10万円以上20万円未満の資産は一括償却を活用しましょう

こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。

今回は、10万円以上20万円未満の固定資産を購入した場合の、会計処理のお話です。

取得価額が30万円未満であれば、一定の要件ものと全額を少額減価償却資産として経費に出来ますが、
一括償却資産(10万円以上20万円未満)として計上している方はあまり多くないような気がします。

一括償却資産は購入した期に全額を経費に出来るわけではありませんが、
場合によってはメリットがありますので、簡単に解説していきます。

【この記事で分かること】
・一括償却資産の概要(法人、フリーランス)
・一括償却資産の注意点
・一括償却資産のメリット、デメリット
・一括償却資産を選択するケース

一括償却資産の概要

概要

一括償却資産とは、取得価額が10万円以上20万円未満の資産を購入した場合に、
3年間で均等償却
することを選択した資産のことをいいます。
この償却方法は、青色や規模を問わず、どんな事業主さんでも採用することができます。
一括償却資産には期中取得の月数按分という概念は無く、一括償却資産とすることとした資産の合計額を、一括して3年で均等償却します。
例えば、
・10月にパソコン18万円
・11月にプリンター10万円
を購入した場合、
合計の28万円を3年で均等償却していきます。
そうすると、
1年目→93,333円
2年目→93,333円
3年目→93,333円+1円(端数)
というように償却することになります。
繰り返しになりますが、同じ期に購入していれば、その合計額を均等償却しますので、期中取得の月数按分を行うことはありません。

法人の計算方法

償却計算は、
取得価額×事業年度の月数/36か月
となります。
3年間で均等償却であれば「1/3」でも良いんじゃないかと思うかもしれませんが、
法人の場合、設立初年度など事業年度が12か月に満たないケースがあり、単純に1/3とはなりません。
たとえば、設立初年度が10ヶ月であれば、
1年目→10か月/36か月
2年目→12か月/36か月
3年目→12か月/36か月
4年目→2か月/36か月+端数
という計算を行い、最終的に取得価額をゼロにします。
(一括償却資産の損金算入)
法人税法施行令第百三十三条の二
内国法人が各事業年度において減価償却資産で取得価額が二十万円未満であるもの…(途中省略)…を事業の用に供した場合において、その内国法人がその全部又は特定の一部を一括したもの…(途中省略)…の取得価額…(途中省略)…の合計額(以下この項及び第十二項において「一括償却対象額」という。)を当該事業年度以後の各事業年度の費用の額又は損失の額とする方法を選定したときは、当該一括償却資産につき当該事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該一括償却資産の全部又は一部につき損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を三十六で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額…(途中省略)…に達するまでの金額とする。

フリーランス(個人事業主)の計算方法

償却計算は、
取得価額×1/3
となります。
フリーランスの場合は、単純に1/3となります。
数円の端数が生じた場合は、3年目で調整します。
(一括償却資産の必要経費算入)
所得税法施行令第百三十九条
居住者が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供した減価償却資産で取得価額が二十万円未満であるもの…(途中省略)…については、その居住者が当該減価償却資産の全部又は特定の一部を一括し、その一括した減価償却資産(以下この条において「一括償却資産」という。)の取得価額の合計額をその業務の用に供した年以後三年間の各年の費用の額とする方法を選択したときは、第四款(減価償却資産の償却)の規定にかかわらず、当該一括償却資産につき当該各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、当該一括償却資産の取得価額の合計額(以下この条において「一括償却対象額」という。)を三で除して計算した金額とする。

