こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。
今回は、役員の事前確定届出給与についてのお話です。
定期同額給与にしろ、事前確定届出給与にしろ、利益調整ができないように最初に枠を決めて金額設定するという基本的な考え方はどちらも同じですが、事前確定届出給与については、場合によっては利益調整に使用できることがあります。
どのような場合に利益調整に使用できるのか、簡単に解説します。
♦事前確定届出給与とは
♦事前確定届出給与は利益調整に使える?
事前確定届出給与とは
事前確定届出給与とは、一定の期間内に所轄税務署長に届出をすることで、定期同額給与の他に役員賞与を出すことができるものをいいます。
一定の期間内(提出期限)とは、下記のうちいずれか早い日となります。
①株主総会等から1か月を経過する日
②会計期間開始の日から4か月を経過する日
(役員給与の損金不算入)
所得税法第三十四条
内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの、使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの及び第三項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(次号イにおいて「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(同号において「定期同額給与」という。)
二 その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式(出資を含む。以下この項及び第五項において同じ。)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの(当該株式若しくは当該特定譲渡制限付株式に係る第五十四条第一項に規定する承継譲渡制限付株式又は当該新株予約権若しくは当該特定新株予約権に係る第五十四条の二第一項に規定する承継新株予約権による給与を含むものとし、次に掲げる場合に該当する場合にはそれぞれ次に定める要件を満たすものに限る。)
イ その給与が定期給与を支給しない役員に対して支給する給与(同族会社に該当しない内国法人が支給する給与で金銭によるものに限る。)以外の給与(株式又は新株予約権による給与で、将来の役務の提供に係るものとして政令で定めるものを除く。)である場合 政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしていること。
ロ 株式を交付する場合 当該株式が市場価格のある株式又は市場価格のある株式と交換される株式(当該内国法人又は関係法人が発行したものに限る。次号において「適格株式」という。)であること。
ハ 新株予約権を交付する場合 当該新株予約権がその行使により市場価格のある株式が交付される新株予約権(当該内国法人又は関係法人が発行したものに限る。次号において「適格新株予約権」という。)であること。(定期同額給与の範囲等)
法人税法施行令第六十九条
法第三十四条第一項第一号(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める給与は、次に掲げる給与とする。
4 法第三十四条第一項第二号イに規定する届出は、第一号に掲げる日(第二号に規定する臨時改定事由が生じた場合における同号の役員の職務についてした同号の定めの内容に関する届出については、次に掲げる日のうちいずれか遅い日。第七項において「届出期限」という。)までに、財務省令で定める事項を記載した書類をもつてしなければならない。
一 株主総会等の決議により法第三十四条第一項第二号の役員の職務につき同号の定めをした場合における当該決議をした日(同日がその職務の執行の開始の日後である場合にあつては、当該開始の日)から一月を経過する日(同日が当該開始の日の属する会計期間開始の日から四月(第一項第一号イ(1)に掲げる法人にあつては五月とし、同号イ(2)に掲げる法人にあつてはその指定に係る月数に三を加えた月数とする。)を経過する日(以下この号において「四月経過日等」という。)後である場合には当該四月経過日等とし、新たに設立した内国法人がその役員のその設立の時に開始する職務につき同条第一項第二号の定めをした場合にはその設立の日以後二月を経過する日とする。)
二 臨時改定事由(当該臨時改定事由により当該臨時改定事由に係る役員の職務につき法第三十四条第一項第二号の定めをした場合(当該役員の当該臨時改定事由が生ずる直前の職務につき同号の定めがあつた場合を除く。)における当該臨時改定事由に限る。)が生じた日から一月を経過する日
事前確定届出給与の損金算入
事前確定届出給与をその事業年度の損金の額に算入するためには、所轄税務署長へ届け出た支給金額や支給時期通りに支給する必要があります。
したがって、届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合や、届け出た支給時期と実際の支給時期が異なる場合は、事前確定届出給与の該当しないこととなります。
(事前確定届出給与の意義)
法人税基本通達9-2-14
法第34条第1項第2号《事前確定届出給与》に掲げる給与は、所定の時期に確定した額の金銭等(確定した額の金銭又は確定した数の株式若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る法第54 条第1項《譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例》に規定する特定譲渡制限付株式若しくは法第54 条の2第1項《新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等》に規定する特定新株予約権をいう。)を交付する旨の定めに基づいて支給される給与をいうのであるから、例えば、同号の規定に基づき納税地の所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合にはこれに該当しないこととなり、原則として、その支給額の全額が損金不算入となることに留意する。(平19年課法2-3「二十二」により追加、平29年課法2-17「十二」により改正)
事前確定届出給与が未支給の場合
全額未支給の場合
事前確定届出給与は、届け出た支給金額や支給時期と異なる場合には、支給額はすべて損金不算入となります。
ただし、全く支給せず未払計上もしない場合、支給金額がゼロであるため、課税所得への影響は出ないことになります。
逆に、支給時期を決算月に設定しておけば、業績が良ければ届出通りに支給し、業績が悪ければ支給しないという選択をすることで、利益調整が可能であるといえます。
辞退届受理・取締役会等決議
未支給とする場合、事前確定届出給与の受領辞退という形を取ることになると思います。
ただし、源泉所得税のことを考慮すると、支給時期よりも前に役員から辞退届を受理し、取締役会等で決議を行うことが必要となります。
支給期日到来後になってしまうと、結果的に源泉徴収を行う必要があるため、注意が必要です。
(給与等の受領を辞退した場合)
所得税基本通達28-10
給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。
(注) 既に支給期が到来した給与等の受領を辞退した場合については、181~223共-2及び181~223共-3参照
特別な事情の有無
大口の得意先の倒産など業績に多大なる影響を及ぼす場合、事前確定届出給与を支給できなかったり定期同額給与を減額せざるを得ない状況に陥ることはあるかもしれません。
しかし、このような事情が無くても、支給しないことは可能であると考えます。
ただし、事前確定届出給与の趣旨とは反するため、特別な事情がなく未支給が繰り返されることは、あまり好ましくないかもしれません。