103万円?130万円?意外と知らない扶養に関する基礎知識

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、所得税と社会保険の扶養に関するお話です。

扶養親族の収入の壁は、
・所得税は103万円
・社会保険は130万円
という話はご存じの方も多いと思いますが、
厳密にいうと少し違う部分もありますので、今回はこのあたりについてザックリ解説していきたいと思います。

【この記事で分かること】
・所得税の扶養の要件
・社会保険の扶養の要件
・扶養親族(被扶養者)がフリーランスの場合の要件(所得税・社会保険)

結論

所得税

・給与所得のみであれば、年収103万円以下かどうかで判定可能
・事業所得の場合は、「収入△経費」が48万円以下(合計所得金額)かどうかで判定

社会保険

・給与所得のみであれば、年収130万円未満(交通費等込み)かどうかで判定
・事業所得の場合は、「収入△一定の経費」が130万円未満かどうかで判定

所得税の扶養の要件

扶養親族の定義

扶養親族

・親族(配偶者・専従者以外)
・里子
・養護受託老人

金額要件等

居住者(扶養控除適用者)と生計を一にするもののうち、合計所得金額が48万円以下である者。

(定義)
所得税法第二条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
三十四 扶養親族
居住者の親族(その居住者の配偶者を除く。)並びに児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十七条第一項第三号(都道府県の採るべき措置)の規定により同法第六条の四(定義)に規定する里親に委託された児童及び老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第十一条第一項第三号(市町村の採るべき措置)の規定により同号に規定する養護受託者に委託された老人でその居住者と生計を一にするもの(第五十七条第一項に規定する青色事業専従者に該当するもので同項に規定する給与の支払を受けるもの及び同条第三項に規定する事業専従者に該当するものを除く。)のうち、合計所得金額が四十八万円以下である者をいう。
三十四の二 控除対象扶養親族
扶養親族のうち、年齢十六歳以上の者をいう。
三十四の三 特定扶養親族
控除対象扶養親族のうち、年齢十九歳以上二十三歳未満の者をいう。
三十四の四 老人扶養親族
控除対象扶養親族のうち、年齢七十歳以上の者をいう。

扶養親族の収入・所得の要件

所得税の扶養控除の要件は、生計を一にする親族が給与のみの場合は、
収入金額(年収)が「103万円以下」
であれば、扶養控除を受けることができます。
ただし、所得税法上は、
合計所得金額が「48万円以下」
であれば、扶養控除を受けられる仕組みとなっています。
あれ?103万円?48万円?
え??なんで金額が違うの???

と思われるかもしれませんが、扶養親族の所得が給与のみであれば、同じことを言っています

収入金額103万円以下合計所得金額48万円以下

収入金額103万円=合計所得金額48万円のナゾ

収入が給与のみの場合の所得計算をザックリ示すと、
収入金額△給与所得控除額=給与所得(合計所得金額)
となります。

「収入金額」とは、いわゆる年収です。

「給与所得控除額」とは、給与所得者は事業所得者とは異なり、必要経費を把握することが著しく困難であることから、一定の計算方法で給与所得控除額を算出することで、みなし経費として収入金額から控除できるものをいいます。

「給与所得」とは、収入金額から給与所得控除額を差し引いた残額で、給与所得のみであればその残額が合計所得金額となります。

給与所得控除額の最低控除額は55万円です。

給与収入が103万円の場合、給与所得控除額は55万円となりますので、
1,030,000円△550,000円=480,000円
と計算されます。

いかがでしょうか?

給与収入(年収)が103万円のときは、合計所得金額は48万円となりますので、
収入金額103万円以下合計所得金額48万円以下
ということになります。

(給与所得)
所得税法第二十八条
給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
2 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。
3 前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四十に相当する金額から十万円を控除した残額(当該残額が五十五万円に満たない場合には、五十五万円
二 前項に規定する収入金額が百八十万円を超え三百六十万円以下である場合 六十二万円と当該収入金額から百八十万円を控除した金額の百分の三十に相当する金額との合計額
三 前項に規定する収入金額が三百六十万円を超え六百六十万円以下である場合 百十六万円と当該収入金額から三百六十万円を控除した金額の百分の二十に相当する金額との合計額
四 前項に規定する収入金額が六百六十万円を超え八百五十万円以下である場合 百七十六万円と当該収入金額から六百六十万円を控除した金額の百分の十に相当する金額との合計額
五 前項に規定する収入金額が八百五十万円を超える場合 百九十五万円

