こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。
今回は、以前記事にした「領収書をもらい忘れた場合は?」のインボイス版のお話です。
消費税課税事業者にとっては、今後領収書をもらい忘れた場合は、不利になる可能性大です。
消費税の仕組みについては、下記の記事をご参照ください。
原則
消費税課税事業者(原則課税)の場合、売上消費税から仕入消費税を差し引いで残額を納税しますが、2023年10月から始まるインボイス制度では、売り手の登録番号が記載されている適格請求書(現在の請求書や領収書、レシート等のこと)がなければ、仕入消費税として計算できなくなります。
例えば、売上税込550円で、仕入税込330円の場合、現行では、
50△30=20(納税額)
と計算しますが、インボイス制度が始まった後に適格請求書の交付を受けなかった場合には、
50△0=50(納税額)
と計算することになります。
上記のように、領収書やレシートをもらい忘れた場合、今後の消費税計算(原則課税)においてはかなり不利になります。
領収書やレシートをもらい忘れた場合に「出金伝票」で対応する方法がありますが、その方法も使用できなくなります。
適格請求書の交付が免除される取引
原則として、適格請求書がなければその取引について消費税計算を行うことができませんが、自動販売機など売り手側が適格請求書を交付することが難しい取引については、交付義務が免除されます。
したがって、買い手側としては、適格請求書の交付を受けなくても仕入消費税として計算することができます。
この場合、出金伝票を代用することにより、記録を残しておけばOKと言えます。
国税庁の『消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A』では、下記のように記載されています。
→https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm
【適格請求書の交付義務が免除される取引(問32)】
①3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送(以下「公共交通機関特例」といいます。)
②出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
③生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
④3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等(以下「自動販売機特例」といいます。)
⑤郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
【仕入税額控除の要件(問68)】
①公共交通機関特例の対象として適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
②適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。)
③古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
④質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の取得
⑤宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
⑥適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
⑦適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
⑧適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
⑨従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)
根拠条文
<売り手側>
(適格請求書発行事業者の義務)
消費税法第五十七条の四
適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この条において同じ。)を行つた場合(第四条第五項の規定により資産の譲渡とみなされる場合、第十七条第一項又は第二項本文の規定により資産の譲渡等を行つたものとされる場合その他政令で定める場合を除く。)において、当該課税資産の譲渡等を受ける他の事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。以下この条において同じ。)から次に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類(以下この条から第五十七条の六までにおいて「適格請求書」という。)の交付を求められたときは、当該課税資産の譲渡等に係る適格請求書を当該他の事業者に交付しなければならない。ただし、当該適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な課税資産の譲渡等として政令で定めるものを行う場合は、この限りでない。(適格請求書の交付を免除する課税資産の譲渡等の範囲等)
消費税法施行令第七十条の九
法第五十七条の四第一項に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 法第十八条第一項の規定により、資産の譲渡等(前受金に係るものに限る。)に係る対価の額を収入した日に当該資産の譲渡等を行つたものとされる場合
二 法第六十条第二項の規定により、資産の譲渡等の対価を収納すべき会計年度の末日に当該資産の譲渡等を行つたものとされる場合(当該資産の譲渡等を同日の翌日以後に行う場合に限る。)
三 第七十四条第二項の規定により、資産の譲渡等の対価を収納すべき課税期間の末日に当該資産の譲渡等を行つたものとされる場合(当該資産の譲渡等を同日の翌日以後に行う場合に限る。)
2 法第五十七条の四第一項ただし書に規定する政令で定める課税資産の譲渡等は、次に掲げる課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。以下この項、第七十条の十二及び第七十条の十四第五項において同じ。)とする。
一 次に掲げる役務の提供のうち当該役務の提供に係る税込価額(法第五十七条の四第一項第四号に規定する税込価額をいう。)が三万円未満のもの
イ 海上運送法第二条第五項(定義)に規定する一般旅客定期航路事業、同法第十九条の六の二(運賃及び料金等の公示)に規定する人の運送をする貨物定期航路事業及び同法第二十条第二項(不定期航路事業の届出)に規定する人の運送をする不定期航路事業(乗合旅客の運送をするものに限る。)として行う旅客の運送
ロ 道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第三条第一号イ(種類)に規定する一般乗合旅客自動車運送事業として行う旅客の運送
ハ 鉄道事業法第二条第二項(定義)に規定する第一種鉄道事業又は同条第三項に規定する第二種鉄道事業として行う旅客の運送
