こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。
税務署や役所で無料相談をやっていると、相談者の方から「メガネは医療費控除になりますか?」と聞かれることがあります。
今回は、医療費控除の対象となる医療費の範囲について、簡単に解説します。
♦医療費の範囲
♦メガネ購入費用は医療費控除の対象となるのか
♦医療費控除を受ける際の添付書類
医療費の範囲
医療費とは、所得税法で「医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう。」と規定されています。
通常必要であると認められるものとして、所得税法施行令で下記の項目が列挙されています(その病状その他財務省令で定める状況に応じて、一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額)。
①医師又は歯科医師による診療又は治療
②治療又は療養に必要な医薬品の購入
③病院、診療所又は助産所へ収容されるための人的役務の提供
④あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律に規定する施術者又は柔道整復師法に規定する柔道整復師による施術
⑤保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話
⑥助産師による分べんの介助
⑦介護福祉士による社会福祉士及び介護福祉士法に規定する喀痰吸引等又は同法附則に規定する認定特定行為業務従事者による同項に規定する特定行為
さらに、所得税基本通達にて、「自己の日常最低限の用をたすために供される義手、義足、松葉づえ、補聴器、義歯等の購入のための費用」等が医療費に含まれる旨が示されています。
メガネが医療費の範囲に含まれるかどうかは、
・医師による診療や治療があるかどうか
・医師の治療や療養に必要な購入費用かどうか
・自己の日常最低限の用をたすために供される購入費用かどうか
このあたりが論点となります。
(医療費控除)
所得税法第七十三条
居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払つた場合において、その年中に支払つた当該医療費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額が二百万円を超える場合には、二百万円)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
2 前項に規定する医療費とは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう。
3 第一項の規定による控除は、医療費控除という。(医療費の範囲)
所得税法施行令第二百七条
法第七十三条第二項(医療費の範囲)に規定する政令で定める対価は、次に掲げるものの対価のうち、その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする。
一 医師又は歯科医師による診療又は治療
二 治療又は療養に必要な医薬品の購入
三 病院、診療所(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)又は助産所へ収容されるための人的役務の提供
四 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第三条の二(名簿)に規定する施術者(同法第十二条の二第一項(医業類似行為を業とすることができる者)の規定に該当する者を含む。)又は柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第二条第一項(定義)に規定する柔道整復師による施術
五 保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話
六 助産師による分べんの介助
七 介護福祉士による社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年法律第三十号)第二条第二項(定義)に規定する喀痰吸引等又は同法附則第三条第一項(認定特定行為業務従事者に係る特例)に規定する認定特定行為業務従事者による同項に規定する特定行為(控除の対象となる医療費の範囲)
所得税基本通達73-3
次に掲げるもののように、医師、歯科医師、令第207条第4号《医療費の範囲》に規定する施術者又は同条第6号に規定する助産師(以下この項においてこれらを「医師等」という。)による診療、治療、施術又は分べんの介助(以下この項においてこれらを「診療等」という。)を受けるため直接必要な費用は、医療費に含まれるものとする。(平11課所4-25、平14課個2-22、課資3-5、課法8-10、課審3-197、平19課個2-11、課資3-1、課法9-5、課審4-26改正)