社会保険の扶養の要件

被扶養者の定義

被保険者(本人)の被扶養者(扶養されている人)の判定については、「同一の世帯」でなくても対象となる被扶養者と、「同一の世帯」でないと対象とならない被扶養者の2つがあります。

「同一の世帯」とは、被保険者と同居しており、家計を共にしている状態の家族をいいます。

「同一の世帯」でなくても対象となる被扶養者

被保険者(本人)の
・直系尊属
・配偶者(事実上、婚姻関係にある人を含む)
・子
・孫
・兄弟
・姉妹
で、被保険者に生計を維持されている人が対象となります。

「同一の世帯」でないと対象とならない被扶養者

被保険者(本人)と同一の世帯で、主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人が対象となります。

① 被保険者の三親等以内の親族(同居が不要でも対象となる人を除く)

② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子

③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子

これらは、同居して家計を共にしている状態でなければ対象になりません。

被扶養者の収入要件

被保険者(本人)と「同一の世帯」に属しているか属していないかで、被扶養者(扶養されている人)の収入要件が少し異なります。

「同一の世帯」に属している場合

交通費等を含む年収が130万円未満(対象者が60歳以上又は障害厚生年金を受けている障害者の場合は180万円未満)であり、かつ、被保険者の年収の2分の1未満であることが要件となります。

「同一の世帯」に属していない場合

交通費等を含む年収が130万円未満(対象者が60歳以上又は障害厚生年金を受けている障害者の場合は180万円未満)であり、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ないことが要件となります。

年収の注意点

社会保険の被扶養者の年収には、給与だけではなく、通勤手当や雇用保険の失業等給付、健康保険の傷病手当金なども含まれますので、注意が必要です。

扶養親族(被扶養者)がフリーランスの場合

所得税の扶養

上記でも解説したとおり、
扶養親族の合計所得金額が「48万円以下」
であれば、扶養控除を受けられる仕組みとなっています。

給与所得の場合は、
給与収入△給与所得控除額=合計所得金額
ですが、
フリーランスの事業所得の場合は、
収入△経費(青色であれば、さらに△青色申告控除)=合計所得金額
となります。

給与所得と事業所得の2つがある場合には、それぞれの所得金額を合計したのもが最終的な合計所得金額となりますので、48万円以下判定を行う際は合計することを忘れないように注意が必要です。

例えば、
・売上1,000万円
・経費990万円
であれば、
10,000,000円△9,900,000円=100,000円
100,000円≦480,000円

と計算されるため、
扶養親族の要件を満たすことになります。

あくまでも合計所得金額10万円≦48万円で判定しますので、
収入(売上等)1,000万円で判定しないように気を付けてください。

さらに、上記事業所得に加えて給与所得があった場合には、
① 給与収入900,000円△給与所得控除額550,000円=所得金額350,000円
② 事業所得の所得金額100,000円
③ ①+②=合計所得金額450,000円
  450,000円≦480,000円
と計算されるため、
扶養親族の要件を満たすことになります。

社会保険の扶養

上記でも解説したとおり、被保険者(本人)の被扶養者(扶養されている人)の収入要件は、130万円未満かどうかで判定します。

フリーランスの被扶養者の130万円未満判定は、収入から経費(認められるものだけ)を差し引いで、その残高を収入として130万円未満かどうかを判断します。

所得税は、合計所得金額(収入△経費)で判定されますが、
社会保険は、収入(収入△認められる経費)で判定されます。

フリーランスの被扶養者の年収の算定については、収入(売上等)から控除できる経費が、事業所得の金額を計算する場合の必要経費とは範囲が異なりますので、注意が必要です。

収入から控除が認められる経費については、健康保険組合や協会けんぽで範囲が異なるようです。

どの経費が認められるものかについては、必ず確認をするようにしましょう。

あとがき

今回は、所得税と社会保険の扶養について、簡単にまとめました。

ややこしいのは、所得税は合計所得金額(収入△経費)で判定されますが、社会保険は収入(収入△認められる経費)で判定されるところです。
社会保険の場合、経費を引いた残額も収入と呼び、その収入が130万円未満かどうかで判定しなければなりません。

扶養されている人の収入が1,000万円で経費が990万円の場合、所得税は合計所得金額が10万円になりますので、扶養の範囲内となります。

ただし、社会保険の扶養の計算上、経費990万円のうち認められる経費が800万円だとすると、収入は200万円となり、扶養から外れる可能性があります。

扶養されている人がフリーランスの場合、考え方や計算が少し複雑になりますので、間違いの無いようご注意ください。

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