ニ 軌道法第三条(事業の特許)に規定する運輸事業として行う旅客の運送
二 卸売市場(卸売市場法(昭和四十六年法律第三十五号)第四条第一項(中央卸売市場の認定)又は第十三条第一項(地方卸売市場の認定)の認定を受けた卸売市場その他これらに準ずるものとして農林水産大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たす卸売市場(農林水産大臣の確認を受けたものに限る。)をいう。イにおいて同じ。)においてせり売又は入札の方法により行われる課税資産の譲渡等その他の媒介又は取次ぎに係る業務を行う者を介して行われる課税資産の譲渡等のうち次に掲げるもの
イ 卸売市場において、卸売市場法第二条第四項(定義)に規定する卸売業者が同項に規定する卸売をする業務(出荷者から卸売のための販売の委託を受けて行うものに限る。)として行う生鮮食料品等(同条第一項に規定する生鮮食料品等をいう。)の譲渡
ロ 農業協同組合法第四条(法人性)、水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第二条(組合の種類)又は森林組合法(昭和五十三年法律第三十六号)第四条第一項(事業の目的等)に規定する組合(これらの組合に準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)が、当該組合の組合員その他の構成員から販売の委託(販売条件を付さず、かつ、財務省令で定める方法により販売代金の精算が行われるものに限る。)を受けて行う農林水産物の譲渡(当該農林水産物の譲渡を行う者を特定せずに行われるものに限る。)
三 前二号に掲げるもののほか、課税資産の譲渡等の対価の額が通常少額であり、かつ、当該課税資産の譲渡等が不特定かつ多数の者に対して行われるものであつて、当該課税資産の譲渡等が自動販売機により行われることその他の取引の状況から適格請求書を交付することが著しく困難な課税資産の譲渡等として財務省令で定めるもの
3 法第五十七条の四第三項ただし書に規定する政令で定める課税資産の譲渡等は、前項各号に掲げる課税資産の譲渡等とする。(適格請求書等の交付が著しく困難な課税資産の譲渡等)
消費税法施行規則第二十六条の六
令第七十条の九第二項第三号に規定する財務省令で定める課税資産の譲渡等は、次に掲げる課税資産の譲渡等とする。
一 自動販売機又は自動サービス機により行われる課税資産の譲渡等のうち当該課税資産の譲渡等に係る法第五十七条の四第一項第四号に規定する税込価額が三万円未満のもの
二 法別表第二第四号イに規定する郵便切手類のみを対価とする郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)第一条(この法律の目的)に規定する郵便の役務及び貨物の運送(同法第三十八条第一項(郵便差出箱の設置)に規定する郵便差出箱に差し出された郵便物及び貨物に係るものに限る。)
<買い手側>
(仕入れに係る消費税額の控除)
消費税法第三十条
7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。(課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の記載事項等)
消費税法施行令第四十九条
法第三十条第七項に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 課税仕入れが次に掲げる課税仕入れに該当する場合(法第三十条第七項に規定する帳簿に次に掲げる課税仕入れのいずれかに該当する旨及び当該課税仕入れの相手方の住所又は所在地(国税庁長官が指定する者に係るものを除く。)を記載している場合に限る。)
イ 他の者から受けた第七十条の九第二項第一号に掲げる課税資産の譲渡等に係る課税仕入れ
ロ 入場券その他の課税仕入れに係る書類のうち法第五十七条の四第二項各号(第二号を除く。)に掲げる事項が記載されているものが、当該課税仕入れに係る課税資産の譲渡等を受けた際に当該課税資産の譲渡等を行う適格請求書発行事業者により回収された課税仕入れ(イに掲げる課税仕入れを除く。)
ハ 課税仕入れに係る資産が次に掲げる資産のいずれかに該当する場合における当該課税仕入れ(当該資産が棚卸資産(消耗品を除く。)に該当する場合に限る。)
(1) 古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第二条第二項(定義)に規定する古物営業を営む同条第三項に規定する古物商である事業者が、他の者(適格請求書発行事業者を除く。ハにおいて同じ。)から買い受けた同条第一項に規定する古物(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)
(2) 質屋営業法(昭和二十五年法律第百五十八号)第一条第一項(定義)に規定する質屋営業を営む同条第二項に規定する質屋である事業者が、同法第十八条第一項(流質物の取得及び処分)の規定により他の者から所有権を取得した質物
(3) 宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第二条第二号(用語の定義)に規定する宅地建物取引業を営む同条第三号に規定する宅地建物取引業者である事業者が、他の者から買い受けた同条第二号に規定する建物
(4) 再生資源卸売業その他不特定かつ多数の者から再生資源等(資源の有効な利用の促進に関する法律(平成三年法律第四十八号)第二条第四項(定義)に規定する再生資源及び同条第五項に規定する再生部品をいう。)に係る課税仕入れを行う事業を営む事業者が、他の者から買い受けた当該再生資源等
ニ イからハまでに掲げるもののほか、請求書等(法第三十条第七項に規定する請求書等をいう。)の交付又は提供を受けることが困難な課税仕入れとして財務省令で定めるもの(請求書等の交付又は提供を受けることが困難な課税仕入れ)
消費税法施行規則第十五条の四
令第四十九条第一項第一号ニに規定する財務省令で定める課税仕入れは、次に掲げる課税仕入れとする。
一 他の者から受けた第二十六条の六各号に掲げる課税資産の譲渡等に係る課税仕入れ
二 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第十五号(定義)に規定する役員又は使用人(以下この号及び次号において「使用人等」という。)が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族(以下この号において「退職者等」という。)がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるために事業者がその使用人等又はその退職者等に対して支給する金品で、その旅行について通常必要であると認められる部分に係る課税仕入れ
三 事業者がその使用人等で通勤する者(以下この号において「通勤者」という。)に対して支給する所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第九条第一項第五号(非課税所得)に規定する通勤手当のうち、通勤者につき通常必要であると認められる部分に係る課税仕入れ