(1) 医師等による診療等を受けるための通院費若しくは医師等の送迎費、入院若しくは入所の対価として支払う部屋代、食事代等の費用又は医療用器具等の購入、賃借若しくは使用のための費用で、通常必要なもの
(2) 自己の日常最低限の用をたすために供される義手、義足、松葉づえ、補聴器、義歯等の購入のための費用
(3) 身体障害者福祉法第38条《費用の徴収》、知的障害者福祉法第27条《費用の徴収》若しくは児童福祉法第56条《費用の徴収》又はこれらに類する法律の規定により都道府県知事又は市町村長に納付する費用のうち、医師等による診療等の費用に相当するもの並びに(1)及び(2)の費用に相当するもの
メガネ購入費用は医療費控除の対象になるのか
メガネの購入費用については、国税庁HPの「質疑応答事例」に問答が記載されています。
医師の治療を受けるため直接必要なメガネの購入費用は、医師等の治療等を受けるため直接必要なものであれば医療費控除の対象となり、医師の治療を受けるため直接必要なメガネの購入費用としては、下記のような例示が挙げられています。
・視機能が未発達の子供の治療を行っている医師が視力の発育を促すためにメガネの使用を指示した場合において、その指示に基づいて購入するメガネの購入費用
・白内障の患者が術後の創口の保護と創口が治癒するまでの視機能回復のために一定期間装用する眼鏡の購入費用
したがって、メガネの購入費用で医療費控除の対象となるものは、医師による治療を必要とする症状を有し、かつ、医師による治療が現に行われていることが必要であるため、たとえ日常最低限の用をたすために必要であっても一般的な近視等の矯正のためのものは医療費控除の対象とはなりません。
なお、メガネフレームについては、チタンなどメガネフレームの材料として一般的に使用されているものであれば、特別に高価なものを除き、医療費控除の対象となります。
医師による治療のため直接必要な眼鏡の購入費用
【照会要旨】
白内障の患者が視機能回復のために購入した眼鏡の購入費用は、医療費控除の対象となりますか。【回答要旨】
医師の治療を受けるため直接必要なものであれば、眼鏡の購入費用も、医療費控除の対象となります。
眼鏡の購入費用は、一般的な近視や遠視の矯正のためのものは医療費控除の対象とはなりませんが、医師等の治療等を受けるため直接必要なものであれば、医療費控除の対象となります(所得税基本通達73-3)。この場合の医師の治療を受けるため直接必要な眼鏡の購入費用としては、例えば、視機能が未発達の子供の治療を行っている医師が、当該子供の視力の発育を促すために眼鏡の使用を指示した場合において、当該指示に基づいて購入する眼鏡の購入費用や、白内障の患者が、術後の創口の保護と創口が治癒するまでの視機能回復のために一定期間装用する眼鏡の購入費用のようなものがあります。
これらの例示からわかるように、眼鏡の購入費用で医療費控除の対象となるものは、医師による治療を必要とする症状を有し、かつ、医師による治療が現に行われていることが必要です。
なお、医師による治療を必要とする症状を有するかどうかは、医学の専門家以外の者には判定が難しく、また、現に医師による治療が行われているかどうかをどのような方法で証明(確認)するかといったような問題もあることから、厚生労働省では、社団法人日本眼科医会に対して、次のように指導しています。①医師による治療を必要とする症状は、次に掲げる疾病のうち一定の症状に限られるものであること。
弱視、斜視、白内障、緑内障、難治性疾患(調節異常、不等像性眼精疲労、変性近視、網膜色素変性症、視神経炎、網脈絡膜炎、角膜炎、角膜外傷、虹彩炎)②医師による治療を必要とする症状を有すること及び現に医師による治療を行っていることを証明するため、所定の処方せんに、医師が、上記①に掲げる疾病名と、治療を必要とする症状を記載すること。
なお、この場合の眼鏡のフレームについては、プラスティックやチタンなど眼鏡のフレームの材料として一般的に使用されている材料を使用したものであれば、特別に高価な材料を使用したものや特別の装飾を施したものなど奢侈にわたるものを除き、その購入費用も、医療費控除の対象となります。【関係法令通達】
所得税基本通達73-3注記
令和3年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。国税庁ホームページ「質疑応答事例(所得税)」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/53.htm
メガネ購入費用の医療費控除を受けるための添付書類
メガネの購入費用について医療費控除を受けるためには、下記のような資料が必要となります。
・メガネの領収書
・メガネを必要とする疾病名や治療を必要とする症状が記載された医師の証明書
医療費控除の適用を受ける場合において、「医療費控除の明細書」を付ければ領収書の提出は不要となっていますが、メガネの場合は医師の証明書の提出が必要となりますので、ご注意ください。