こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。
今回は、次世代住宅ポイントの住宅ローン控除の計算について、ご質問を頂戴しておりましたので、それについて私の考えを述べたいと思います。
論点は、住宅の取得対価の額から差し引く金額について、次世代住宅ポイントの「交換分」か「付与分」かという点です。
ご質問は、「交換分ではないか?」という内容でした。
基本的な取扱いについては、過去の記事をご参照ください。
→すまい給付金と次世代住宅ポイントは「一時所得」になる!?~確定申告の方法とローン控除への影響~
※ご質問を頂いた方、すぐにお返事できず申し訳ありませんでした。
また、こちらの記事をもってお返事とさせていただきますことをご了承ください。
次世代住宅ポイントの見解
次世代住宅ポイント(以下、「運営元」といいます。)の「よくあるご質問(制度全般 6確定申告)」によると、下記のような記載がされています。
ポイント付与された住宅について、住宅ローン減税等税額控除適用を受ける場合に、住宅取得対価等の額から交換に充てたポイント額を差し引いて控除額を計算する必要があります。
この考え方によると、例えば、
・令和元年中に35万ポイントの付与
・令和元年中に5万ポイントを交換
だとすると、取得対価の額から5万円を引いた額をもとに、住宅ローン控除の計算を行うことになります。
次世代住宅ポイントの見解の問題点
運営元の見解は、使った分だけ差し引くという意味では確かに合理的かもしれませんが、税務会計の見地からは、取得対価の額が変動することは通常あり得ません。
例えば、過去の申告時に取得対価の額に誤りがあり、やむを得ず取得対価の額を変更する場合には、過去の申告をやり直して取得対価を訂正することはあります。
運営元の考え方によると、過去の申告をやり直さなければならないケースが生じます。
つまり、
令和元年中に5万ポイントを交換
(~令和元年12月31日)
↓
令和元年分の確定申告で取得対価の額から5万円を差し引いて申告
(申告期限:令和2年3月16日まで)
↓
令和2年中に30万ポイントを交換
(ポイント使用期限:令和2年6月30日まで)
↓
取得対価の額が変わるため、令和元年分の確定申告を5万円から35万円の差し引きへ修正
(なるべく早く)
↓
令和2年分の年末調整までに修正後のローン控除申告書(※)が税務署から届かなかったときは、年末調整でローン控除を行わず自分で確定申告を行う
(※)正式には「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書(年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書)」といいます。
初年度に確定申告を行うと、2年目以降は年末調整でローン控除を行るよう税務署からこの書類が届きます。
この書類には取得対価の額が印字されていますので、数字が変わる場合には、基本的には訂正後の書類を発行してもらうことになると思います。
↓
3年目以降は新しいローン控除申告書により年末調整で住宅ローン控除を行う
おそらく、このような手順を踏むことになると思います。
過去の取扱い
平成26年3月末で終了した制度に、「住宅エコポイント」という次世代住宅ポイントに似た制度がありました。
この時の取扱いについて、少し検証していきたいと思います。
ちなみに、住宅ローン控除の計算方法は、
住宅ローン年末残高or住宅の取得対価の額(小さい方)×1%
です。
租税特別措置法通達逐条解説
通達逐条解説は、国税庁の職員の方が執筆しており、通達の取扱いについての解説集となっています。
(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)
租税特別措置法施行令第二十六条
5 法第四十一条第一項の個人の住宅借入金等(同項に規定する住宅借入金等をいう。以下この条及び第二十六条の三において同じ。)の金額の合計額が、同項に規定する住宅の取得等(当該住宅借入金等に当該住宅の取得等とともにする当該住宅の取得等に係る家屋の敷地の用に供される土地等の取得に係る住宅借入金等が含まれる場合には、当該土地等の取得を含む。以下この項において同じ。)に係る対価の額又は費用の額(当該住宅の取得等に関し、補助金等(国又は地方公共団体から交付される補助金又は給付金その他これらに準ずるものをいう。以下この項及び第二十三項において同じ。)の交付を受ける場合又は住宅取得等資金(法第七十条の二第二項第五号又は第七十条の三第三項第五号に規定する住宅取得等資金をいう。以下この項及び第二十三項において同じ。)の贈与を受けた場合には、当該住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額から当該補助金等の額又は当該住宅取得等資金の額(法第七十条の二第一項の規定又は相続税法第二十一条の十二第一項の規定の適用を受けた部分の金額に限る。第二十三項において同じ。)を控除した金額。以下この項において同じ。)を超える場合における法第四十一条第一項の規定の適用については、当該住宅借入金等の金額の合計額は、当該対価の額又は費用の額に達するまでの金額とする。
