡)とは
事業用に車両を持っている場合、減価償却や車両に係る経費は事業所得として計算しますが、その車両を売却した場合は譲渡所得として計算します。
土地建物や株式等以外の資産を売却したときの譲渡所得(総合譲渡)は、最終的には給与所得や事業所得などの所得と合算されて総合課税の対象となります。
譲渡所得の計算方法は、下記のとおりです。
譲渡価額△(取得費+譲渡費用)△特別控除50万円=譲渡所得の金額
譲渡所得の計算は、所有期間5年以下の短期譲渡所得と、5年超の長期譲渡所得とに区分され、両方ある場合には、先に短期譲渡所得の譲渡益から50万円の特別控除額を差し引きます。
また、短期譲渡所得の金額は全額が総合課税の対象となりますが、長期譲渡所得の金額はその2分の1が総合課税の対象になります。
(譲渡所得)
所得税法第三十三条
譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。
2 次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得
3 譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
一 資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)
二 資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの
4 前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。
5 第三項の規定により譲渡益から同項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除する場合には、まず、当該譲渡益のうち同項第一号に掲げる所得に係る部分の金額から控除するものとする。(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)
所得税法第三十八条
譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。
2 譲渡所得の基因となる資産が家屋その他使用又は期間の経過により減価する資産である場合には、前項に規定する資産の取得費は、同項に規定する合計額に相当する金額から、その取得の日から譲渡の日までの期間のうち次の各号に掲げる期間の区分に応じ当該各号に掲げる金額の合計額を控除した金額とする。
一 その資産が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供されていた期間 第四十九条第一項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)の規定により当該期間内の日の属する各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるその資産の償却費の額の累積額
二 前号に掲げる期間以外の期間 第四十九条第一項の規定に準じて政令で定めるところにより計算したその資産の当該期間に係る減価の額
耐用年数経過後の車両の売却があった場合
事業用で使用していれば、減価償却によって帳簿価額(簿価)が毎年減少していきますが、法定耐用年数を経過すると簿価を1円だけ残して、青色申告であれば決算書の「貸借対照表」や「減価償却費の計算」の欄に記載します。
その車両を売却する場合には、簿価1円が取得費となります。
例えば、簿価1円の車両を55万円で売却した場合、譲渡所得の算式に当てはめると、
譲渡価額520,000円△取得費1円=519,999円
519,999円△特別控除500,000円=譲渡所得の金額19,999円
と計算されます。
これも間違いではありませんが、租税特別措置法に「概算取得費」の特例が規定されており、これは譲渡価額の5%を取得費として計算することができます。
したがって、概算取得費で計算すると、
譲渡価額520,000円△取得費26,000(520,000×5%)=494,000円
494,000円△特別控除500,000円=譲渡所得の金額0円
と計算することができます。
取得費となる簿価が多く残っている場合には原則的な計算方法が有利となると思いますが、簿価が1円のときは概算取得費で計算したほうが有利になるケースが多いと思います。
(土地建物等以外の資産の取得費)
所得税基本通達38-16
土地建物等以外の資産(通常、譲渡所得の金額の計算上控除する取得費がないものとされる土地の地表又は地中にある土石等並びに借家権及び漁業権等を除く。)を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、法第38条及び第61条の規定に基づいて計算した金額となるのであるが、当該収入金額の 100分の5に相当する金額を取得費として譲渡所得の金額を計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。(平4課資3-1、課所4-12追加、令2課資3-7、課個2-18、課法11-4、課審7-9改正)
(注) 配偶者居住権又は当該配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の消滅につき対価の支払を受ける場合における譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費については、60-5参照
概算取得費の話
概算取得費の計算については租税特別措置法に規定されていますが、法律の立て付けとしては土地建物等を売却した場合の長期譲渡所得(長期分離課税)を前提としています。
しかし、国税庁の質疑応答事例(「短期譲渡所得の計算上控除する取得費と概算取得費」)の回答において、『現行法上、概算取得費控除の特例は、「長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費」に関する規定ですが、短期譲渡所得の金額の計算についても適用して差し支えありません。』と記載されているため、短期譲渡所得(短期分離課税)でも適用することができます。
さらには、上記の所得税基本通達38-16において、土地建物等以外の資産の売却についても概算取得費の適用ができる旨の記載があるため、結果的に総合譲渡(短期・長期総合課税)でも概算取得費を適用できるようになっています。
(長期譲渡所得の概算取得費控除)
租税特別措置法第三十一条の四
個人が昭和二十七年十二月三十一日以前から引き続き所有していた土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、所得税法第三十八条及び第六十一条の規定にかかわらず、当該収入金額の百分の五に相当する金額とする。ただし、当該金額がそれぞれ次の各号に掲げる金額に満たないことが証明された場合には、当該各号に掲げる金額とする。
一 その土地等の取得に要した金額と改良費の額との合計額
二 その建物等の取得に要した金額と設備費及び改良費の額との合計額につき所得税法第三十八条第二項の規定を適用した場合に同項の規定により取得費とされる金額
2 第三十条第二項の規定は、前項の規定を適用する場合について準用する。この場合において、同条第二項本文中「山林」とあるのは「第三十一条の四第一項に規定する土地等又は建物等(以下この項において「土地建物等」という。)」と、同項ただし書中「山林」とあるのは「土地建物等」と読み替えるものとする。(昭和28年以後に取得した資産についての適用)
租税特別措置法関係通達31の4-1
措置法第31条の4第1項の規定は、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等の譲渡所得の金額の計算につき適用されるのであるが、昭和28年1月1日以後に取得した土地建物等の取得費についても、同項の規定に準じて計算して差し支えないものとする。
質疑応答事例(譲渡所得)
短期譲渡所得の計算上控除する取得費と概算取得費控除【照会要旨】
中高層耐火建築物等の建設のための買換えの特例(措法37の5)の適用を受けて取得した買換資産を3年後に5,000万円で譲渡しました。
この場合の譲渡所得は、取得時期が引き継がれないので短期譲渡所得となりますが、その譲渡所得の計算上控除する取得費は、租税特別措置法第31条の4に規定する概算取得費控除の特例に準じて計算した金額によることとしてよろしいですか。
なお、旧譲渡資産の取得価額は40万円です。【回答要旨】
現行法上、概算取得費控除の特例は、「長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費」に関する規定ですが、短期譲渡所得の金額の計算についても適用して差し支えありません。
したがって、5,000万円×5%=250万円を取得費とすることができます。