フリーレント期間がある場合の会計処理方法について

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、テナント賃料のフリーレントについてのお話です。

テナントを借りる際、よく「○か月無料」となっていて、一定期間賃料が無料になる契約があります。

このように入居者を募集する目的で一定期間の賃料を無料とする賃貸借契約を「フリーレント契約」と言います。

フリーレント契約について、借り手側の会計処理や消費税の課税仕入れについて、簡単に解説します。

フリーレントの会計処理方法

フリーレント期間がある場合の会計処理方法は、下記の2つです。

①フリーレント期間は会計処理を行わず実際の支払いが始まってから賃料を計上する方法
②賃料等の総額を契約期間で按分して毎月賃料を計上する方法

例えば、家賃165,000円(税込)の2年(24か月)契約の場合、フリーレント期間が3か月であったとすると、
・1~3か月→0円
・4~24か月→165,000円(1か月分)
を支払っていくことになります。

その場合、165,000円の支払いが始まってから賃料を計上するのか(①)、賃料総額(165,000円×21か月=3,465,000円)を契約期間である24か月で按分して賃料を計上するのか(②)、判断する必要があります。

実際の支払いが始まってから賃料を計上する方法

先ほどの「①フリーレント期間は会計処理を行わず実際の支払いが始まってから賃料を計上する方法」についての実務上の考え方は、
・法人税法→免除又は値引
・消費税法→対価の支払いがないため課税仕入に該当しない
ということになります。

消費税法についてもう少し細かく解説すると、資産の譲渡等の時期について消費税法基本通達に「契約又は慣習によりその支払を受けるべき日」と記載されており、原則としてフリーレント期間後に実際に賃料の支払いがあったときに課税仕入れとして認識します。

(賃貸借契約に基づく使用料等を対価とする資産の譲渡等の時期)
消費税法基本通達9-1-20
資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等の額(前受けに係る額を除く。)を対価とする資産の譲渡等の時期は、当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とする。ただし、当該契約について係争(使用料等の額の増減に関するものを除く。)があるためその支払を受けるべき使用料等の額が確定せず、当該課税期間においてその支払を受けていないときは、相手方が供託したかどうかにかかわらず、その係争が解決して当該使用料等の額が確定しその支払を受けることとなる日とすることができるものとする。
(注) 使用料等の額の増減に関して係争がある場合には本文の取扱いによるのであるが、この場合には、契約の内容、相手方が供託をした金額等を勘案してその使用料等の額を合理的に見積るものとする。

具体的な会計処理としては、下記のようになります。

<前提>
・賃料月額:165,000円(税込)
・契約期間:2年(24か月)
・フリーレント期間:3か月
・消費税処理:税抜処理

<1~3か月目(フリーレント期間)>
仕訳なし

<4~24か月目>
地代家賃150,000/現金預金165,000
仮払消費税15,000/

賃料等の総額を契約期間で按分する方法

先ほどの「②賃料等の総額を契約期間で按分して毎月賃料を計上する方法」についての実務上の考え方は、
法人税法→中途解約不能で賃料総額を確定できるフリーレント契約についてはフリーレント期間を含めて期間按分を行う
消費税法→所得税法又は法人税法の算入すべき時期によることができる
ということになります。

消費税法についてもう少し細かく解説すると、資産の譲渡等の時期について消費税法基本通達に「所得税又は法人税の課税所得金額の計算における総収入金額又は益金の額に算入すべき時期によることができる」と記載されており、中途解約不能で賃料総額が確定している場合には、所得税又は法人税の算入時期と同様の処理を行うことができます。

(資産の譲渡等の時期の別段の定め)
消費税法基本通達9-6-2
資産の譲渡等の時期について、所得税又は法人税の課税所得金額の計算における総収入金額又は益金の額に算入すべき時期に関し、別に定めがある場合には、それによることができるものとする。

この按分する方法については、中途解約が不能で、賃料総額(債務)が確定している必要があります。

債務確定の判断については、法人税基本通達に下記のような記載があります。
・当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること
・当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
・当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること

(債務の確定の判定)
法人税基本通達2-2-12
法第22条第3項第2号《損金の額に算入される販売費等》の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。(昭55年直法2-8「七」、平23年課法2-17「五」により改正)
(1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
(2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

具体的な会計処理としては、下記のようになります。

<前提>
・賃料月額:165,000円(税込)
・契約期間:2年(24か月)
・フリーレント期間:3か月
・消費税処理:税抜処理

<月額計算>
165,000円×(24か月-3か月)=3,465,000円
3,465,000円÷24か月=144,375円
144,375円×100/110=131,250円(税抜)

<1~3か月目>
地代家賃131,250/未払費用144,375
仮払消費税13,125/

<4~24か月目>
地代家賃131,250/現金預金165,000
仮払消費税13,125/
未払費用20,625

実務上の処理

実務上は、特に中小企業の場合には「①フリーレント期間は会計処理を行わず実際の支払いが始まってから賃料を計上する方法」で処理することがほとんどだと思います。

複雑な計算をするよりは、実際に数字が動いたときに計算する方が、やはり圧倒的にラクです。

また、平成30年6月15日の裁決では、「②賃料等の総額を契約期間で按分して毎月賃料を計上する方法」が否認される判断がされたようです。

いずれにしても、中小企業が処理する場合には、「①フリーレント期間は会計処理を行わず実際の支払いが始まってから賃料を計上する方法」で処理する方が無難であると考えます。

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