医療費控除はなぜ年末調整で計算できないのか?〜確定申告をして税金を取り戻しましょう〜

こんにちは!サラリーマン税理士のりゅうです。2020年、今年もよろしくお願いいたします!

さて、年末調整も終わり、確定申告の準備を始める方もいるのではないでしょうか?

普通にお勤めの方は、年末調整で所得税・住民税の税額が確定し、それで完了です。

ただし、医療費が多かった方や、寄附をした方(ふるさと納税でワンストップ特例を受けた方を除きます)などについては、確定申告をすることにより、税金を取り戻せる可能性があります。これは強制ではなく、もし取り戻したいなら確定申告してね(法律上「〜できる」となっています。)となっています。

また、サラリーマンの方が副業をしていて、収入から経費を引いた金額が20万円超(副業の収入が給料の場合は、副業給料の総額が20万円超)のときは、確定申告をしなければなりません。こちらは「しなければならない」です。
ちなみに、20万円超とは、20万円ピッタリならギリギリセーフ、20万1円~のことをいいます。

言い方は悪いかもしれませんが、国としては、取るものは絶対に取る、返すものは申告があれば返す、というスタンスです。

今回は、医療費控除について、なぜ年末調整で受けることができないのか簡単に説明していきます。

医療費控除の前提

まずご理解いただきたいのは、よく言われている「医療費が10万円を超えている場合に確定申告すると返ってくる可能性がある」の「返ってくる」とは、医療費が返ってくるのではなく、所得税が返ってくるという意味です。

(医療費控除)
所得税法第七十三条 居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払つた場合において、その年中に支払つた当該医療費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額が二百万円を超える場合には、二百万円)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
2 前項に規定する医療費とは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう。
3 第一項の規定による控除は、医療費控除という。
つまり、そもそも所得税が発生していない場合、例えば、
・アルバイトで所得税の天引きがない
・天引きされた所得税が年末調整で全額還付されている
・事業所得だけど赤字で所得税が発生しない
このようなときは、医療費控除を行っても返す所得税がありませんので、意味がありません。
確定申告シーズンに、税理士は税務署の無料相談に駆り出されることがあるのですが、やはり1人くらいはそのような方がいらっしゃいます。
長時間お待ちいただいたのに、この説明をするのはとても心苦しいです。

なぜ年末調整だと出来ないのか

すごくザックリいうと、確定申告をしないと算出されない金額の5%と10万円を比較して、低い方を医療費の合計額から差し引いて、差額を医療費控除として控除する仕組みになっているからです。

これから、もう少し具体的に説明していきます。

確定申告をしないと算出されない金額とは、税法用語で「総所得金額等(課税標準額)」のことを指します。

総所得金額等はどのように計算されるかというと、10種類の所得をそれぞれ計算した合計額から、繰越控除の額を差し引いて計算します。

繰越控除とは、例えば、商売をしていて赤字の年があった場合、その赤字を翌年以降(3年間)の黒字と相殺できるという仕組みがあります。他にも、いろいろな種類の繰越控除がありますが、ここでは割愛します。

つまり、各種所得の有無、各種所得の計算、繰越控除の有無、繰越控除の計算、課税標準の計算、これらは年末調整では計算することができない(年末調整は、あくまでも給与取得者のための制度であり、給与所得しか考慮されません)ので、確定申告することになります。

そして、確定申告をするときになって初めて、総所得金額等×5%と、医療費10万円の比較を行うことが可能となります。

支払った医療費合計額(保険金など補填され金額を除く)△10万円or総所得金額等の5%(小さい方)=医療費控除額

給料しかないし、繰越控除もないから、年末調整で医療費控除やってよ!と思う方もいると思いますが、他に所得が無いことと、繰越控除が無いことを確定申告で明らかにし、その上で医療費10万円と比較する仕組みとなっていますので、結局は確定申告でしか医療費控除はできないのです。

あとがき

医療費控除の仕組みをザックリと説明してみましたが、伝わったでしょうか?

寄附金控除の計算(ふるさと納税のワンストップは除きます)でも総所得金額等を使いますので、寄附金控除を受けようとする場合も確定申告が必要となります。

通常、確定申告は翌年2/16〜3/15(2020年は3/15が日曜日なので3/16)で行いますが、還付を受ける場合の申告は翌年1/1から行うことができますので、是非お早めのご準備を!

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