病気等による役員報酬の減額(議事録ひな形あり)

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、社長の役員報酬について、病気等が原因で期中に減額をした場合に、損金算入できるかどうか解説します。
また、その際の社会保険料や住民税の取扱いについても併せて解説します。

あってほしくない事ではありますが、万が一のために頭の片隅に留めておいて頂ければと思います。

結論

損金算入できます

社長(代表取締役)が病気等で通院・入院することにより職務の執行をできなくなった場合、役員報酬を期中で減額しても定期同額給与に該当します。

役員報酬の臨時改定について

損金算入できる役員報酬については、
①定期同額給与
②事前確定届出給与
③業績連動給与
の3つに限られますが、中小企業で最も一般的な定期同額給与に基づいて解説します。

定期同額給与とは、毎月の役員報酬を同額で支給する方法をいいます。

(役員給与の損金不算入)
法人税法第三十四条
内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの、使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの及び第三項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(次号イにおいて「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(同号において「定期同額給与」という。)

やむを得ない事情による減額改定

役員報酬が定期同額給与として認められる改定事由には、
①事業年度開始の日から3ヶ月以内の改定
②役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情による改定(臨時改定事由)
③経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由による改定(業績悪化改定事由)
の3つがあります。(法人税法施行令第69条1項1号)

社長が病気で通院したり入院したことにより、当初予定されていた職務の一部又は全部を執行できなくなった場合、上記②の「役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情による改定(臨時改定事由)」に該当するものと考えられます。

法人税基本通達9-2-12の3に上記②の例が示されていますが、職制上の地位の変更がなくても、これまでと同等の職務を執行できないという事実が生じており、「職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」として臨時改定事由に該当すると考えられます。

(職制上の地位の変更等)
法人税基本通達9-2-12の3
令第69条第1項第1号ロ《定期同額給与の範囲等》に規定する「役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」とは、例えば、定時株主総会後、次の定時株主総会までの間において社長が退任したことに伴い臨時株主総会の決議により副社長が社長に就任する場合や、合併に伴いその役員の職務の内容が大幅に変更される場合をいう。(平19年課法2-17「二十」により追加)
(注) 役員の職制上の地位とは、定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等により付与されたものをいう。

回復後の増額改定

回復後、従前と同様の職務執行が可能となったことで、株主総会等の決議を経て役員報酬を元に戻した場合についても、「役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情による改定(臨時改定事由)」に該当するものと考えられます。

これらの取扱いについては、国税庁の「役員給与に関するQ&A」に詳しい記載がありますので、気になる方はご確認ください。

国税庁「役員給与に関するQ&A」はこちら
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf

傷病手当金を受ける場合

役員が傷病手当金の給付を受けようとする場合、支給要件に該当する金額まで役員報酬を減額する必要があります。

例えば役員報酬をゼロにした場合、天引きされていた各項目の取扱いについて、簡単に解説していきます。

社会保険について

役員報酬をゼロにして傷病手当金を受給していたとしても、減額前の厚生年金保険料及び健康保険料を支払わなければなりません。

したがって、会社の経理としては、
・その分の厚生年金保険料及び健康保険料を毎月徴収する
・会社がいったん立て替えておき、回復後(増額改定後)に徴収する
という方法が考えられます。

所得税について

所得税については、収入がありませんので、当然ゼロとなります。

毎月の通常の給与計算と同様、源泉徴収税額表(月額表)を基に計算します。

住民税について

住民税については、前年の所得に基づいて当年6月から翌年5月まで天引きされますので、たとえ役員報酬をゼロにしたとしても納める必要があります。

したがって、会社の経理としては、
・その分の住民税を毎月徴収する
・会社がいったん立て替えておき、回復後(増額改定後)に徴収する
・特別徴収(会社が天引き)を普通徴収(自分で納付)に切り替える
という方法が考えられます。

臨時株主総会議事録のひな形

役員報酬ゼロ(停止)のパターンで議事録を作成したので、参考にしてみてください。

臨時株主総会議事録

令和○年○月○日午前11時00分より、当会社の本店において、臨時株主総会を開催した。

発行済株式総数     500株
議決権のある株主総数   2名
この議決権の総数    500個
出席株主数(委任状も含む)2名
この議決権の総数    500個

以上のとおり出席があったので、定款の規定により、取締役○○ ○○ は議長席につき、総会は適法に成立した旨を述べ、開会を宣し、ただちに議事に入った。

議案 取締役の報酬改定の件

議長は、取締役 ○○ ○○ の病気治療に伴い、業務に支障をきたすため、業務に復帰する相当期間、役員報酬の支給を停止したい旨を述べ、議場に諮ったところ、全員一致をもって承認可決した。
なお、役員報酬の停止は令和○年○月○日より適用するものとする。

以上をもって本日の議事を終了したので、午前11時20分、議長は閉会を宣した。
上記の決議を明確にするため、本議事録を作成し、出席取締役全員がこれに記名押印する。

令和○年○月○日

株式会社○○ 臨時株主総会

議長 代表取締役 ○○ ○○ 印
取締役 ○○ ○○ 印

あとがき

役員報酬の期中改定は、業務の中でもけっこう神経を使います。

一歩間違えると、会社の税金計算でとても不利になるからです。

要件に該当するかどうかは、状況をしっかり整理し、個々の事情に照らして慎重に判断する必要があります。

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