こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。
今回は、退職金(退職所得)があった場合の合計所得金額についてのお話です。
今更ですが、令和2年分の年末調整及び確定申告から、「合計所得金額」による制限が設けられたため、所得控除の控除額等に影響がでるケースがあります。
特に退職金については、基本的には確定申告も不要であるため、令和1年分以前の感覚でいると痛い目を見るかもしれません。
年末調整業務や確定申告業務に携わる人は、ミスの無いよう処理する必要があります。
合計所得金額とは
合計所得金額とは、国税庁のホームページによると、下記のように定義されています。
合計所得金額
次の①と②の合計額に、退職所得金額、山林所得金額を加算した金額です。
※申告分離課税の所得がある場合には、それらの所得金額(長(短)期譲渡所得については特別控除前の金額)の合計額を加算した金額です。
①事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後の金額)
②総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の2分の1の金額
ただし、「総所得金額等」で掲げた繰越控除を受けている場合は、その適用前の金額をいいます。国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2022/03/order3/yogo/3-3_y02.htm
ざっくり説明すると、次の①から⑧までの合計額をいいます。
①事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後)
②総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益計算後、2分の1後)
③分離課税の土地建物等の譲渡所得の金額(特別控除前)
④分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額(上場株式等に係る譲渡損失との損益通算後、繰越控除前)
⑤分離課税の株式等に係る譲渡所得等の金額(繰越控除前)
⑥分離課税の先物取引に係る雑所得等の金額(繰越控除前)
⑦山林所得金額(特別控除後)
⑧退職所得金額(2分の1後)
退職所得等がある場合の所得控除
例えば、たまたま退職金があったり株式譲渡があったりした場合、上記の通り「合計所得金額」に影響が出る可能性があります。
所得控除には「合計所得金額」の制限があるものがあり、主に下記の所得控除の適用の有無に関係します。
基礎控除
納税者本人の合計所得金額が2,400万円以下であれば、最高額である48万円の控除を受けることができます。
逆に、2,500万円超の場合、控除額はゼロとなります。
合計所得金額によって控除額が変わるため、注意が必要です。
納税者本人の合計所得金額 | 所得控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超 2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超 2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | ― |
配偶者控除
納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。
また、配偶者の合計所得金額も48万円以下である必要があります。
納税者本人の合計所得金額 | 所得控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超 950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超 1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
※配偶者特別控除についても、納税者本人の合計所得金額、配偶者の合計所得金額に応じて、一定の額を控除することができます。
ひとり親控除
納税者がひとり親(男女問わず)である場合には、35万円の所得控除を受けることができます。
適用要件の一つに、納税者本人の「合計所得金額が500万円以下であること」とあります。
寡婦控除
納税者が寡婦(ひとり親に該当しない女性)である場合には、27万円の所得控除を受けることができます。
適用要件の一つに、納税者本人の「合計所得金額が500万円以下であること」とあります。
勤労学生控除
納税者が勤労学生である場合には、27万円の所得控除を受けることができます。
適用要件の一つに、納税者本人の「合計所得金額が75万円以下であること」とあります。
退職所得等がある場合の公的年金等控除額
公的年金等(雑所得)がある場合には、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。
公的年金等控除額については、納税者本人の「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額」によって、まず大枠3つに区分されます。
・1,000万円以下
・1,000万円超~2,000万円以下
・2,000万円超
したがって、その合計所得金額によっては、公的年金等控除額が減額するので、注意が必要です。
2023.11.20 税のしるべ
2023年11月20日の「税のしるべ」に、興味深い記事が載っていました。
「検査した半数超で退職所得含めず確定申告」
会計検査院が国税庁から源泉徴収票データや所得税申告データの提出を受ける等して、法人の役員等のうち令和2年分~3年分の退職所得のある一定の者(500万円以上の支払いを受けた者)を選定し、データを検査したところ、検査したデータ32,843人のうち23,750人が所得税申告に退職所得を含めずに申告していたことが確認されたそうです。
70%以上も誤りがあったことになりますが、会計事務所としてはこのようなミスが起こらないよう、気を付けていきたいと改めて思いました。