こんにちは!
サラリーマン税理士のりゅうです。
今回は、国税庁の『国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ』のマスクを無償提供した場合の取扱いについてです。
実際、私のお客様でもマスクの寄付をした会社がありましたので、この内容について私見を含めて解説します。
国税庁の取扱い
国税庁の『国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ』では、下記のような取扱いを公表しています。
問 3.《企業がマスクを取引先等に無償提供した場合の取扱い》 〔4月 13 日追加〕
当社は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の取組みとして、関連する子会社や下請け業者などの取引先に対して、マスクや消毒液を無償で提供する予定です。
今回の措置は、今般、マスク需要が急激に増加し、取引先等において調達が困難となっている現状を踏まえ、当社の関連業務に従事する者や多数のお客様と接する機会の多い業者に使用させることを条件にして、無償で提供を行うこととしたものです。
この取組みは、感染症の流行が終息するまでの期間に限定して行うものですが、このようなマスク等の提供に要する費用は、法人税の取扱上、寄附金以外の費用に該当するでしょうか。〇 貴社が行うマスク等の無償提供が、新型コロナウイルス感染症に関する対応として、緊急、かつ、感染症の流行が終息するまでの間に限って行われるものであり、次の条件を満たすものであれば、貴社の事業遂行上、必要な経費と考えられますので、その提供に要する費用(マスク等の購入費用、送料等)の額は、寄附金以外の費用に該当します。
① 提供を行う取引先等において、マスクの不足が生じていることにより業務の遂行上、著しい支障が生じている、又は今後生じるおそれがあること
② その取引先等が業務を維持できない場合には、貴社において、操業が維持できない、営業に支障が生じる、仕入れ等が困難になるといった、貴社の業務に直接又は間接的な影響が生じること〇 なお、上記の①及び②の条件を満たすものであっても、その提供先において、無償提供したマスク等が転売されているといった事実がある場合には、貴社の事業遂行上、必要な経費とは認められませんので、その提供に要する費用は、税務上、寄附金に該当します。
こちらが国税庁のFAQです。
→https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/pdf/faq.pdf
取扱いの解説
取引先へ無償提供した場合の取扱い
通常の取引先へマスクを無償提供した場合、上記の国税庁の取扱いにもあるように、要件さえ満たせば経費(損金)になります。
また、金銭ではなく物品を寄付するので、その購入代金は消費税法上課税仕入れとなります。
(金銭以外の資産の贈与)
消費税法基本通達11-2-17
事業者がした金銭による寄附は課税仕入れに該当しないが、金銭以外の資産を贈与した場合の当該資産の取得が課税仕入れ等に該当するときにおける個別 対応方式の適用に当たっては、当該課税仕入れ等は、原則として課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通 して要するものに該当するものとして取り扱う。
ただし、決算期末に駆け込みで購入し、実際の寄付が翌期となる場合には、決算時に貯蔵品(又は他の資産勘定)へ計上すべきと考えられますので、
・会計上及び法人税法上は翌期の経費(損金)
・消費税法上は購入時の課税仕入れ
になると考えられます。
【例】
〈購入時〉
消耗品費 1,000,000 / 現金預金 1,100,000
仮払消費税 100,000 /
〈決算時〉
貯蔵品 1,000,000 / 消耗品費 1,000,000
〈翌期寄付時〉
消耗品費 1,000,000 / 貯蔵品 1,000,000
※寄付目的ではなく、非常事態の備蓄用として購入した場合には、未使用分があったとしても購入時に全額損金にできる可能性があります。
→国税庁HP「非常用食料品の取扱い」
国・地方公共団体へ無償提供した場合の取扱い
例えば役所へマスクを無償提供した場合、全額損金の額に算入される寄付金に該当しますので、購入に対する経費(損金)としても、寄付金としても、法人税を計算する上での課税所得は変わらないと考えられます。
(寄附金の損金不算入)
法人税法第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
3 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに次の各号に掲げる寄附金の額があるときは、当該各号に掲げる寄附金の額の合計額は、同項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。
一 国又は地方公共団体(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港務局を含む。)に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。)の額
二 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金(当該法人の設立のためにされる寄附金その他の当該法人の設立前においてされる寄附金で政令で定めるものを含む。)のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして政令で定めるところにより財務大臣が指定したものの額
イ 広く一般に募集されること。
ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。
【例】
〈購入時〉
消耗品費 1,000,000 / 現金預金 1,100,000
仮払消費税 100,000 /
〈寄付時〉
要件満たせば上記購入時経費(損金)
→仕訳なし
寄付金処理(全額損金)
→寄付金 1,000,000 / 消耗品費 1,000,000
消費税法上の課税仕入れの考え方や、期末棚卸資産の考え方は、取引先への無償提供と同様です。
勘定科目は?
寄付金以外の費用に該当することとなった場合の勘定科目は、「消耗品費」が妥当であると考えます。
通常、取引先等への贈答は「交際費」ですが、『事業遂行上、必要な経費』であると国税庁のFAQにも記載があるように、要件を満たせば全額損金が前提であると考えられるためです。
ただし、資本金が1憶円以下のようなの法人で、マスクの金額を合わせても交際費が800万円を超えることがなければ、勘定科目は「交際費」としても差し支えない(全額損金となるため)と考えます。
あとがき
寄付金に該当する場合には、通常の寄付金課税の取扱いと同様と考えられます。
また、今回は購入対価=時価のケースでしたが、例えば自社で持っている固定資産の寄付をする場合には、寄付時の時価により寄付金課税を行いますので、その点は注意が必要です。
(寄附金の損金不算入)
法人税法第三十七条
7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。