(補助金等)
租税特別措置法通達41-26の2 措置法第41条第18項並びに措置法令第26条第5項及び第23項に規定する補助金等(以下41-26の4までにおいて「補助金等」という。)は、次によるものとする。(平23課個2-35、課審4-47追加、平24課個2-34、課審5-28、平25課個2-18、課審5-34、令元課個2-24、課法11-4、課審5-13改正)
(1) 国又は地方公共団体から直接交付される補助金等のほか、国又は地方公共団体から補助金等の交付事務の委託を受けた法人を通じて交付されるものも含まれる。
(2) 補助金等は、補助金又は給付金等の名称にかかわらず、住宅の取得等と相当の因果関係のあるものをいうものとする。この場合、住宅借入金等又は認定住宅借入金等の利子の支払に充てるために交付されるいわゆる利子補給金はこれに該当しない。
(注)
1 補助金等には、金銭で交付されるもののほか、金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって交付されるものも含まれる。
2 補助金等は、法第42条若しくは第43条に規定する国庫補助金等に該当するか否かを問わないこと又はこれらの規定を適用するか否かを問わないことに留意する。
3 41-24から41-26までにより家屋の取得対価の額等に含まれるものの取得等に関し交付される補助金又は給付金等も補助金等に該当する。
上記の(1)が住宅エコポイントの取扱いに当たり、通達逐条解説では、
「住宅エコポイントは、国から交付事務の委託を受けた住宅エコポイント事務局が行っていること、また、金銭の交付ではないが商品等に交換されるポイントの付与であり、『金銭以外の物又は権利その他経済的な利益』であることから、住宅エコポイントについても、住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額から控除(1ポイントを1円と換算した金額)する必要がある。
【租税特別措置法通達逐条解説 537項】
と解説していることから、ポイント付与分を取得対価の額から差し引くと解されます。
また、国税庁ホームページの「第2 質疑応答(問1、問3)」においても、同様の見解となっています。
→https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/111227_2/pdf/03.pdf
このような考え方から、次世代住宅ポイントについても、「交換分」ではなく「付与分」を取得対価の額から差し引くことが妥当であると考えます。
1ポイント何円?
交換に要するポイントについて、1ポイントいくらなのか?という論点があります。
次世代住宅ポイントのホームページの「よくあるご質問(制度全般 17ポイントの返還)」にも記載がある通り、
1ポイント=1円
で換算されます。
家電量販店やアマゾンなどの売値と比較すると、対象交換商品のポイント数の方が高いものが多々ありますが、いくつかの大手設備会社のホームページを見ても1ポイント=1円と明記していることから、議論の余地はなさそうです。
したがって、ポイント付与額をそのまま「円」として取得対価の額から差し引いて計算することが妥当であると考えます。
あとがき
次世代住宅ポイントは新しい制度であり、国税庁のホームページでも「次世代住宅ポイント」という文言でのタックスアンサーやQ&Aはまだ見当たりません。
私がもし住宅ローン控除を行うなら、いままで述べてきた方法で行いますが、もしかしたら今後異なる取扱いが発表されるかもしれません。
こればかりは分かりませんが、少なくとも過去の制度と同様の取扱いで行うことが妥当だと思います。
ただ、長々と述べてきましたが、一般的には借入額の方が小さいので、借入残×1%で住宅ローン控除を計算するのであれば、取得対価の額から差し引く額がいくらであろうと、住宅ローン控除の金額に影響はありませんので、その方はあまり神経質にならなくても良いかもしれません。
※これはあくまでも私見です。確定申告をされる際は、ご自身の責任でお願いいたします。