一括償却資産の注意点

金額判定

一括償却資産は、10万円以上20万円未満という規定となっていますが、その金額判定は、会計処理が「税込経理」なのか、「税抜経理」なのかによって異なります。

「税込経理」と「税抜経理」は、消費税の計算を行う上で、重要となってくる経理方法の種類です。

「税込経理」とは、例えば税込209,000円のものを買った場合、そのまま209,000円で会計処理する方法です。

{税抜経理」とは、例えば税込209,000円のものを買った場合、税抜190,000円として会計処理する方法です。

「税込経理」を採用している場合、金額判定は税込209,000円で判定しますが、「税抜経理」を採用している場合は税抜190,000円で判定します。

したがって、税込209,000円のものは、「税抜経理」を採用している場合にしか一括償却資産としての処理を行うことができません。

ただし、消費税の免税事業者は「税込経理」しか採用できませんので、必然的に税込金額で判定することになります。

金額判定については、こちらの記事も参考にしてみてください。

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計算単位

一括償却資産を選択した場合、選択した一括償却資産をまとめて計算します。

個々の資産ごとの把握をする必要はありません。

したがって、先ほどのパソコンとプリンターの例でいうと、合計額28万円で償却を行います。

資産ごとに選択できる

通常の減価償却資産、一括償却資産(10万円以上20万円未満)少額減価償却資産(10万円以上30万円未満)のどれを選択するかは、資産ごとに決めることができます。

例えば、
・パソコン18万円:一括償却資産(10万円以上20万円未満)
・プリンター10万円:一括償却資産(10万円以上20万円未満)
・エアコン15万円:少額減価償却資産(10万円以上30万円未満)
・ソファー12万円:通常の減価償却資産
というように、個々の資産で選択することができます。

譲渡又は除却等をした場合

一括償却資産は、厳密に言うと、減価償却ではなく、
「取得価額の合計額を3年で損金算入(経費計上)する」
という規定です。
つまり、途中で譲渡又は除却等した場合でも、一括償却の計算は続きます。
もっと簡単に言ってしまえば、
売ったとか捨てたとか関係なく、とにかく3年で均等償却する
というのが、一括償却資産の特殊な考え方です。
例えば、先ほどのパソコンとプリンターでいうと、2年目にパソコンを売却したとしても、
1年目→93,333円
2年目→93,333円
3年目→93,333円+1円(端数)
という償却は行われます。
仮に、2年目にパソコンが5万円で売れたとすると、
【2年目の仕訳】
(減価償却費)93,333 / (一括償却資産)93,333
(現 預 金)50,000 / (固定資産売却益)50,000
【3年目の仕訳】
(減価償却費)93,334 / (一括償却資産)93,334
という仕訳が成立します。

中古資産の場合

中古資産を購入した場合、その資産の耐用年数を過ぎているもの等については、最短2年で減価償却できます。

「最短」2年となっているのは、通常の減価償却の場合、期の途中で取得したときは月数按分をしなければならないからです。

したがって、一括償却(3年)を行うか、通常の減価償却(最短2年)を行うか、判断する必要があります。

一括償却資産のメリット・デメリット

メリット

白色申告者でも使える

一括償却資産の償却方法は、白色申告者を含め全ての事業主が使える制度で、届出の必要もありません。

また、少額減価償却資産のように金額の制限もありません。

ややこしい計算がない

一括償却資産の償却方法は、月数按分がなく、基本的には単純に3で割って計上すれば良いので、簡単に計算することができます。

償却資産税の対象にならない

一括償却資産の最大のメリットは、償却資産税の対象にならないことです。

償却資産税とは、固定資産税の一種で、事業に使用する資産(一定のものを除きます)の合計が150万円以上のときにかかってくる税金のことです。

通常の減価償却資産や少額減価償却資産(10万円以上30万円未満)については、償却資産税の対象となりますが、

一括償却資産(10万円以上20万円未満)については、この償却資産税の対象から外れます。

ちなみに、償却資産税の対象外のものは、下記のようなものがあります。

・一括償却資産
・土地、建物(通常の固定資産税の対象)
・無形固定資産(権利やソフトウェア)
・自動車(自動車税、軽自動車税の課税対象となる)
・繰延資産

償却資産税については、下記の東京都のページをご参照ください。

デメリット

デメリットとしては、経費計上のことだけを考えると、一発で落とせる少額減価償却資産(10万円以上30万円未満)のほうが節税効果がある可能性があります。

また、1年目や2年目に除却した場合、除却損は計上できません。
なぜなら、売った捨てたに関係なく、3年間で均等償却していく方法だからです。

一括償却資産を選択するケース

購入した期にどんどん経費を計上したいのであれば、圧倒的に少額減価償却資産(10万円以上30万円未満)を選択した方が良いかもしれません。

したがって、青色申告のフリーランスや、青色申告法人である中小企業者等の場合は、あまり活用するケースは無いかもしれません。

結論として、一括償却資産の処理がおすすめな事業者は、
白色申告者
中小企業者等ではない法人(会社規模が大きくて少額減価償却を適用できない法人)
一発で落としても3年で落としても毎期の税率が変わらず、償却資産税を払いたくない事業者
あたりになると思います。

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